それぞれの備え
まずは、部屋を増やした。
手元にある盗賊どもの魂は百を越えている。
高い天井を備えた大部屋を一つ、最初の部屋と変わらないサイズの部屋を三つ、迷路の様に曲がりくねった通路で繋ぐ。
ダンジョン形成はかなり自由度は高いのだが、いくつかの制約がある。
その一つが、入り口と最奥の部屋が繋がっている事だ。
そして、俺が最も力を出せるのも最奥の部屋だ。
全ての権能において、そうなっていて、これはダンジョン形成や魔物の創造も含まれる。
次に、大部屋にありったけの魂と魔力を注ぎ込んで魔物を創造する。
強く、ただ強く。
不死と見紛う程の強靭な肉体。
見る者を圧倒する巨躯。
恐れを知らぬ闘争心。
牛頭の巨人、ミノタウロス。
背丈は5mはあるだろうか。
異様に発達した腕の筋肉と、頭部の太く鋭い角が特徴的な魔物だ。
ただ、まともな声帯がないので、言葉を発する事はできない。
意思疎通はこちら側からの一方通行だ。
「当面の侵入者は、お前に任せる。」
大部屋まで足を運ぶと、跪いて出迎えたミノタウロスに、そう声を掛けた。
ここのところ、盗賊どもの侵入が激しく、寝る間もなかったのだ。
別に睡眠が必要な身体ではないのだが、適度なリラックスは必要だと思う。
このダンジョンには未だ娯楽の一つない。
盗賊どもを引き裂くのは良い気晴らしになるが、雑魚相手の戦闘に浸り切ってしまう恐れもあった。
魔力も空っぽになったので、久しぶりに暫く眠ろうと思う。
「副長!賊徒の生き残りを捕らえました!」
明日には隊長が到着すると言う報告を受けていた時だった。
ダンジョンを見張らせていた騎士数名が、息を切らせて野営地に駆け込んできた。
手足を縛られた男が、地面に転がされた。
青褪めた顔をして、全身が震えている。
かすかに、尿の臭いが漂っていた。
「良くやった。何か話したか?」
「いえ、酷く怯えておりまして、意味のない事を呟くばかりです。」
「気付けの酒でも飲ませてやれ。落ち着いたら私の所に連れてこい。」
「承知いたしました。」
賊徒が、引き摺られていく。
その表情に、恐怖以外の感情はない様に見えた。
林の伐採は順調に進んでいた。
人の手が入っていない林ではあるが、土地の起伏はそれ程多くない。
伐採した木は野営地の柵と櫓に使い、残りは貯蔵している。
開拓村を訪れる筈だった行商人が、こちらに雑貨やちょっとした食べ物などを売り込んでくる事もあり、対価として木材を求める者もいるのだ。
自然と、ダンジョン攻略の拠点らしくなってきた。
ガーランドは、腰を据える覚悟を決めている。
必要であれば、一月でも二月でも攻め続けるつもりだ。
周辺の林の賊徒も、そろそろ根絶やしになる頃だ。
補給が続く限り、いくらでも駐屯する備えは出来上がりつつあった。
種族:ミノタウロス
魔物の中でもトップクラスのパワーファイター。
圧倒的な怪力とタフネスを誇り、様々武器を自在に操る技量を併せ持つ。
その反面、知恵は余り無く、魔術的な能力はもちろん皆無で、細やかな気配りなどもできない。
比較的著名な魔物で、地上にも野生のミノタウロスは存在する。胎生。




