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神禄剣鬼伝  作者: 真赭
29/31

参ノ巻【鳴神撃剣】拾弐

続きとなります。

「はあ……お恥ずかしい限りだよ」

「いやいや、明るくて気の良いお姉さんじゃないか」

「あれは気の良いというか何も考えていないが正しいよ……はぁ」

 手で顔を覆う棗が大きな溜息。

「今までは清廉で真面目な方だと思ってたけど……意外とフレンドリーでお茶目なのな、ちょっと見方が変わったぜ」

「お茶目というか抜けてるだよ……まさか二人に知られるなんて、今更になって恥ずかしくなってきた」

「兄弟がいるだけ羨ましいよ」

 二人と共に試合場へと戻る。

「そういえば智慧は一人っ子なんだっけか」

「ああ、だから兄弟姉妹のいる二人は羨ましい限りだ」

「そうでもねえぜ? 兄貴と比べられるし、色々と家での扱いも変わってくるしよ」

「祝くんちは陰陽師だものね、たしかにそう言うのはあるか」

「その点、棗はあんな美人の姉貴がいて勝ち組だよな」

「いやいや、あれは営業用の顔だからね。私用の普段を見たら一気に幻滅するよ」  

「そうかあ?」

 観客席へと戻ってくる。

「おっと、初っ端から試合だったわ」

「僕もだ。それじゃあね」

 足早に去ってゆく二人。

 とりあえず美夜の待つ観客席側へと戻り――ふと足が止まる。

 視界の先、観客席に腰掛けた美夜とその横に座るもう一人。

(どうして葛木さんが美夜と……?)

 神那岐学園とは違った意匠の制服を身に着けた女子――葛木さんが美夜と何やら話していた。

(まて……美夜と一体何の接点が? たしかに二人は荒霊だけれど……美夜はここ十数年村から出ていない)

 自分の物心が付いた頃から美夜はいつも横に居てくれた、一時も離れず自分の側にいてくれた。

 だが、そうなると自分の生まれる前に知り合っているという事になる。

(老齢の荒霊なのは間違いないだろうし……まさか昔からの知り合いとか?)

 すると、葛木さんがくるりとこちらを向いてくる。

 花の咲いたような笑み。

(お見通し……か)

 腰の太刀に意識をやりつつ二人の元へ。

『戻りましたか智慧』

 片手にはいつの間に買っていたのか、ポテトチップスの袋が。

「ああ――で、色々と突っ込みどころがあるけど……葛木さんと知り合いなのか」

『ええ、遠い遠い昔からの……まさか生きているとは思っておりませんでしたが』

 当の葛木さんと言えば、慈愛に満ちた眼差しでこちらを見つめている。

「……それは本当ですか葛木さん?」

「はい、私と酒て――いや、美夜さんとは千年ほど前に」

 やはり老齢の荒霊だったのか、だが美夜と知り合いとは初耳である。

『ですがお前はあの夜、火廣金の刀によって首を刎ねられ、骸は洞穴の奥へと封じられた筈……なぜ生きているのですか』

 警戒した美夜の声音。

「ええ、確かに私は一度祓われた……だけれども今こうして貴方と源さんの目の前にいる。それが答えではなくて?」

『禅問答してるほど私は気長な性分ではないのですよ? 答えなさい、お前はどうやって蘇った?』

 隠れていた角が伸び、口元から鋭い牙が覗く。

 ただならぬ殺気と凶暴な荒霊と対峙したときのような緊張感。

「ふふ……何年経っても気短なところは直らないのね。答えは自ずとやって来る、私が言わずとも他の誰かが答えてくれるわ――酒呑童子」

 そう言い残し、止める間もなく去っていってしまう。

「……美夜、葛木さん――いや、あの人は一体何者なんだ」

『知りたいのですか?』

「こちらとしては毎日荒霊に命を狙われてる身なんだ、知っておいて損は無いだろ?」

『道理には叶ってますね。ですが、知ったところでどうするつもりですか? あいつを討つとでも?』

「それは……」

『敵を知っておく分には問題ないですが……どうしても知りたいというのですか』

「……うん」

『ならばお教えしましょう。あの女――いえ、あの荒霊の名は【土蜘蛛】かつて、刀士遣の開祖である源頼光を瀕死にまで追い込んだ最悪の荒霊です』

 信じがたい言葉に一瞬だけ思考が止まってしまう。

『祓われる寸前まで都の人間を幾百も喰らい、首を刎ねられるその寸前まで抗った……現代で例えるなら連続殺人鬼をさらに危険にしたような奴ですね』

「……そんなに危険な荒霊なのか」

『土蜘蛛に喰われた人間は少なくとも数百以上。奴の腹を切り開いた際、数え切れない程の髑髏が転がり出てきましたし奴の巣穴の最奥にはおびただしい量の骨と甲冑が埋まっていました』

