第19話 なっがーい鳥居
あるところに、百年に一度と称される腕利きの宮大工がいた。
国内で有名な由緒正しき神社の神主が、その宮大工に千本鳥居の建築を依頼した。
「霊験あらたかな聖地にふさわしい、荘厳な鳥居を建ててくれ。来訪者の願いが天まで届くような、立派な神門となるように」
「任せときな。俺の腕にかかれば、そのようなもの朝飯前よ」
依頼後に、神主は持病でしばらく入院することとなった。
一方、建築に取りかかった宮大工は、寝る暇も惜しんで作業に励んだ。
そのかいあって、数週間後には無事に全工程が完了した。
出来上がった鳥居はみな朝焼けのようにまぶしい朱色に塗られ、屋根となる笠木の両端は鳳凰が羽根を広げたような佇まい。
笠木を支える二柱の柱頭には金の台輪が燦爛ときらめき、横に通された貫の中央には、神社の名前の彫られた大理石の神額が、額束に堂々と掲げられている。
邪気など一瞬にして消え去るほどの神通力が、鳥居全体から発せられているようであった。
やがて快復して退院した神主は、宮大工とともに千本鳥居の元へとやって来た。
「どうだい、見事なもんだろう?」
そう言われた神主は、目の前に続く千本鳥居を見て激怒した。
「誰が縦につなげと言った!」
天へとつながる梯子のような長い鳥居を見上げて、神主は長いため息をついた。
(了)
◎こんな千本鳥居があったら、むしろ見てみたいです。