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「ランドール王国王女、アフロディーテ・アリスティアラ様です!」
侍従が声高々にアリスティアラの入場を知らせる。
「そしてシューマン・ト、」
言いかけて、ラミーの顔を2度見する侍従。
「あれ、トマス様は先ほど入場されたような」
侍従の言葉は幸いにも誰の耳にも届かず、ひとり言で終わった。
「失礼いたしました。シュタウフェン・ラミー様です!」
侍従の呼名に反応する人々。
「あの方、アリスティアラ様よ」
「とても綺麗よね」
ホールのあちこちから声が聞こえてくる。
「ああ、たくさんの人見られているわ。だから早めに来ておきたかったのに」
「大丈夫ですよ、アリスティアラ様。皆さんアリスティアラ様の美しさに見とれているんです」
緊張で顔がこわばるアスティアラに声をかけるラミー。
ラミーの言うことは決して大げさではなかった。
今日のアリスティアラはいつも以上に美しかったからだ。
柔らかな生地で作り、足元にいくにつれ色が濃くなっているブルーのエンパイアドレス。
アリスティアラの瞳と同じ色で作られたピアスと祖母である前王妃から頂いたサファイアのネックレス。
銀河のように流れる髪に、ほんのりと化粧をした顔。
どこをとっても非の打ち所がないアリスティアラの姿は訪れた人に衝撃を与えた。
「アリスティアラ様、ご回復おめでとうございます」
ラミーのエスコートのもと、王族の席まで歩いているアリスティアラに貴族や侯爵と言った国内でも格式の高い人たちからお祝いの言葉がかけられる。
「ありがとうございます」
さっきまでラミーに泣き言を言っていた人物とは思えないほど余裕のある対応は、さすが未来のランドール女王だと言わざるを得ない姿だった。
お父様が挨拶をする。ほぼ開会のあいさつみたいなものだけど。
「わが娘で、この国の守りともいえるアリスティアラが先日眠りから覚めた。
今日は私ではなくアリスティアラが主役だ。
アリスティアラの回復を祝って、このパーティーを始めることにしよう。
皆の者、ぜひとも楽しんでくれたまえ」
挨拶が終わると王宮お抱えの楽団が演奏を始める。
「アリスティアラ様、よろしければ私と一緒に踊りませんか?」
ラミー様にエスコートされているっていうのだけでも充分怪しまれているのに、ダンスなんてしたら・・・
でもまあここまでくればしてもしなくても変わらないか。
「はい」
アリスティアラはそう言ってラミーが差し出した手を取った。
ダンスが終わり、アリスティアラとラミーは互いに一礼をする。
その時、招かれた人々がざわざわしだした。
「アリスティアラ様、」
「どうしました?」
「あの後ろ姿、見覚えがあると思いませんか?」
ラミーが指さす方を見るとその後ろ姿は紛れもない私の婚約者、トマスの姿であった。
「隣にいるのは、」
「アピア様ですね。最近あの二人は付き合っているともっぱら噂ですよ。
もちろんトマス様のお父様であるシューマン侯爵はお許しになっていませんが」
ラミーの言葉を聞きながらアリスティアラはトマスに近づいていった。
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