「想像しただけで寒くなってきた――んん? 数百って事は、葛木さ――土蜘蛛は大きいのか」

『はい、今でいうと……』

 美夜がぼんやりと空を見つめる。

『そうですね……4トントラックくらいの大きさだったでしょうか。祓いに行く際に連れた馬が糸で絡め取られて喰い殺されましたから、数メートルくらいはありますよ』

「えっ……あの姿以上に大きいじゃないか」

『妖怪――いえ、現代では荒霊でしたか――には人間の物差しというものは当てはまりませんよ。それは智慧もご存知でしょう』

「あ、ああ……だけどあの女の子が……?」

『はい、あんな上品でお高そうな見てくれですが中身はそこら辺の荒霊なんぞ一蹴してしまう程に危険な奴です。一滴で致死に至る強力な毒と甲冑すら豆腐の様に両断する強固な糸、そして最も注意すべき点は狙った餌は絶対に逃さないしつこさです』

 だが、喫茶店で見せた表情は……あれは本当の人間のようだった。

 同じ年頃の異性の、少し恥ずかしそうで、どこか人間臭さを感じさせるあの表情。

(それじゃあ告白も本意じゃなくて食欲からってことなのか……?)

 もしあの時にイエスなどと言っていたら頭から一飲みにされていたのかもしれない。

『ですが、土蜘蛛が智慧を気にしている事よりさらに重要な問題があります』

「えっ、さらに何か大変な問題が?」

『もう忘れたのですか? 私が土蜘蛛に対して言ったことを』

「ええと……」

『土蜘蛛の奴が生き返った事です』

「ああ! でも、生き返ったって――」

『そこなのです。土蜘蛛は【膝丸】という火廣金の太刀で首を刎ねられて「確かに祓われた……』

「だけど、現に生きている……たしかに問題があるというか辻褄が合わないな」

『そうなのです。頼光の奴が土蜘蛛の首を首桶に入れ、切り離された身体は私と月季が洞窟の奥へと埋めました。それは間違いありません』

「美夜がその――葛木さんを殺したのか?」

『智慧、あの姿に絆されたのですか?』

「そんなことは無い。でも、どうしても葛木さんと土蜘蛛が同じ存在ってのがすんなりと頭に入ってこないんだ」

『……月季にこんな腑抜けた姿を見られたら木刀で殴られますよ』

「分かっている――で、確かに土蜘蛛は祓われたんだよな?」

『はい、確かにこの目で見ましたし使われたのは荒霊に効力のある火廣金の刃……』

「ちょっと失礼なことを言うかもしれないけどご先祖様が仕留め損じたって可能性は?」

 美夜の驚いた顔。

『まさか! それは絶対にありえません、私が菓子を目の前にして断るくらいの在り得ない話ですよ』

「例えが分かりにくいよ……でも、仕留め損なってないってなると後は本当に甦ったのか」

『それも考えずらいです。人間も妖怪も【反魂の術】は外法中の外法……それこそ糞ったれ陰キャである清明でもなければ無理な芸当ですよ』

「ええと……その清明ってのはもしかしてあの安倍晴明?」

『はい、人を食ったようないけ好かない狐野郎。たしかに妖狐の子ではありましたが妖怪に肩入れする人情は持ち合わせておりません、ましてや反魂の術は一たび使えば使用者に大いなる代償が課せられますから』

