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アリスティアラが手を上げると合図を待っていたかのように扉が開き、数人の男たちが部屋に入ってきた。
「なんだお前たちは!」
国王が声を張り上げた。
「突然の訪問により驚かしてしまい申し訳ありません」
先頭に立っている男がそう言い国王に対して頭を下げた。
後ろの男たちもそれに倣うようにして頭を下げた。
部屋にいる者が困惑している中、
「ラミー様、お疲れ様です。ご無事で何よりですわ」
アリスティアラが先頭の男に声をかけた。
「ありがとうございます」
男は礼を言い軽く頭を下げた。
「後ろの方々は?もしかして議会の方々では?」
「はい、先ほど議員の皆様に話を通してきました」
「まあ、その割にはあまり時間がかかっていないような」
「実は伝書鳩を使って招集させていただいたんです」
ラミーはとっておきの秘密を伝えるように瞳をきらっとさせた。
「ラミー、これはどういうことだ?」
「陛下、この状況に困惑されるとは思いますが、まずはディサップ様のご容態について報告申し上げます」
「ディサップか、あやつは今どうなっている」
国王は苦虫を潰したような表情をする。
「ディサップ様は現在、アリスティアラ様が考案された空蜘蛛のハンモックの設置が終わり、そちらで休まれています」
それを聞いたアリスティアラは安堵の表情を浮かべた。
「はい、術式の難しさに加えて魔力の消費の激しさで大変ではありましたが完成いたしました」
「ラミー様さすがですわ」
「いえ、私は何も。アリスティアラ様がいらっしゃらなければ思いつきませんでした、大変助かりました、ありがとうございました」
まっすぐとラミーの目を見つめられて礼を言われると、アリスティアラはきれいな瞳に吸い込まれるようで頬を赤らめた
「呼吸も安定し落ち着かれています。もうすぐ目を覚まされるかと。原材料である空蜘蛛の糸が魔力を吸収するため、お目覚めになっても被害は発生しないというのが私の見解です」
「分かった」
国王は短く答えた。
「それで、後ろにいる議員たちは何の用だ」
「こちらについても私から話させていただきます」
ラミーがアリスティアラの方をちらっと見る。
アリスティアラはその目くばせに応えて頷く。
「既にアリスティアラ様からお話があっているかと思いますが、ディサップ様の王位継承権を第一位に戻すということについてです」
国王の表情は曇ったままだ。
「アリスティアラにも話したがそれは了承しかねる」
「そうですか。陛下、ここで新しい発見についてご報告いたします」
「新しい発見?」
「はい、魔力の引き渡しが可能であることを発見いたしました」
「魔力の引き渡し?なんだそれは」
「はい、この発見は魔導士たちによるアリスティアラ様の魔力移転によって発見されました。専用の魔方陣を用いることにより自由自在に人から人へと魔力を移動することができるというものです」
「なるほど、それは画期的な発見だな」
国王は驚きの表情とともに少し困惑したような表情を浮かべた。
「そなたはなぜ今その話を?」
「ディサップ様の話に繋がるのです。ディサップ様は魔力過多症に身体が蝕まれてしまったために王位継承権第一位の座をアリスティアラ様に譲られました。ご病気が無ければそのようなことは起こらず、また今回のような事件は発生しなかったと考えられます」
「うむ、」
「私からの提案なのですが、今回発見した魔力の引き渡しを使い、過多症による多すぎる魔力を移転し体内の魔力量を正常値にすることができれば、ディサップ様が後継者となられてもよろしいのではないのでしょうか?」
「本当にそのようなことができるのか?」
国王は半信半疑でラミーに尋ねる。
「はい、できると思います。定期的に魔力量の調整を行うことが条件ですし、もちろん魔方陣の改良の余地はまだまだありますが」
「そうか、それではそなたは改良に当たってくれ」
「承知いたしました。陛下、ディサップ様は…」
「そうは言ってもだな…」
国王はなかなか首を縦に振らない。
「陛下、私どもからもお願いいたします」
ここで初めて議員たちが前へ進み出た。
「ディサップ様のご病気によりアリスティアラ様が第一位となられていますが、本来王位を女性が継ぐことは極めて稀なことであります。陛下のお子様はディサップ様の他にアリスティアラ様しかいらっしゃらなかったため議会も特例で認めたのです。議会はディサップ様へ王位継承権第一位を戻すことを強く支持しここに進言いたします」
議員たちは硬い表情で国王を見つめる。
「そのような世迷言を」
「陛下のお気持ちも理解できますが…」
「アリスティアラが第一位となることは議会での全会一致の上決まったことではないか…!」
「それは陛下の強いご意志があったからでございます。もう一度申しますが特例に過ぎません」
「ではディサップの件も特例措置で良かろう」
「いえそれでは特例の意味がありません。既に臨時議会によりアリスティアラ様、並びにラミー様のご意見に賛成することが可決されております」
「お父様お願いいたします。私のことが気になられるようでしたら、私は王位を放棄いたします」
「ええっ⁉⁉」
これには国王だけでなく議員たち、ラミーまでもが驚きの声を上げた。
「アリスティアラ様考え直してください!」
「そうだ、アリスティアラ、何もそなたが責任を感じる必要はない」
「いえ皆様こそ私のことを気にしすぎです。ご存じの通り、私にはもう魔力がほとんど残っていません。魔力が無くとも公務ができないわけではありませんが、その範囲は限られてしまいます」
その場にいる人々は静かにアリスティアラの話を聴く。
「もちろん必要な公務はしっかりと行います。しかし私が継承権を放棄したとしてもお兄様をはじめとして親戚の方々がいらっしゃいますから後継者に困ることは無いと思います。」
アリスティアラは辺りを見渡して
「それにこの国には素晴らしい才能を持った人材がたくさんいます。
お父様、傍にいる方々を信じてください」
「アリスティアラ…」
国王は彼女の名前を呼んだ。
「分かった。アリスティアラがそれほどの覚悟を持っているのであれば尊重し、ディサップを第一位に戻そう。そして皆の者を信じよう」
「…!ありがとうございます!」
アリスティアラはふっと息を吐くとやっと険しさを緩ませた。
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