表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

第28話 永遠の青二才

平和への願いを込めて書きました。よろしくお願いいたします。

 小さな湖に隣接する、美しい街の高台にて。


 男の子と女の子が、街に伝わる古い歌を歌って遊んでいた。

 まだ十歳にも満たない愛らしい声の合唱を、太陽の光が包みこんでいた。



 空はこんなに青いのに

 どうして大地を走れない?


 空はこんなに青いのに

 どうして海で泳げない?


 空はこんなに青いのに

 どうして木登りできないの?


 空はこんなに青いのに

 どうして花を愛でないの?


 空はこんなに青いのに

 どうして命を奪えるの?



「OK、デイジー。いま歌った歌をリピートして。

歌い終わったら、右隣りのデイジーに、私が言ったことと同じことを命令して」


 高台に連れて来た最新式のAIロボット、「デイジー」に向かって、女の子が言った。


『空はこんなに青いのに……』


 白いウサギのように丸いフォルムが特徴的な「デイジー」は、正確な音調で歌い始めた。

 やがて歌い終わった「デイジー」は、隣にいるもう1体の「デイジー」に音声を発した。


『OK、デイジー。いま歌った歌をリピートして……』


 こうして2体目が指示通りに歌い始めると、二人の子どもたちは手を叩いて喜んだ。


「あ! ボク、もっと面白いことを思いついた!」


 男の子はそう言うと、新たに8体の「デイジー」を取り出し、合計10体を時計の文字盤のように等間隔に置いた。

 外側を向いて並べられた様子を上から見ると、10個の白い丸石が円を描いているようだった。


「これで1体に命令すれば、輪になった伝言ゲームみたいに、ずっと歌が続くよ!」

「わぁい! やってみよう!」


 女の子がさっきと同じように命令してみると、狙い通り、歌は途切れることなく回り続けた。

 二人は夕暮れになるまで、飽きずに見守り続けた。


「もうこんな時間だ、家に帰ろう」

「ねえ、このまま置いて帰らない? 明日も歌ってるか、見てみたいの」

 女の子が言うと、男の子は笑って答えた。


「うん! 明日が楽しみだな!」


 「デイジー」は太陽光発電システムを搭載しているため、放っておいても電池切れになる心配はないと、子どもたちは理解していた。


 二人は10体の「デイジー」に手を振って、高台を後にした。

 二人の背中に、夕日と「デイジー」たちの歌声が、いつまでも染み渡った。



 その日の夜、街を一発のミサイルが襲った。

 高台を残して、湖畔も街も、すべてが無残な姿に変わり果てた。


 * * *


 その翌日、爽やかな朝日に照らされた高台にて。


『空はこんなに青いのに――』


『――どうして大地を走れない?』



 白くて丸い石の形をした十体の「デイジー」たちは、延々と歌のバトンリレーを続ける。



『空はこんなに青いのに――』


『――どうして命を奪えるの?』



 いつか太陽からのエネルギー源を断たれる、その日まで。

 彼らの歌声は止まらない。


(了)

ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます。またマイペースですが、更新させていただく予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