愚か者の言い訳
「うおおおお!! なんてこったい!」
真夜中の湯船の中でうつらうつらしていた私の目は一気に醒めた。
右手に握られていたはずのスマートフォンの白いボディが、ゆらゆらと水中に沈んでゆく。その姿を為す術もなく見送った私は、自分の迂闊さを死ぬほど悔やんだ。
このスマホ、精密機器をすぐ壊す自分に贅沢なものはもったいないと考えて買った、比較的低価格な品。なので、むろん防水機能などついていない。
しかし、いくら低価格とは言え、私のような庶民にはそこそこの出費ではあるし、何より買い替えてまだ数カ月である。
浴室へ持ち込む場合、いつもはちゃんと防水ケースに入れるのだが、文字をたくさん打ち込むときは、ケース越しだとやりにくいし、短時間ならまあ良かろうと、そのまま持ち込んだ愚か者の私だ。
湿気のことも考えろっちゅーねん! と、今なら思うのだが、眠気で判断力が落ちていたのだろう。(言い訳①)
「書かねば~!! 連載を三日も更新せぬとあらば、天の神のお怒りに触れ、この村は滅ぼされるであろう。もうお終いじゃ!」という台詞を吐く、架空の村の村人になったが如く、私の心は焦りと恐れに支配され、やらかしてしまったと言うことだ。
それに、眠くないときなら、もっと上手く書けるもんねーだ!(言い訳②)
しかし、転んでもただでは起きないと言うか、どんなことがあろうと「うむ! 書くネタみっけ!」とばかりに作品に仕立て上げるこの根性……我ながらゾッとする。
仕事か!? 生業なのか? というくらいの熱意と責任感を持って挑んでると言うか。
なに? プロなん? プロの作家ならぬプロのドジっ子なん? と言うくらい、私は実は昔からドジっ子で、夫にも、「おかーさんは《残念な生き物図鑑》に載せて貰えるレベル」と言われるくらいなのである。
例えば、車に乗って買い物に行って、車を置いて徒歩で帰ってくるとか、電車で眠りこけてしまい、隣県(けっこう遠い)まで行ってしまうとか、酔っ払って駅の中で迷子になってしまうとか、財布を忘れて買い物に行き、レジで慌てふためくとか……いろいろあり過ぎて思い出すのもツライって感じなのだ。
若い頃から、話すとしっかり者だと思われ、責任ある立場を任されたりしがちだった私なのだが、中身は昔からかなりのサザエさんなのである。
お魚くわえたどら猫を、裸足で追っかけた前世の記憶があるような気がしてくる……
その、ちゃんとできる自分と、ダメダメな自分のアンバランスさが悩みの種でもある。
コンディションの良いときは「はいはい、これくらいならお手のもの」とサクサク出来るのに、だめモードのときは「うえーん、もうムリ~! たしゅけて~」となってしまう。
お気づきだろうか。文章にもそれがよーーく現れてしまっていることを。そこを考慮して、変なときは見逃してやって欲しい(言い訳③)
なお、この作品は、我が家の何でも引き出し(何でもとりあえず入れておく場所)から発掘された、いにしえのスマホを駆使して書かれている。そりゃもう、使いにくいったらない。
と言うわけで、この文章がおかしい場合、それは私がポンコツだからではなく、いにしえのスマホのせいなんだからね!(言い訳④)
失礼いたしましたm(_ _)m