本来の業務
キョウチクトウ爆弾はあっけなく完成した。3つほど作ったあたりでもう昼頃になっていた。
「さて、そろそろ農家の本分に移ろうか」
そもそも僕は忍者兼農家なのだ、現世に畑はないがニライアイランドの中に大きめのプランターを用意してある。一応周りは海なので塩害がひどくて畑は諦めた。
現世の山から採ってきた山芋のムカゴを種芋にする、これはまあ、一年後の食料だ。
スベリヒユは雑草枠として食べれる植物を集めているプランターに植えておく。
今のところ非常食になりそうなのは月下美人とパイナップルだな。
「はあ〜、研究のためにせっかく集めた資材がパーだ」
僕が何の偉業を成そうとしていたか、それは品種改良の分野だ。この世界は便利な植物が全然開発されていないのだ。僕の希望を水の女神に相談したら一匹の龍神を貸してくれた、やつとは反りが合わないが僕の野望には必要な人材(龍材?)だ。
「おい、もっと植物を増やせ」
噂をすれば……
「何でもかんでも持って来たらあっという間に場所が無くなっちまうよ」
「この間持ってきたカキドオシは良かったぞ、あんな調子でどんどん持ってこいよ」
「ああ〜、うざったい、お前の好みがよくわからん」
「ユキノシタ、百両、万両、サネカズラ、サルトリイバラ、ヘビイチゴ、トベラ、シャリンバイ、オドリコソウ、ハンゲ、マメキンカン……他にも色々持って来てただろう、あの調子で持ってきてくれたらいくらでも増やして品種改良しておいてやるよ」
「分かった」
う〜ん、僕実際要らなくね?とか思っちゃうけど肉体を持つ人間が望むことが必要だと言われて説教されたことがある。龍が独断で品種改良するのはルール違反なんだそうな。たとえ自然の状態でもあくまで植物が環境に適応しようとする気合みたいなものを消費して進化を促すらしい。
「北斗!」
「なんだ?」
「呼んでみただけ」
「メタ発言はほどほどにしろ」
北斗七星から呼ばれて来たから北斗と読んでいる。龍の名前としたら妥当だろ?
「今夜の水神対策のことは頼む」
「任せておけ、おれはお前のとこの水神の方が好きだ」
「まあ、あっちはちょっと不潔な感じだからな」
ニライアイランドからの海を眺める、ほどよい緊張感と恐怖心と冒険心で足がガクガクだが、北斗の方も似たようなもんだった。
「おい……お前龍なんだろ、しっかりたのむぞ!?」
「はっはっは、面目ない」