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初の侵入者

いつの間にか眠っていたらしい。

侵入者を知覚して、目が覚めた。

数は三名、魂の容量はそれほどでもないが、鍛え上げられた肉体と、それなりの身のこなしをしている。

魔術でも使っているのか、光の玉のようなもので足元を照らしているようだ。

どうやら、この洞穴にさえ入れば、自分の身体の一部のように、入り口から侵入者を知覚できるらしい。

でも、おれんち、まだ出来たばかりだからさ、入場したら即ボス部屋なんだよね。


「なんてこと」


涅槃の構えで侵入者を迎えると、先頭にいた女が呟いた。

腰の短剣を引き抜き、構えているが、全身が瘧のように震えている。

革鎧に短剣、背後にいる二人は短槍を構え、腰に剣があった。


「やぁ、どうも。」


めちゃくちゃビビられてるな。

いや、この三人からは全く脅威を感じないので、それなりに実力差があるのだろう。

向こうもそれを感じる程度の実力はある、という事だ。


「歓迎しよう。そして、死ね。」


立ち上がって、指先に魔力を集める。

なんかレーザーみたいなのをピュンピュン飛ばしたらカッコよさげだが、あまり燃費が良くなさそうなので、そのまま女に肉薄する。

背後の二人は、槍を放り出して逃げ出した。


女が声をあげる前に、その胸に腕を突き刺し、心臓を握り潰した。

魂が、流れ込んでくるのを感じる。

なるほど。これは良い。

身体も問題無く動く。


一瞬、その快感に浸りたくなるが、後の二人も逃がすべきではない。


心臓を握り潰した女を放り捨て、追いかけると、二人は入口の前で立ち尽くしていた。

二人の先には、陽の光を背にして、ロザリンドが良い笑顔で立っている。

外で調達できたのか、真っ黒なドレスを身に纏い、左手には人間の男の頭があった。

というか、あいつ陽の光は平気なのか。

前世的な吸血鬼だと、灰になってるんじゃないかと思ったが、陽の光が大嫌いなだけ、という吸血鬼もいたので、そういうもんなのかもしれない。


さて、あの女に触れた情報によると、四人でチームを組んでいたようだ。

三人が戻らなければ、外の一人が危機を仲間に知らせる。

そんな段取りだったのだろう。


「私が頂いても?魔王様。」


「好きにしろ。だが、必ず殺してくれよ。魂が足りない。」


「ありがとうございます。」


獲物の二人が、何か聖句のようなものを唱え始めた。

魔術的な意味はなく、死後に魂の救済を願う、この世界の宗教的なものだろう。

小便を漏らし、顔面を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら、それでも救いを求める二人が、なんとも哀れだ。


そして、それを冷静に眺めながら、愉悦を感じている自分に、本当に人では無くなったんだな、と実感させられる。

先程殺した女の事も、既に忘れかかっていた。




さて、都合成人した三人の魂が、手に入った。

こいつらは、手元にあるだけだと俺のエネルギーとして消耗されるしかない燃料のようなものなのだが、ダンジョンを形成する上で、非常に重要な価値がある。

部屋や罠などを作る対価、魔物そのものや強力な武器を生み出す材料、何にでも使えるのだ。


と言っても、強力なものを作ろうとすれば、それだけの質と量が必要だ。

三人ぽっちじゃ部屋一つ作れやしない。


「という訳で、今回はスライムでも生み出す事にしよう。」


「はっ。」


ロザリンドは上機嫌な満面の笑みで肯首する。

先程尋ねたら、開拓村っぽい小規模な集落を三つほど、併せて四十人ほど喰って来たらしい。

飢えが満たされた上に、余程の大魔術以外の能力はほぼ問題無く使えるとかで、ダンジョン防衛にも不安が無くなったようだ。


まぁ、あの程度の人間なら、数十人規模で押し寄せても何とかなりそうだ。


とりあえず、入り口から直通となっているこの部屋に、深さ3mほどの穴を設置。

魂の欠片を核に、スライムを生み出せるだけ生み出す。

一体だけ穴に放り込み、あとは通路の壁に張り付かせた。

このスライムは、某ドラ○エのような雑魚ではない。

いや、まぁ、対処さえ出来れば、どうという事もないのだが、侵入者にとってもそれほど脅威にはならない筈だ。

なんせこいつら、食欲しかないのだ。他のいかなる意思も持っていない。

そして、ある程度喰うと勝手に分裂する。

何か命令しても、理解する為の脳を持ち合わせてないので、魂もうっすいモノしか持ってない。

何でも溶かして何でも喰うので、掃除屋としては非常に便利なのだ。


「ところで、ロザリンド。その服、どこから調達してきた?」


ドロドロの粘液と粘体がぶち撒けられ、見るからに気色悪くなった通路を眺め、ロザリンドに声をかけた。

配下らしく、俺の背後でずっと控えている。


「私の血で出来ております。血さえあれば、種族柄大抵の事はできますので。」


「そうか。便利なもんだな。それに、よく似合っている。」


「…ありがとうございます。」


俺は、未だマッパだった。


種族:ヴァンパイア


現代においては、希少な種となった魔物。吸血鬼とも呼ばれる。

素体は人。何らかの要因で変質し、突如として発生する。

記録に残っている限り、太古にあったと言う神々の時代から存在する非常に古い種族であるが、血液を摂取出来なければ生存出来ない種族である為、人類の生存圏から隔離されると容易く絶滅させられる。

その為、人が国家を形成する以前に死に絶えた伝説上の魔物。

個体としては非常に強力で、体内に接種した血液をほぼ無限に蓄積し、ありとあらゆる魔術を扱い、蓄積した血液が尽きるまで死ぬ事はない不死性も併せ持つ。

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