物語のプロローグのような……
職場の看護師のお姉様(67)に聞いたお話です。
語り口調が面白くて大好きなので、ほぼそのまま再現しております(*^^*)
有名なお話ですが、やはり実際聞くと不思議だなあと……
ねえ、ちょっと、お掃除のおねえさん。あれ何だっけ。
え? あれよぉ、あれ。ほら〜、けらさんぱらさん?
えっ、違う? 何だって? やだっ、あはは〜!
そうそう。おねえさん正解!『ケサランパサラン』だ。
でもさ『ケサランパサラン』て、不思議な言葉だねえ。
初めて聞いたとき、お菓子かと思った。
なんか、そんな名前のお菓子なかった?
えっ、サバラン? ああ、そうそう、そうだった。
私の地元、宮城なんだけどね。
幼なじみの男の子……って言っても、もう六十過ぎてるんだけど、その子の実家に、そのケサランパサランがあるらしいのよ。
まあ、次男だし? 今は東京に住んでるから、あんまり実家には帰らないらしいんだけどさ。
そんなものが家にあって、代々受け継がれてるなんてさ、大人になるまで知らなかったんだって。
大学生のとき、お正月に帰省して皆で集まったときにさ、初めて見せて貰ったんだって言うのよ。
ケサランパサランを持ってることを誰かに話しちゃうと、幸せ? 魔法? そういうのが消えちゃうんだって。だから、うっかりお友だちに喋っちゃいそうな子どもには見せらんなかったんだろうね。
えっ、私に話しちゃってるじゃんって?
あはは〜! そうそう、そうなのよ〜! いいのかねえ? うん、まあ、良いんじゃない?
でね、話すだけでもダメなんだから、一族以外に見せるなんてことは絶対ないんだってさ。
年に一度だけ、お正月とか、お盆とか、皆で集まったときにね、箱を開けて見るんだって。
えーーと、どんな箱だって言ってたかなあ?
あっ、そうそう! 桐の箱、四角いやつ。
その中にね、ふわふわの綿が敷いてあって、お化粧に使う、あの、なんて言うの? パタパタって顔に叩くやつ。そう、白粉! あれをね、綿の上にたっぷり撒いてね、そこに狐の尾っぽのふわふわの部分、バサバサのところじゃなくて、ふわっふわの白い毛ね、あれを入れとくんだってよ。その家のご先祖が一つ目を入れたんだろうね。
それで蓋をして、大切に仕舞っとくわけ。蔵の奥とかにさ、誰にも見つからない場所に。
で、それを一年経ってから開けるとね、増えてるんだって!
もう、毎年増えるらしいのよ。
そう! 不思議だよねえ。私もそう思うわ〜。
でも、本当なんだって言うのよ。
なんで増えるんだろうね? その子が言うにはね、妖精? そう、妖精化するんだって言ってた。
白粉を食べて、ただの毛が妖精になるんだって。
だから、年に一度は白粉を足すわけね。
本当、不思議な話だよねえ? そういう不思議な話、田舎にはいっぱいあるよね。
あなたのところにも、そういう話あるんじゃない?
これを元に物語を……とも思ったのですが、なかなか手が回らないので、このまま小噺として書いてみました。