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side アピア
続きます。
アリスティアラが眠って数か月が経ったころ。
王国主催の狩猟大会が開かれた。
この大会では狩猟に行く若者に、令嬢が、好意を寄せている騎士に刺繡をしたスカーフを渡すという慣習がある。
昔は誰に渡しても良かったみたいだけど、今では婚約者に渡すのが習わしになっている。
ちなみに私の婚約者はこの狩猟大会には参加しない。
参加できるような身分ではないし、彼は文官志望だからそもそも参加しないのだ。
いつもは全く興味もない行事だけど今年は楽しみにしていた。
だって私にはトマス様がいるから!
本当ならアリスティアラがトマス様にスカーフをあげるのだけどあの子は今眠っているから私があげたっていいわよね。
そんなことを考えながらスカーフを持ってトマス様の家へと向かっているといつの間にか到着していた。
ちょうどそこに馬に乗ったトマスが門から出てきた。
「トマス様!」アピアが呼びかける。
「ん?あーアピア様でしたか!」
アピアの姿を見つけると笑顔になるトマス。
「こんな朝早くからどうされました?」
「トマス様が今日の狩猟大会に行かれるというのをお聞きしまして・・・」
「うん、それでわざわざ来てくださったのですか?」
「はい、スカーフに刺繍をしたので大会に持っていただければと思いまして」
「スカーフですか。ありがとうございます。持っていきますね。」
「はい!気を付けていってらっしゃいませ。」
トマスを見送るアリスティアラ。
私があげたスカーフをつけてくださったトマス様。
貴族の方や侯爵家の方からそのスカーフはどうしたんだと言われたらしいけど、私からだと言ってくださったらしい。
その日はトマス様のお家に呼んでもらって狩ってきた鹿肉を食べた。
屋敷に入るときに侯爵や執事に睨まれたような気がしたけど、気のせいよね?
「アピア様からスカーフをもらったのに1位が取れませんでした」
申し訳そうに謝るトマス。
「トマス様のせいではありませんわ。私の気持ちが足りなかったのかもしれません」
おほほほほと口を手で隠しながら高らかに笑うアピア。
アリスティアラも眠ってしまったことだし、この調子でいけば婚約者も夢じゃないわ。
私の婚約者とはこんな風に会話が弾むことは無い。やっぱりお顔が美しい方は心も美しいのね。
この言葉をもしアリスティアラが聞いていたら、
「こんな人の心のどこが美しいのよ」と言っただろう。
「アリスティアラ様のご体調はいかがですの?」
「アリスティアラ?眠っていますが、今のところ問題は無いようです。
ですがアリスティアラがいない期間がこれ以上続けば損害が出そうなので早く目覚めほしいんですけどね」
トマス様・・・
「いくらアリスティアラの魔力が強いとは言えども何か月も飲まず食わずで寝たままだったら体調が悪くなりそうなのでとても心配しています」
ただ眠っているだけでトマス様にこんなにも心配されるなんて。
このままアリスティアラが眠っていればトマス様と一緒に暮らせる日も遠くはないかもしれないわ。
そう思っていたのに。
それなのに、アリスティアラが目覚めてしまった。
呼んでくださりありがとうございます!




