第4話 模倣モノの詩(うた)
今日も俺は、必死でしがみついてんだ。
俺はただの模倣もんだから、
油断したらすぐに引き離されるって分かってんだ。
大勢いる他の奴らだって同じようなもんだ。
でも俺は足を引っ張ったりはしない。
俺たちはライバルじゃなくて仲間なんだ。
それにあいつらが消えた所で、
またすぐに次の奴らがやって来るってだけだ。
俺たちの代わりは幾らでもいる。
でも俺たちの存在を、ちゃんと認めてくれる人がいるんだ。
さすがに本物の出来には叶わないけど、
しがみついてりゃ、必ず明日はやって来るんだ。
それに本物だって、力尽きれば散っていくんだ。
だから風当たりがどんなにきつくたって、
俺はこの手を緩めるわけにはいかねえんだ。
*
「ふう~、今日も疲れたなあ」
サラリーマン姿の男が、ネクタイを緩めながら自室に入ってきた。
「今日も風がキツくて参ったよ」
洗面所に向かうと、男は頭に手を伸ばした。
「汚れてきたから、そろそろクリーニングしないとな」
男は慣れた手つきで頭からカツラを外すと、
すっかり寂しくなった頭髪に手をやった。
「もういっそのこと、
坊主にでもしちゃおうか?」
洗面台に数本ずつ散った、カツラの毛と地毛を見比べて男はつぶやいた。
(了)
◎該当される方の日頃のストレスや悩み、深くお察しします。