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第8話 嘘じゃないよ

プチホラーです。苦手な方はご閲覧にご注意ください。

「ねえ、ママ。あめだまが食べたい。今日の分ちょうだい」


 5歳の娘が、台所にいる私の近くに来て小さな両手を差し出した。


「あら、なあにそれ? 」


 娘の顔を見て私は眉をひそめた。


 その片方の頬が、いびつにプクッとふくらんでいるのだ。


「もう、また勝手にアメとって食べたんでしょ!」

「食べてないよー。ホントだって!」


 娘は口をもごもごさせて両手と首を横に振ったが、何か食べているのは一目瞭然りょうぜんだった。

 なんでいつも夕飯を作っている最中に、この子は割って入るのだろう。


 夫の帰宅時間が、刻一刻と迫っているというのに。


 そばで沸騰ふっとうし始めた鍋のフタのように、私の口もプルプルと震え始めた。


「ダメでしょ! また嘘ついて!」

 苛立いらだちが募って口を開くと、自分でも思った以上に甲高い声が出た。


「いい加減にしないと、ママ怒るよ!」

「嘘じゃないもん! 食べてないもん!」

 それでも娘はかたくなに首を振り、再び両手を差し出してくる。

 私は呆れて鼻をフンと鳴らした。


「じゃあ、頬っぺたのコレは何なのよ?」

 娘の丸くふくらんだ頬を指で突っつくと、私はからかうように言った。


 すると娘はニヤッと笑った。


「ああ、これ?


これはね、あめだまじゃないよ、ホラぁ!」



 娘がカパッと口を開けると、中から大きな舌が二枚べろりと出て垂れ下がった。


(了)

◎「二枚舌」だけど、嘘つきではありません。

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