 陰陽道までは勉強していないので詳しくは分からないが、少なくとも当時の誰かが蘇らせた可能性は低いということである。

「うーん……これは俺達だけじゃあ対処できそうにない程度の話だな」

『そうですね、少なくとも月季と鶫に相談しないと面倒な事になりそうです』

「ああ、あの2人なら分かるかも」

――天井からアナウンスが流れ、自分の試合が回って来る。

「っと、試合に行ってくるよ。可能であれば美夜の方で月季か鶫に聞いておいてくれるか」

『了解です。ですが、果たしてあの2人がまともにパソコンやスマホを使えるかどうか……』

「あー……月季は絶対に無理そうだ」

『期待はしないでおいて下さいね』

「分かった」

 太刀を片手に観客席の間を急いで進む。

 試合場へと降り立ち――対戦相手に思わず面食らってしまう。

「月島さんが相手か」

 正面に立つのは、片鎌槍を構えた女子生徒――月島さん。

「事情は把握しているけどわざと負ける程お人好しじゃない」

 鮮やかな海色の刃に十文字槍の片刃を失った様な歪な形の片鎌穂。

 長いリーチの牙や爪を持つ荒霊に対しての経験は幾百とあるが、人間の使う槍に対しては学園での訓練だけで両手で数える程度しか無い。

 加えて実力が未知数な月島さん。正直に言うと同じ班の中で最も不確定要素のある人である。

(長い範囲に対しての技……そんな都合の良い物なんてあったか?)

 月季から死ぬほど叩き込まれた無数の剣技は否が応でも頭と身体が覚えている。

 始まりの合図が上げられ、月島さんが下段に槍を構えてこちらを見据えてくる。

「負けても勝っても恨みっこなしで」

「こちとら負けてられない立場なんでね……!」

 相手が下段ならこちらも合わせて下段の構え。

 半身に体をやり、擬似的な槍の構えを取る。

 無言の月島さんが鋭い踏み込みと共に脚部を狙った突きを放ってくる。

 相手にしにくい幅広の鎌刃。横へ良ければ薙ぎが飛び、後ろへ下がれば穂先が来る。

 残るは前へと進むのみ。

(初実戦導入だ……!)

 前へと前進するように身体を宙へと放る。

 切っ先を地面に突き刺しつつ――腕力と勢いで上へと押し上げる。

 半身を振り抜き、さらに上へ。

 木の型・空蝉

 下、槍の穂先が突き刺した太刀の刃にぶち当たり、打ち付けられた勢いと身体を捻って空中で一回転。

 槍の柄を踏みつけつつ――月島さんの喉元に刃を突きつける。

「出来れば観念してほしいな」

「首を取るまで戦は終わらない」

 一瞬、脇腹に走る小さな不快な痛み。

 反射的に後ろへと飛び――一瞬遅れて月島さんの足元に落ちた影から伸びた細い何が空を切る。

「ちょっ……伴獣はアリ⁉」

 思わず審判役と運営席を見てしまう。

『これは刀士遣としての撃剣試合なので――伴獣の使役も問題なしとします!』

 自分の表情でが分かったのか、運営席の嘉月さんがマイク片手に高々と叫ぶ。

 騒然とする会場。

「そもそもルールに書かれていないし、禁止項目にも載っていない」

 横っ腹狙いの鎌穂が横からすっ飛んでくる。

 霞堤で受けつつ、斜め後ろへとずれる。

『えー、言い忘れていましたが今年の撃剣試合から拝力を使ってもOKとなっております。現場で実力の出し惜しみは死に直結、つまりどんな手を使っても無問題とします!』

 続けるように嘉月さんのアナウンス。

 鎌穂の切っ先からしなるように黒い何かが飛んでくる。

 半身を僅かにずらし、鼻先が掠める。

「もはや二対一じゃないか」

「なら智慧も呼ぶといい」

 そうは言ってもこちらは鬼である美夜。テレビ局なんかに撮影されたら大事になりそうだし、それに美夜はこういう状況だと呼んでも応じてくれないだろう。

「一人で十分さ……!」

 腹狙いを霞堤で弾き、一瞬だけ振るわれる『黒い何か』の姿が見える。

(蜘蛛の脚……⁉ やはり月島さんの伴獣は牛鬼か!)

 何度か祓った事のある大蜘蛛とほとんど同じ形、ちがうとすれば顔が牙の生えた牛顔で非常に獰猛で危険ということ。

(美夜の見た通りか……だけど何故姿を表さないんだ?)

