大事でした
ニライアイランドに入った瞬間に声をかけられた。
「ちょっとお邪魔してるわよ」
「……いいよ」
女神さまだった。人前に姿を現すのはたまにあるので案外誰も驚かない。
「大変だったみたいだな」
「ええ、もうお手上げよ」
「ちょっと状況が掴めてなくてな、休憩したら説明してくれるか」
「ありがとうね、少しだけ休めたら話すわ」
「飯食ってけよ、卵とかあるからちょっとくらい豪華なものを用意できるぞ」
白米のご飯に柔らかめのオムレツ、豆腐の味噌汁を用意して女神さまと朝食をとることにした。
「「ごちそうさまでした」」
デザートのミカンをいくつか持ってきて女神さまに渡す。
「戦況は?」
「まず信者の数が10倍ほど違うのよ」
「そんなにか?」
あの悪神も水の神だが水と言っても2種類ある。すなわち流れる水と淀んだ水だ。
水には万物を保存する力があり、本気を出せば水死体も腐敗の進行を止められるそうだ。
だが今回の事案は逆にネガティブなエネルギーを保存されてしまったのが原因らしい。
ネガティブな力を貯め込んで眷属を次々と増やしたことにより正の力の女神さまはあの怪獣に負けてしまったらしい。負けるということは海の水が流れなくなってしまっているということだ。
「魚人たちの目的はなんなんだ?」
「ああ、彼らの望みはね。世界の逆行」
「もっとわかりやすく」
「原始的な時代に戻したいんですって」
「ほう!なるほど」
「女性は生理が来たら即結婚、男子は成人の儀で怖い試練に出席(強制)、場所によっては子供を作り過ぎないために大人が男子との性行為推奨っていう地域も出てくるでしょうね。福祉の撤廃、老人と障害者は生きれないわね。あと農耕文化の衰退……」
「なんだと!!」
「こっちも海の流れを止められたら大半の生物が窒息してしまうのよ」
「殺す!今すぐ!」
「やる気になってくれてうれしいわ」
「あいつに近づくにはどうしたらいい?」
「実は太陽が苦手で夜しか水上には出て来ないのよ、ニライアイランドが使えない時間だから例外的に運んでもらえるようあの子に手配しておくわ」
「あいつの死体を海から引きずり出せるか?海を汚染する危険がある」
「了解、魚人たちに上陸する指示を与える時に口を大きく開けるからその時が狙い目ね」
「決行はニライアイランドが消失する時間で。僕は準備に取りかかる」