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部屋に戻るとアニーがフルーツを出してくれた。
糖分補給が大切なんだって。
「お嬢様、」
部屋を出ようとしたアニーが足を止めアリスティアラに呼びかける。
「私は侍女なので政治のことは分かりません。だけど体には気を付けてくださいね。
また何年もお嬢様が眠ってしまったら私泣いちゃいます。」
「アニー・・・」
アニーはお母さまが国が運営している孤児院から引き取った子ども。
小さいときから知っているから私にとっては妹みたいな存在だ。
「ありがとう。また眠ることはないと思うわ。大丈夫よ」
「ほんとですか?」
「ええ、私にはお父様、お母様、お兄様、宰相がついているわ。それにアニーだってね。」
「お嬢様・・・!」
「でも魔力が落ちているからアニーの言うように少しは自分の体も気遣わなきゃね」
「少しじゃなくていっぱい気を付けてください!」
「ふふ、分かったわ。」
頬を膨らませるアニーがかわいくて、アリスティアラはつい微笑する。
アリスティアラが答えると、アニーは安心した表情で部屋を後にした。
久しぶりに帰ってきた部屋でアリスティアラは一人物思いに沈む。
お父様は魔力を奪った犯人は宮廷の魔導士たちだろうと言っていたわ。
でもあの人たちの魔力を結集させたところで私の魔力を封印させることなんてできない。
強力な魔力を持っている人と協力すれば私に匹敵するぐらいの力になるけど。
そうすれば眠らせることだってできるはず。
じゃあ一体魔導士たちは誰と手を組んだのかしら。
魔導士たちのように私は反感をたくさん買っていると思う。
つまり宮廷の中に私の敵は多いってこと。
国内で強力な魔力を持っているのは私、お父様、魔力鑑定士のラミーさん。
お父様は私の父親である以前にランドール王国の国王だ。
私の魔力を何よりも頼みにしていた人がそんなことをするだろうか。
ラミーさんは魔力鑑定士という職業に就いているだけあってかなりの魔力の持ち主だ。
だけど宮廷の魔導士と違って私を追放したところでなにかラミーさんにメリットがあるわけではない。
魔力鑑定は私だってできないのだから。
そして3人より少し魔力の強さは劣るけど私が反感を買っていそうな人と言えば
婚約者のトマスだ。
この中で魔導士と手を組みそうなのはトマスしかいない。
トマスはランドール王国でも有力の伯爵家の長男。
トマスは2歳年上で、私が幼いころからトマスと結婚することは決まっていた。
婚約者っていう関係ではあるけど私たちはずっと微妙な距離感で接している。
この結婚だって政略結婚だ。
結婚させたいのは親たちだけで本人たちは全くその気がないというのに。
トマスか・・・
トマスは私のことを、少なくとも好きではないはずだ。
政治に参加する女は嫌いだというのを偶然聞いたことがあるし。
あれはきっと私に向けた悪口だったんだろう。私は気にしていないけど。
条件はそろっている。
でもあのトマスに国を揺るがすような事件を起こせるのか?
あの人にそれほどの勇気があるとは思えないんだけど。
読んでくださりありがとうございます




