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私にできることって一体何があるのだろう。 


そう考えれば考える程、魔力が無いと何もできない自分への苛立ちと時間がないのだという焦りがアリスティアラを支配する。


そんなアリスティアラを見かねてか

「アリスティアラ様、陛下に進言していただけないでしょうか」

とラミーが言う。


「進言とは…」


「ディサップ様は魔力過多症がゆえに皇太子の座を奪われました。


今は病気に支配されているだけで、王としての素質は申し分ありません。


病気を治すことができれば、このように暴走することも無くなると思うのです。


だからこそ、ディサップ様を王位継承権第一位にしていただけないか、今一度陛下にお考えいただきたいのです」


ラミー様の意見は一理ある。


病気になる前はそれはそれは素晴らしいお兄様だった。優しくて、民のことをいつも考えていた。


魔力だってお父さまを凌ぐ、いや、比べ物にならないほどの量を持っている。


王位をお兄さまに戻せば、機嫌だって良くなるかもしれない。


「進言の理由は分かりました。でもイライラしているお父さまが、私の話に耳を傾けてくださるでしょうか」


聞き入れてくれるだろう!それほどまでに優遇され、溺愛されながらアリスティアラ様は一体何を言っておられるのだ!


というラミーの心の声がアリスティアラに聞こえるはずもない。


「陛下は今やアリスティアラさまをご自身の右腕として考えておられます。

そんなアリスティアラ様の進言を陛下が無下にされるとは思えません。」


「そう、かしら…」


「そうですとも!今すぐ陛下にお目通りをお願いいたします。時間がないのです」


「分かったわ。全力を尽くします」

そう言うとアリスティアラは王宮に向かって走り出した。



「お父さま!」


侍従の制止を振り切り、アリスティアラは執務室へと入る。


「どうしたのだ、そのように急いで」


「お兄さまのことで折り入ってお願いがあって参りました」


「ディサップの話はするな」

ディサップの話題を出すと国王の眉間にしわが寄った。


「いえ、お願いですから聞いてください」


母は胸の前で手を組んでおろおろしたまま二人の話に注意を向ける。


「なんの話だ」


その顔には娘をおいて自分だけ帰ってしまったという後ろめたい表情が浮かんでいた。


「ありがとうございます、王位継承権第一位をお兄さまに戻していただきたいのです」


「継承権を元に戻す!?なぜそのようなことを!?前代未聞のことですぞ!!」


宰相のミニスが声を張り上げる


「お前は黙っておれ。アリスティアラ、そなたはどうしてそのようなことを?」


「元々魔力は国一番です。正直お兄さまより魔力が少ない私が王になっても民は納得しないかと。」


「そんなことは無い」


「なぜそのように言い切られるのですか」


「そなたはディサップの代わりに日々公務に励んできた。そのことは私たちだけでなく民もよく知っているはずだ。

それと同時にディサップは暴走し病床に臥せっていることも知られている。どちらのほうが信頼されると思う」


アリスティアラ、と答えさせたいという王が持っていきたい話の流れ。アリスティアラは父のペースに飲み込まれないようにと今一度足に力を入れる。


「アリスティアラの方が人気があることは明確である。ディサップには重荷であろう。今さら継承権を戻すなどできん」


「継承権を戻したからといって一気に全てをお兄様に任せようとしている訳ではありません」


アリスティアラは何とか願いを聞き入れてもらおうと必死に話を続ける。


「お兄様の負担にならないようにいきなりではなく、分担しながら徐々に私の仕事量は減らしていきます。

もちろんお兄様のご公務のサポートも行います。公務の質の低下はさせません」


「国民からの批判はどうする。免れることはできないだろう」


「私から全て説明します。継承権を戻すことは私の望みであることを伝えればきっと納得してくれるはずです」


アリスティアラは王の目をまっすぐに見つめる。


「お父様には何のご迷惑もお掛けしないようにします」


「しかしだな、」


「責任は私が取ります。どうか聞き入れてはくださいませんでしょうか」


「アリス」

王が呼びかける。


「そこまでしてそなたが頑張らなければいけないのか?」


「え…?」


「ディサップが暴走する引き金を引いたのは私だろう。しかしディサップはずっと聡明なそなたに自分の立場を取られるのを警戒し、不満が溜まっていたことも事実だ。実際にディサップはそなたに魔力を向けたではないか」


「そうですが」


「毛嫌いしているそなたから情けをかけられたと考えてまた今回のような暴動を起こすこともあり得る。

今度は怪我だけでは済まないかもしれない。

アリスだけではなく国民にも被害が及んでしまうかもしれない。その状況になってもなお、そなたは責任を取れると言えるのか?」


「確かにまた暴動が起こる可能性もあります。でも私はお兄様を救いたいのです。国民は私の身に代えてでも守ります」


そう言うとアリスティアラは王に向かって深く頭を下げた。


王はふっと軽く息を吐き

「そなたの思いは分かった。できるだけ意見に沿うようにしよう」


王は今すぐにでも!というアリスティアラを右手で制した。


「だがこれだけ大きなことを私だけで決めてしまうのはいささか危険だ。少し待ってくれ」


「待てません!ラミー様方の制御魔法もいつまで持つか分かりません。切れるのは時間の問題ですわ」


アリスティアラは王に早急な決断を求める。

しかし王は渋り、了承しない。


「この手は使いたくなかったですが仕方ありませんね」


「アリス、何をする気だ」


アリスティアラはさっと右手を軽く上げた。





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