表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

第3話 トンネルの悲劇

※外見のことで嫌な思いをされた方は、閲覧にご注意願います。

 今もひどいトラウマになっている思い出がある。


「夏休みで学校ないのはいいけど、毎日暑いよね~」

「肝試しで涼みません?」

「じゃあ、今夜あそこ行く?」


 そんな会話がきっかけで、当時中学2年生だった私は、女友達2人と連れだって、近所にある「出る」と噂のトンネルに行った。


 それは廃線の高架下にある、横幅が人2人分くらいの小さなトンネルだった。


 夜遅くに家を抜け出した私たちが集合したとき、あたりはもう真っ暗だった。


「出たらどうする?」

「絶対置いてかないでよ!」


 どこか弾むような口調で、友達2人は臆することなくトンネルの闇の中に入っていった。


 非モテ陰キャな私と違って、「モテる女」を自認する彼女たちは、どこへ行ってもグイグイ進むのだ。


 私はそんな2人の後を、気後れしながらついていった。


 3人の靴音が、ピチャピチャと暗いトンネル内に響く。


「ひやぁ!」

「どうしたの!? ……イヤァ!」


 友達2人が立て続けに悲鳴を上げた。


「首筋にペロッてされた!」

「腕つかまれた!」


 彼女たちは悲鳴を上げながら、元来た方へと疾走(しっそう)した。


 何にもされなかった私も、つられて一緒に走った。


 そのあとは、みんな入り口まで無事に戻ってこられた。


「さっきのヤバかったよね!」と青ざめた顔で手を取り合う2人をよそに、私は黙ってトンネルを振り返った。


「ねえ! 見てあれ!」


 私がトンネルの入り口の壁を指さすと、友達2人はまた悲鳴を上げた。


 ――楽しかった また来てね――


 その壁に書かれた文字は、真っ赤な血の色だった。


 彼女たちは、大きな叫び声を響かせて一目散に逃げ帰った。


 でも、一人残された私は、なんだか納得が出来なかった。


「よし、もう一回入ろう」


 私はさっきと同じように、一人でトンネルの中へと歩を進めた。


 真っ暗な中、濡れた地面に自分の靴音だけが響いた。


 ピチャピチャ

 ……


 ピチャピチャ

 ……


 歩き続けて、とうとうトンネルの一番奥まで来てしまった。


 そのまましばらく突っ立っていたけど、やっぱり何も起こらない。


 仕方がないので、私は入口へと引き返し始めた。


 ピチャピチャ

 ……


 結局、何かされることもなく、無事に入口にたどり着いてしまった。


「さっきのは、2人の芝居だったのかな?」


 私は一人でつぶやくと、さっき文字が書かれていた壁の場所に目をやった。

 

 するとそこには、また同じように真っ赤な文字が浮かんでいた。



 ――ブスは帰れ――


 私の心は血まみれになった。


(了)

◎この話はフィクションです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