箱詰めの少女
もうずうっと
箱に入っているから、
外に出たくて
仕方がなかった。
黒い髪の少女は
教室の片隅にいるときも
友達と喋っているときも
街中の人混みでも
最近出来た彼氏と遊んでいるときでも
もうずうっと 箱に入っている。
あるとき空から箱が降ってきて、
少女を箱詰めにしたのだ。
それから、もうずうっと
箱に入っているから
真っ暗闇の深海のようだから
いい加減外に出たかった。
友達はすぐそこにいるのに
遠い世界の 人間みたいに
恋人はすぐそこにいるのに
別の次元の 人間みたいに
届かない。
届かないから、
もうずうっと息が苦しくて たまらないから、
ある時ビリビリに引き裂いてやろうと
鋭いカッター 持ち出して
ずぶりと 突き刺す その箱は
薄いが分厚い 膜のよう
白くて鋼の 膜のよう
すべての世界は 遠くに感じる
泣いても溶けない 響かない箱
一生真っ暗 闇の中
少女の息は 山頂のよう
薄くて儚い 酸素にもがく
ただただ体は 生かされてる
ただただ手足が 動いているだけ
箱詰めされた 人形のよう
誰も開けずに 未来も閉じてる
終わらない夜
終わらせるため
真っ暗な深夜
真夏の暑い 深夜の中で
カッターはもう箱を刺さなかった
箱は刺さなかった
箱から何かが
溢れてく
箱からすべてが
溢れてく。
真っ暗な深夜
やっと外に
出られたね
どこかで誰かが
呟いた。