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ころりと

「ところで、ロザリンド。一晩で三つも集落潰したのか。」


する事もないので、外に放置してあった四人目の胴体を含め、彼女らの所持品チェックをしながら、ロザリンドに尋ねた。

どうも、こいつらはこの場所を知っていた気配がある。

ほんの一瞬しか触れていなかったので、それほど読み取れた訳ではないのだが。


「いえ、私が此処を出たのは五日前になります。」


「…そうか。」


五日も寝てたのか。俺。


「何か、問題がありましたでしょうか。」


「日を跨ぐなら、使い魔でも寄越して連絡してくれ。」


言うと、ロザリンドはハッとしたような顔をする。

ホウレンソウぐらいはわかってくれるよな。


「申し訳ございません。その…狩りに夢中で。」


「いや、良い。産まれたばかりの魔物は、そんなものだろう。」


「いえ、その。」


どうしたのか?ものすごく言いづらそうだ。

お、こいつら地図持ってる。なんかすんごい大雑把で、めっちゃ適当に位置関係だけ落とし込みましたみたいな地図だけど。


「使い魔を、眷属を増やす事を失念しておりました。」


「え?」


「申し訳ございません。」


顔を上げてロザリンドに目をやると、目尻を下げ、しゅん、としていた。

なんか、可愛いなこいつ。


「良い。俺も特に指示しなかったしな。」


言って、また所持品チェックに戻る。

地図のほか、特に良い物は無さそうだ。

武器類も、低品質という訳ではないが、使い古したモノだし、そこらに放っておけば良いだろう。

ダンジョンの魔力で変質し、使い出のある物になるかもしれない。

彼女らの装備を剥がし、肉体だけをスライムの穴に放り込む。


「さて、俺も少し出てみようか。」


「っ!?魔王様、なりません。御身に何かあれば。」


入口へ向かう俺をロザリンドがしがみつくようにして止める。

ダンジョンを統べる魔王たる俺は、ダンジョンから出るとそこらの魔物とそう変わらない。

いや、それなりに強くはあるのだろうが、ダンジョン内で使える反則じみた権能はほぼ使えないのだ。


「まぁまぁ、少しだけだ。すぐ戻るさ。」


本当に入り口周辺を、少し見てみたいだけだ。

特に理由はない。


ロザリンドは、ピタリと付いてきた。護衛のつもりらしい。


ドロドロとした通路を抜け、外に出る。

陽の光を浴びた瞬間、身に纏っていた魔力が霧散するのを感じた。

目の前は鬱蒼とした林で、特に面白味はない。

背後には山々が聳え立っているのが見えた。

頂上は雲がかかっていて、見えない。


「世界は変わっても、空は青いんだな。」


青い空。太陽も一つ。奇抜な色をした木などもなく、鳥の囀り、蠢く昆虫。

前世と何ら変わりない光景だ。


雲が、ゆっくりと流れていく。

しばらくの間、俺はじっとそれを見つめていた。

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