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11.ヒロインに敵わなすぎる主人公は、夏も振り回されるようです。

生徒会長の情報を仕入れるため

聡寧の命令で灯織と共に、

サークル視察へ向かった稀羅。


運良く会長と会うことができ、

趣味を聞き出すことができたが……?


「俺の番号はなし……っとよ~っし全部クリア! 今日から夏休み~♪」


張り出されてる紙を見ながら、一人でガッツポーズをする。

同じように喜ぶ人、安心する人、そして落胆する声がさまざまなところできこえてきた。

俺の名前は上杉稀羅、19歳!

杓璃大学に通う、2年生だ!

早いもので、あっという間にもう七月。

梅雨も無事明けたし、会長と共通の趣味が見つかったし……俺の気分は快晴真っ盛りだな!


「………実に不愉快だ……まさかテスト結果にまでリア充が影響するとは……」


隣で紙を凝視しながら、彼はため息をつく。

無論、北斗だ。


「なんなんだその彼女ができたみたいな上機嫌っぷりはたかが共通の趣味が判明したくらいで……そもそもなぜ! オレが補習で! お前は回避なんだ!!」


「それは普通にお前の成績が悪いだけだろ。観念しろ」


なぜだ……とぼやく北斗の言う通り、俺達は先日テストを終えたばかりだ。

ぶっちゃけ単位を取れるかどうかがかかっているといっても過言ではなく、レポートをまとめればいいものもあれば、テストとして今まで習ったことを出題する教科もある。

可もなく不可もない俺は、微妙ながらも一応合格した。

案の定、北斗はほとんどの補修対象として番号がかかれていたが……


「成績さえよければ彼女だってできるかもしれないのに……世の中理不尽だ……」


「えーっと……北斗、よければ教えてやろうか?」


「いい。優等生かつモテ男のお前に教えられても、オレが惨めになるだけだ」


余裕でテストをクリアした昴が優しく声をかけても、北斗は真顔で返事する。

元から容量がいい昴に対し、女ばかり言う北斗はなぜか成績だけは上がらない。

本当、この二人は正反対だな……


「そういえばもう夏休みなのに、会長とでかけたりはしないのか?」


昴に言われ、急に現実が重くのしかかってきたような感覚になる。

あーそれなーと適当に返事をしながらも、彼からは目をそらす。

できればあまり考えたくなかったのだが……そうもいいかないようだ。


「俺的に、会長と恋人になりたいわけじゃないっつーか……ほら、会長って四年生だろ? 受験とかあるだろうし、容易に誘うのはあれかなあって」


「なんだ、ただの誘えない言いわけじゃないか。このヘタレ」


「北斗は黙ってろ! とにかく、だ。輝夜達からも何も言われてないし? このままでいっかなあって……」


これは逃げではない。本当のことだ。

そもそもあいつらが勝手に変な目標を立てたおかげで、こんなわけわかんない状態になってるわけで。

夏休みくらいは、何も考えずに遊びたい。

会長に認識されただけでなく、趣味まで聞けたんだぞ? かつてないほど順調じゃねぇか。

これ以上高望みなんてしたもんなら、俺の身がもたないのなんの……


【ここにおったか、上杉少年!!! 探したぞ!!!】


どこかで、声がする。

顔を下げるとそこにはいつのまにか、野神がいた。

ラビット将軍をずいっと迫らせながら、俺の行手を塞ぐように立っている。


「なんだ、野神か。何の用だ?」


【なんだとはなんだ、なんだとは!! 今から会議を始めるぞ!! そこにお前がいなくてどうする!!】


「あー……またやるのか、あれ」


「稀羅、もしかしてその子が例の?」


昴に言われ、まあなと小さく返す。

さすが好青年と言われるだけあって、彼は野上の背に合う様にかがみながら、こんにちはと爽やかに挨拶をする。

無論、野神は恥ずかしそうにラビット将軍で顔を隠してしまうのだが。


「あなたが付き合いたい女子ランキング五位の野神千彩ですか。まるでペットのように可愛く、美しい……よければ俺と一緒にお茶でも……」


「やめとけって北斗、そいつ心開いた奴以外口きかねぇから。会議だっけ? やる意味あんのか、それ」


【無論、拒否権など貴様にはないっ!】


わかっていたことながらも、いいきる彼女にため息をつく。

仕方ないと足を向かわせると同時に、北斗が声を上げて……


「貴様、補修のオレを差し置いて、女だらけのリア充を満喫するつもりか!? なんて奴だ……そのうちの一人、誰でもいいから、俺に……俺に紹介を……!」


「ほら北斗、夏休みに入るためにも補修の勉強しような。じゃあまたな、稀羅」


悲痛な叫びが、遠くなっていく。

昴が彼を運びながらも、頑張れとばかりにウインクしてみせる。

やはり持つべきものは昴だ、そう思いながらも彼の健闘を祈りながらぐっと親指を突き立ててみせたのだった。



【みな揃ったな!! それではこれより! 夏休み満喫大作戦を行うぞ―――! 指揮はもちろん、吾輩ラビット将軍だ!! 心して聞くがよいぞ!!】


でーーーんという効果音が聞こえてきそうな勢いで、ラビット将軍が俺に迫ってくる。

微かに見える野神の顔は、どや顔をしているようにも見える気がして、はあと返事をするしかなかった。


彼女についていくがまま、やってきたのはいつもの講義室。

