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そして、一月後。

騎士団の襲撃から、およそ一月が経過した。

あれから騎士どもは、一組六名程度の少数でしか入って来なくなった。

今も、三組ほどの騎士どもが侵入中だが、ロザリンドの狼と遭遇して撤退を始めていた。


野営地にいた騎士の殆どを殺してしまったので、大人数でやって来ないのは当然だと言える。

そして、その少数での活動が、ダンジョン内での生存率を上げる事に気づいたようだ。

実際、ダンジョン内の通路は大きくてもミノタウロスが這ってギリギリ通れるか、と言う程度までしか広げる事ができない。


数で攻めようにも、向こうも気配を察知すると、すぐに撤収するので、今は対策を考えている所だ。


「魔王様、茶をお持ちしました。」


ダンジョンの地図を机に広げ、思案しているとインプの侍女が入ってくる。

見た目は人に近いが、小さな角と尻尾、蝙蝠のような羽根がある。

そこそこ魔術も使え、頭も回るので重宝している。


ダンジョンの部屋数は大小併せて五十を越えた。

創り出した魔物も、二百はいるだろう。

勝手に番を作って増える魔物もいるので、これからはその気にならなければ、実数を把握する事は難しくなる。


「ありがとう。お前も飲みたければ、自分で淹れて飲むといい。」


「あ、ありがとうございます。魔王様。」


モジモジと身を捻らせる。

見た目も仕草も、少女のそれだが、インプはインプ。

本音を言わせると、魂を少し齧らせてくれなどと宣うので、気を緩める事が出来ない。


「下がって良い。」


「はい、失礼します。」


ロザリンドの狼が、騎士達をダンジョンから追い出したようだ。

久しぶりに、魔物達の様子を見に行かねばならない。

剣を帯びる。

これも、最近作ったものだ。

魂から創った魔物は別として、勝手に住み着いた魔物は、ごく稀に襲ってくる者もいる。

念の為、とロザリンドなどがやかましく言うので、一応帯びるようにしていた。



最初の部屋に転移した。

魔術の一種だが、俺の場合はダンジョン内の権能に近い。ダンジョン内部であれば、殆ど魔力の消費はないし、どの部屋、どの通路にも転移する事ができる。

ダンジョンの外になると、視認している範囲のみで、魔力の消費も大きくなる。余り、使い勝手の良い魔術ではない。


俺の姿を認めたロザリンドの狼が、おすわりの体勢で俺を迎えていた。

きちんと整列しているあたり、よく躾られているのだろう。


「あら、魔王様、こんな所にいらっしゃるとは。」


ロザリンドが転移してきた。

大量の魂を吸ったおかげか、ダンジョン内の魔物のうち、彼女だけが俺の権能の一部を使えるようになった。

ミノタウロスは未だに物理で殴る事しかできないので、おそらく魂を共有している彼女だけの特権だろう。


「少し、見回りにな。ここのところ、知らぬ間に魔物が増えている事も多い。」


「随分と賑やかになりましたからね。お供してもよろしいですか?」


「構わんよ。」


許可すると、ロザリンドは嬉しげに微笑み、狼に手で何か合図した。

一斉に散らばって駆け出して行く。

本当に、よく躾けられているな。


「さぁ、参りましょうか。」


心なし、彼女の声は弾んでいた。




入り口のスライムは、相変わらず入り口に陣取っていた。

いくらか変色しているスライムもいて、他のスライムを喰っていたりする。

その喰われているスライムが、喰っているスライムの一部を喰い、その性質を取り入れて…と、奇妙な自然界を形成していた。


「あの少し赤いスライムがアシッドスライム、強い酸性を持ちます。青いのはポイズンスライム、触れた者に細菌性の毒を送り込むスライムです。あの岩に擬態しているのはロックスライム、ただ擬態しているだけのスライムですね。」


何と言うか、また増えてるよね?

一定数以上は増えないとは言え、多種多様過ぎて、もはや理解が追いつかない。

侵入者共も、さぞ困惑するだろう。


「なお、ここのスライムは全て火と塩分による浸透圧への耐性を獲得済みです。ここに紛れ込んだスライムも同様に耐性を獲得するので、清掃用スライムは別の部屋で養殖しております。」


「なるほど。よくわからん。」


このスライム達は何処に行こうとしているのか。

たまに覗いて、妙な変異種がいないか確認させているので、大きな問題にはならないと思う。

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