 月島さんの鋭い連続突き。

 避け、逸し、打ち払い、肉薄する。

 すると、牛鬼(?)の脚が素早く閃き、仕方が無く後退せざる負えない。

「残り時間あと1分!」

 審判が高らかに叫ぶ。

(迷っている暇はない)

 こちらの一撃に邪魔を割り込んでくるならそれを避けて斬るまで。

 本当は蓮心の試合の時に使いたかったが、この状況ではそうはいかない。

 月島さんの目を読み――白拍子。

 槍の間合いへと一足に飛び込み、一拍遅れて槍の鎌穂が横から迫る。

 前々試合で見た飯篠の動きを思い出し、刃の腹で流しながらさらに前身。

 読み通り視界の死角ギリギリ、月島さんの背後から鋭い爪が、こちらの刃から月島さんを守るように振るわれる。

(ここで退けば試合に負ける!)

 半身を振り、腕を振り、手首を振り、一振りの鞭の様に刃を振るう――

 水の型弐式・海嘯

 強引に曲げた剣線が防ごうとした蜘蛛の脚をすり抜ける。

 物打ちが月島さんの喉元へと迫り――終了の合図が鳴り響いた。

 寸前の所で止まる刃、喉元三寸の距離で停止した牛鬼の鋭い爪。

「勝者……源智慧!」

 観客席が沸き立ち、左腕で受けていた槍の柄が下がる。

「まさか、すり抜けるとは思ってなかった」

「月島さんの伴獣との連携も中々だったけどね……蜘蛛の脚に見えたけど」

 珍しく月島さんの驚きの顔。

「目で追えたの?」

 話しながら試合場から離れる。

「集中してたから……美夜の話だと牛鬼って本当かい?」

「……見せた記憶が無いんだけど」

「入試の時、狒々の群れを一網打尽にしただろ? あの時だよ」

「見ないように言っていた」

「それについては謝罪するよ――でも、よく牛鬼を伴獣に出来たね? 人間に力を貸すのはかなり稀じゃないかな」

「……智慧と同じ特殊な事例、あまり言いたくない」

「根掘り葉掘りは聞かないよ。誰だって事情はあるんだし、知る権利があるわけでもない」

「助かる――それじゃあ試合頑張って」

 肩を軽く手で叩かれ、月島さんが去ってゆく。

 運営本部の近くに置かれた組み分け表の書かれたホワイトボードを見に行く。

「次は……竹内か」

 試合結果を見に来たギャリー組や敗退組がホワイトボード前で賑やかになっている。

「次の試合やばくないか? Aブロックが嘉月と東郷さん、河内と芦屋。Bブロックがトモと竹内で、真澄さんと伊東の頂上決戦だぞ」

「やっぱり三大源流組は来るよなー、でも大胡がトモに負けちまったから残るは二人か」

「まあ、相手が悪いとしか言いようがないな」

「だな――っと、話をすればトモじゃんか」

 会話をしていた男子二人――たしか佐々木と新田だったか――がこちらに気付く。

「そんなに過大評価されると胃が傷んでくるんだけどな」

「本当だべ、次の竹内もコロッと勝っちまうんだろ?」

「いや……どうだろう、竹内には組手の訓練で一度も勝ったことが無いからな……」

「マジで?」

「ああ、小具足はそこまで収めてなかったから熟練者相手だと劣るよ」

「おいおい、そんなんじゃ真澄さんが泣いちまうぜー?」

「そうだぞ、折角あそこまで啖呵切ったんだからよ。ここで負けたら、ボコボコにするからな」

「あ、あんまり言わないでくれよ」

 見れば周りの面々もこちらに意識が向いている。

「――で、実の所はどうなんだ?」

「どう?」

「真澄さんだよ! 河内と真澄さんの例の話はにお前が首を突っ込む理由が誰も知らないんだ」

「流石にここで言えるわけ無いだろ」

 男子達は耳をそばだて、女子陣は興味津々にこちらを見ている。

「えー、大御所でもあんまり干渉しないデリケートな話題らしいんだぜ。それに本家のトモが横から首突っ込むなんてただ事じゃないって」

 新田が興味津々に言い詰め寄ってくる。

「言えない事情ってのもあるんだ。どうかそれで許してくれ」

「あんまり弄り過ぎると女子共からシバかれるぜ新田よう」

「おおそうだった……過激派にリンチされかねんわ」

 逃げるように2人が去ってゆく。

「過激派ってなんだよ……」

 少なくなってきた試合数だが、何故か観客席のほとんどが人で埋まっている。

 神那岐学園の生徒に加え、神籬本部の隊服を身に着けた刀士遺の人達や、大きなカメラ機材片手に撮影しているテレビ局の人達、他にも他校の学生服を着た同年代らしき生徒まで。