俺がつくのを待っていたとばかりに、九十九と輝夜の姿もあった。

こうして四人で会うのは、なんだかんだで二回目だ。

輝夜と九十九の三人では、たびたびあったが……全員揃うとやっぱり緊張するな。

夏休みだから何もしないだろうと油断していたのだが、どうやらそうもうまくいかないらしい。


「……で? 今度は何をさせられるんだ、俺は」


「そのことなんだけどさあ、実は会長と夏休みを過ごすのって結構難易度高いんだよね~」


「ああ、四年生だからだろ?」


「それもあるけど、あの人芸能音楽科でしょ? プライベートとか、厳しめに管理されてるっぽくてね~」


「…………」


「あれ、上杉。もしかして、会長の学科今知った?」


九十九に言われ、何となく視線を逸らす。

そりゃな、会長のことが好きなのは間違いない。

だが、だ。何もかもぜ~~んぶ知ってます、なんてことは到底なく……


うちの大学には、極めて珍しい芸能音楽科が存在する。

作曲や編曲など、曲を作る音楽家コースと、アイドルを実際に目指す芸能コース。

すでに事務所に入っている人もいるため、棟自体が別であり普通の学科に所属する俺にとっては未知の世界だ。

生徒会長ってことで身近に感じすぎて、まったく気にもしたことなかったが……さすが会長、倍率高いって評判の学科に通ってるなんて、すごすぎる!!


「それに、情報をもらってる人から、ちょっと気になることを言われたんだよ〜小早川三星に手を出すのはやめておけって」


「へぇ……えっ、会長に? なんで!」


「うーん……そこまでは教えてくれなかったけど……僕達会長のことなーんもしらないじゃん? だから気づかれないようにこっそり彼女をつけて、会長のこと調べてみようよ。名付けて、会長大捜査さくせぇん」


そういいながら、ホワイトボードを下に下げる。

今まで隠れていた文字が、一気に姿を現す。

そこには今後の日程の下に、聞きなれたイベントがつらつら書かれていて……


「これ……もしかして、会長の予定か? 管理が厳しいとか言ってたくせに、どうやって……」


「彼女が友人と話してるところを、私がちょうど通りかかったの。覚えるくらい容易いわ」


「……それ、盗み聞きじゃね? 一歩間違えれば犯罪だろ……」


そういわれ、なんとなくかかれた行事を眺め見る。

確かに俺は、会長のことをまだ何も知らない。

もっと会長のことを知って、会長と一緒にいれば、少しは何かわかるのだろうか。

夏祭りに海、か……行ったところで、本当に会えるのかは微妙だが……


「とはいえあなただけじゃ不安ね……」


「いや、俺行くとは一言も言ってないよな?」


「そういえば千彩、この前夏祭りがどうって言ってなかったかしら」


「聞けよ」


【おお! 覚えていてくれたのか僕、聡寧!】


俺の言葉なんて聞こえてもない、というように野神が急に立ち上がる。

ラビット将軍をかかえてはいるものの、興奮しているのは目に見えてわかった。


【我輩っ、花火がみたい!!! 我輩の国にはこのような祭はなかったからな! 特別にこの我輩との同行を許可してやろうぞ!!】


「なら、上杉君。この子を夏祭りに連れて行ってあげて」


【そうかそうか、みんな一緒に………なっ、ぬぁぁぁにぃぃぃぃ!!!?】


まるでがーーんという効果音が、聞こえてくるかのようなオーバーな反応をする。

野神はとたとたと輝夜に詰め寄ると、ラビット将軍をずいっと彼女へ突き出した。


【なぜ此奴が!!? お前は行かんのか!?】


「あいにく私は仕事だもの。行きたかったんでしょ? ちょうどいいじゃない」


【なら灯織!! 灯織はどーだ!?】


「ん~……面倒だからパス☆」


【貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!!】


二人に冷たくあしらわれても彼女は、嘆くように嫌だ嫌だと連呼する。

普通に昴や北斗とでも行こうかなんて思っていたのだが、こんなことってあるか?

第一こいつは人前とかが苦手なのに、どう夏祭りを過ごさせろと……


「海は、あなたに任せるわ灯織。どうせ、今年も行くんでしょう?」


「まあ行くっちゃ行くけど……いいのぉ? 上杉と二人きりで行くことになっちゃうけど」


「……………あくまでもこれは小早川三星の調査よ。ふざけるのも大概にして」


「はぁい。んじゃあ上杉、そーゆーことだからよろしく〜」


「いや、だから行くとは………」


ラビット将軍につつかれながらも、九十九は涼しげな顔をしてこちらにいう。

俺に拒否権はないのだろうか。

相変わらずの3人の姿に俺は、はぁっとため息をついた。


(つづく!!)

何気に主人公以外のキャラで

学科が初公開となりましたが、

結構意外なんじゃないでしょうか?


会長もそうですが、他の3人の学科も

設定などにかかわってくるので

これからわかってきます。予想しながらお楽しみに


次回は16日に更新予定。

楽しい楽しい夏が幕を開ける?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 稀羅くんは三星ちゃんが好きだけど恋人になりたいわけじゃないのかぁ(´・ω・) アイドルを好きみたいな感覚なのかな。
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