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「トマス様、」
「何だ」
アリスティアラの声を侍女の声と勘違いしたのか、偉そうな応対をするトマス。
「あら、婚約者に向かって何という態度でしょう」
「ア、アリスティアラ」
「今回のパーティーには体調不良で欠席されるのではなかったのですか?」
「いや、それはだな、いろいろあるんだ」
「何がいろいろあるんでしょうか?アピア様をエスコートされているのもその『いろいろ』に入るのでしょうか?」
アリスティアラの言葉にトマスはタジタジだ。
すると突然アピアが
「トマス様はアリスティアラ様よりも私を愛しておられるのですよ。
愛し合っている者の間に第3者が入るというのは野暮な話ですわ。
それとも妬かれているのですか?」
え、うん?どうやったらそういう考えになるんだ?どうして私が妬かなければいけないのよ。
「アピア様、あなたはこのパーティーに参加する条件を満たしていないわ。出て行ってちょうだい」
「私はトマス様の同行者ですわ。これだけでも十分条件は満たしていますわ」
「そうね、それだけなら条件は満たしますが、」
「何よ」
「あなたは王族に向かってどんな口の利き方をしているのかしら?」
「そんなの別にどうだって良いじゃない」
全く良くないのだ。
アピアの態度は十分不敬罪と言える。
「アピアにそんなこと言うな」
アピアをかばうトマス。
「アリスティアラこそパーティーに男と来ているじゃないか」
「まあ!あなたが体調不良で来れないというからでしょ!
それに、さっきお会いしてエスコートしていただいているだけよ」
アリスティアラの怒った声で何事かと集まる人々。
「アリスティアラ様、仮にもランドールの有力侯爵家のシューマン家の跡継ぎに向かって言い過ぎではないですか?」
そういうアピアは自国の王女に向かってずいぶんと言ってるけど?
「この結婚は王家と侯爵家のつながりを強めるために私たちが生まれた時から決められていた結婚よ。今さら何か言ったところで変わらないわ」
暗に部外者は引っ込んでいろと言っているのである。
「アリスティアラ、さっきから聞いていればずいぶんと偉そうに言うものだな」
は?偉そうなのはあなたたちの方でしょ。
「アリスティアラ、もうこうなれば婚約破棄だ」
「え?」
「シューマン・トマスはアフロディーテ・アリスティアラに婚約破棄を申し出る」
急に何なのこの人は。
「理由は?そんな簡単に破棄はできませんわよ」
「アリスティアラのことが好きになれないからだよ」
面倒くさそうに答えるトマス。
「大体アリスティアラは魔力が高いからと言って政治にも口出しをしているそうじゃないか。
しかも結婚しても仕事をするんだって?女は子供を産んで、おとなしく家庭に入ればいいんだよ」
トマスの言葉にざわめく人々。
ランドール王国はアリスティアラの力によって平和を保ってきたのにアリスティアラが政治の世界からいなくなってしまったらどうなるのか、とたくさんの顔が物語っている。
「俺は真実の愛を見つけたんだ」
「真実の愛?アピア様のことでしょうか?」
「そうに決まっているだろう!アピア以外に誰がいると言うんだ」
次は愛とか言い出したんだけど。
あーこの人本格的に頭おかしくなってる。
他に誰がいるって、婚約者の私がいるじゃないの。
トマスから「真実の愛」とやらを囁かれたくはないけどね。
王家と侯爵家との婚約は簡単に破棄できるわけないのに。
「アリス、お前は昔から愛想がないやつだった。
王女だから一応気を使って話しかけても『あー、はい』、とか『そうなんですね』
とかしか言わなかったな。だがアピアは違う。彼女はどんな話でも目を輝かせて聞いてくれる!俺はそういう所に惹かれたんだ」
トマスはざわめく空気など読まずに、一人アピアへの愛を語る。
本当にこの人は何を言っているのかしら。
でも!とアリスティアラが反論しようとしたところに、すっとトマスに近づくラミー。
「誰だ貴様は」
はあ。アリスティアラは心の中でため息をつく。苗字を名乗らなかったとはいえラミーさんのことが分からないとは。本当に世間知らずなお坊ちゃまよね。
「申し遅れました、魔力鑑定士のラミーと申します」
「ラミー?聞いたことが無いな」
「トマス様にお尋ねいたしますが、アリスティアラ様が仕事ばかりをしていることが気に入らないのでしょうか?」
「ああ。他にも理由はあるが大まかに言えばそんなところだ。
王宮には魔導士をはじめとして魔力を使う仕事をする人間がたくさんいる。
その者たちの仕事を片っ端から奪っているそうじゃないか。
だから恨みをかって、次元を飛ばされたんだろうよ」
え?なぜ次元を飛ばされたことをトマスは知っているんだろう。
婚約者であろうとも伝えられていなかったのに。
言った後にあ・・・と口をおさえるトマス。
「なぜアリスティアラ様が眠っていた本当の理由を知っているんだ」
「いや、別に・・・」
分かりやすく焦るトマス。
「これは詳しく話を聞く必要がありそうですね」
「何で鑑定士ごときに話さないといけないんだ!」
まーだラミーさんのことが分かってないのか。
「トマス、ラミー様はシュタウフェン家の跡取りよ」
「シュタウフェン?シュタウフェンって、あの公爵家の?」
「そう」
自分よりも格が高い相手だったと分かってトマスの顔が真っ青になっている。
と、その時アトラス王が席から降りてきた。
国王の登場にさすがのトマスも礼節を取る。
「トマス、久しぶりだな」
「はっ。長らくご無沙汰しております」
「先ほどからそなたの話を聞いていたのだが、」
「はい。陛下には大変申し訳なく思いますが、婚約を破棄していただけないかと」
いつもと変わらぬ王の態度に油断するトマス。
しかし王の顔の血管は浮き出ていた。
「ふむ。理由をもう一度聞かせてくれるか?」
「はい、私は真実の愛を見つけたのです。相手はアリスティアラ様ではない他の令嬢なのですが」
「そなた、自分が言っていることが不敬罪になると分からないのか!」
「え・・・不敬罪?」
アトラス王の言葉に戸惑うトマス。
「そうだ、お前は不敬罪だ。それにラミーが言う通り詳しく聞かなければいけない問題があるようだ。
衛兵、トマスを連れていけ!」
王は兵を呼ぶ。
「陛下!お待ちください!申し訳ありませんでした!お許しを!」
自分がどういう状況に置かれているのかやっと気づいたトマス。
「ならぬ」
「なぜ私が不敬罪になるのでしょうか!」
衛兵に両腕をつかまれながらも抵抗するトマス。
「まだ分からんのか!刑が決まるまで、そなたには自宅謹慎を申し付ける。
連れいていけ」
「陛下ー!」
トマスは許しの言葉を叫びながら連れられて行った。
「皆の者、身内の問題で騒がせてしまい申し訳なかった。今日のところはここらへんで終わろう」
王がお開きの合図をする。
そうしてアリスティアラの復帰パーティーは中途半端なところで終了した。
ー
トマスは牢屋に入れられた。
もちろん侯爵家という身分もあって、一般の囚人が入る牢屋ではないのだが。
「くそ、なんでこんなことになったんだ」
1人虚しく声をあげた。
読んでくださりありがとうございます!!
トマスがうざすぎで、書きながらイライラしています笑笑