(……あんまり目立ちたくなかったんだけどな)

 逃げるように美夜の待つ観客席へと帰る。

「――やあ智慧」

 何故か自分の席に腰掛けているのは制服姿の男子――河内蓮心。

「どうも」

 肝心の美夜はどういう訳か、蓮心の伴獣である鞍馬天狗と何やら話している。

「ここにいる理由かい? 鞍馬が君の伴獣と話がしたいということでね、一人で行かせると何した物か分からないから僕も来たんだ」

「そうか」

「なんだい、自分と冷たい態度じゃないか。同じ一族の人間同士仲良くするべきじゃないかな?」

「人の刀を盗む奴とは信頼関係を築きたくないな」

「君の太刀かい? あれは本当に申し訳なかった、まさか君がいるとは思わなかったし。あのまま放置していれば盗まれると思って僕が回収したんだ」

「物は言いようだな」

 どうしてこの男は自分に付きまとってくるのか、自分は面白くも無ければ意外性もないただの人間だというのに。

「でも、君が食べられる寸前で助けた事くらいはお礼をいってほしいかな。もし僕が現場にいなかったら頭から食べられていたよ?」

「堕ち成りの首を刎ねたのはお前だったか」

「まあね」

 気に食わない奴ではあるが曲がりなりにも命の恩人……

「それは礼を言う。あの時は本当に助かった」

「だけど、斬るためにビルの屋上から飛び降りるのはいくらなんでも非常識と言うか頭がおかしいんじゃないのかな。それとも無銘の剣術はそう言う技法もあるのかい?」

「……蓮心。自分はお前を信じた訳じゃないし、昨日の模擬戦で見せたあの顔は嫌でも覚えている――本心は何なんだ」

「おや、酷い事をいうな君は」

「すまないがどうもお前と話していると、頭の中を覗き見されてるような……そんな嫌な感覚がするんだ」

 すると、蓮心の小さな笑み。

「……凄いな、ご明察だよ智慧。僕は鞍馬の力で六神通を使える、だから他人の考えている事を読み取れるんだ」

「悪趣味な力だ」

「おや、六神通は天狗の中でも力のある大天狗でしか体得できない神通力。下手に言うと罰が当たるよ?」

「その力の使い方が悪趣味って事だよ。大方、今考えていることも分かるんだろう?」

「もちろん。だけど、人の思考を読み取ったところでなんの益にもなりやしないし聞くだけ無駄さ」

 正論ではある。

「だからこの力は荒霊を斬る時でしか使わない。日常生活で使うには手に余る物だからね」

「お前が強いのはそれが理由か」

「数ある内の一つだね。別に六神通が使えなくても荒霊は祓えるし――君の首を刎ねる事だって容易だ」

 中てられる微かな殺気に肌がヒリつく。

「それが本心か」

「普通の人間相手だと退屈で君に合うまでは暇だったからね。高名な剣術家も、熟練の剣士も、現役の刀士遺もつまる所は『ただの人間』だ。僕が斬り合いたいのは君の様な僕と同じ次元の存在だよ」

「自分を神様か何かと勘違いしているのか?」

「よく『天子の剣』と言われるよ。だから智慧、僕は君と思う存分斬り合いたい。名前も家も立場も何もかも関係なく、純粋な殺し合いをだ」

「門下生や同級生が聞いたら幻滅しそうな発言だな」

「僕達の域に達していない人達には分からないさ。剣を極めた者、技を極限まで鍛え上げた者、人の身にして荒霊の力を宿す者……そういった存在でしか理解できないよ」

「勝手に言っててくれ。自分はそんな大層な存在じゃない」

 そろそろこの男と話しているのが疲れて来た。

「蓮心、決勝戦で……俺はお前に勝つ」

「その意気込みは好ましいね。なら僕も少し力を出させてもらうかな」

「その前に負けたら元も子も無いけどな」

「そうだね――それじゃあ決初戦で会おう」


次回更新もつつがなく更新したいと思います

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