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4.王都へ

 夕食の時、いつもの様に家族みんなが1日の出来事を報告する。父のアレクと母のオリビアは領地を視察、エドワードとサイラスはいつもと変わらない一日中でしたよと答え、イアンは剣術の稽古で沢山走らせたと文句を言う。エリナーの番が回ってくると、魔法の事は言えなくて、レベッカに出された足し算の課題が全部正解だった事を報告する。前世の記憶があるエリナーにとっては簡単な事だったが、そんな事はみんな知らないのでエリナーはすごく褒められた。


 「なんでもっとはやく言わないんだ。すごいじゃないか。」


 「そうよエリナー、もっと早く言ってくれたら特別なデザートを用意したのに!」


 側に控えていた執事長が、「ぬかりはございません。」と言ってトレーに残っていた皿の上のクロッシュをさっと上げてトレーをチラ見せした。


 「執事長はエリナーを甘やかし過ぎじゃないか?」


 「今日が初めてなのにすごいね。意外だったよ。」


 エドワードはやれやれと言う顔、サイラスは少し驚いた顔でエリナーに話しかける。イアンはガクッとした顔でエリナーを見る。そんなイアンを見たエドワードは笑いながらイアンをからかった。


 「お前よりエリナーの方が頭がいいんじゃないか?」


 「兄上!そんな事ありませんよ!多分、、、」


 「イアンは頭より体が先に動くからね。騎士には向いていると思うけど。」


 サイラスも続いてクスクスと笑う。


 「お前達、弟をいじめるのはやめなさい、全く。」


 上の兄2人が笑いながら、イアンに謝る。

 晩餐も終盤を迎えて、デザートの時間になり、執事長が用意してくれた特別なデザートを食べた。用意されたのは果物の盛り合わせで、みんなエリナーに自分の分を少しずつ分けてくれたのでエリナーのお皿は山盛りだった。

 サイラスは全部あげると言ってくれたが、エドワードにそんなに食べたらエリナーがお腹を壊すかもしれないと止められ、結局みんなと同じ分だけエリナーに果物をくれた。食べ終えた後、エリナーのお腹は果物の水分でタプタプだったのでサイラスを止めてくれたエドワードに心の中で感謝した。


 エリナーは食事を終えて部屋に戻り、就寝の準備を済ませると、レベッカがくれた魔法について書かれて紙と睨めっこをした。


 「うーん」


 レベッカは魔法の道を進む事は厳しい道のりだと教えてくれた。それでもエリナーは魔法への憧れを捨て切れない。

 前世ではファンタジー物の小説や漫画が大好きだった。自分はどんな魔法が使えるだろうとか、身体一つで空を飛ぶのはどんなに気分が良いだろうとか、小さい頃から想像は尽きなかった。

 だから、例えどんなに頑張ってそこそこの力しか得られ無かったとしても、魔法を使わない人生を歩むと言う選択肢はない。せっかく魔法世界に転生して、魔法が使えるとわかっているのに。


 それに、レベッカは魔法は兵器だと言っていたが使い道がそれだけなわけがない。人々の生活に役に立つ様に魔法が使える事が出来るはずだ。どうして魔法に関してこの世界の人たちは原始的なのだろう。制御が難しいと、レベッカは言っていた。次に会ったらまた聞いてみよう。沢山聞きたい事や思い浮かんだ事がある。エリナーはそれらを紙に書いてまとめる事にした。


 エリナーはそれかは日が昇るまで魔法について考えていた。カーテンから太陽の光が溢れている事に気付いた時はびくっとしてしまった。

 メイドが起こしに来ると、エリナーの目の下にある隈にすごく驚いて、心配された。メイドが鏡を見せてくれてたがエリナー自身もげっ、と思わず言ってしまう。今日は休日だから家族全員で朝食をとる日だ。みんなに心配をさせてしまう。エリナーがうんうん唸りながらどうしようかと考えているとメイドが「今日はお休みの日ですから、お化粧をしましょうか?」と提案してくれた。


 「それだよ!アン!ありがとう!」


 感謝の気持ちを込めて思いっきりエリナーはメイドに抱きついた。


 メイドが施してくれたお化粧は中々の出来で、程よく隈が隠れているし、エリナーは大満足だ。これで家族の前に出られる。


 朝の支度を終えて食堂に向かうと、エリナーは2番乗りで母のオリビアしか来ていなかった。


 「おはようございます。お母様、お父様は一緒じゃないの?」


 「おはよう、エリナー。お父様はお寝坊したの。でもすぐ来るわよ。」


 オリビアは事情を話した後に、エリナーの変化に気づく。


 「あら?今日はお化粧をしているの?」


 「えーと、うん、、、」


 エリナーは歯切れの悪い返事をしてしまった。オリビアはエリナーに気を遣ってか、それ以上は追求しなかった。しかし、「ねえ、エリナー、、、」言いかけたその時、兄達が食堂に入ってくる。


 「「「おはようございます。母上、それにエリナー。」」」


 「「おはよう。」」


 それぞれが挨拶をする。


 「エリナー?どうして今日はお化粧をしているの?」


 サイラスの言葉にエリナーはびくっとしてしまった。


 「サイラス、お前よく気がついたな。」


 「兄上はだからモテないんですよ。それで?どうしたんだい?」


 エリナーがなんと応えるか迷っていると、オリビアが助け舟を出してくれた。


 「エリナーは今日、私と王都にお買い物をしに行くのよ。ね?」


 エリナーは聞いてない、と思いつつも元気に返事を返した。

 それを聞いたサイラスとイアンはお供を申し出たがオリビアに却下され、最後に食堂に入って来た父に母がエリナーと王都を出掛けると伝えると、やはりお供を申し出て出来たがオリビアはやはり却下していた。


 「というか、エリナーに王都はまだ早くないか?」


 「早くありません。」


 母は父の言葉をぴしゃりと否定したので、父は何も言えなくなってしまった。


 「今日は男同士で馬乗りでもするか、、、」


 「父上落ち込まないで下さい。母上とエリナーも暗くなる前にはお戻りになるでしょう?」


 「ええ、勿論よ。」


 ふふふ、とオリビアは紅茶を飲む。


 朝食を終えると、それぞれ解散して一旦自室に戻る。エリナーは急遽決まった王都行きの為に着替えなければならなくなった。メイドも急な事だったので慌ててエリナーの一番新しいお出掛け用のドレスを出している。

 エリナーはどうしてお母様は王都に行こうと言い出したのだろう。という疑問が頭を離れない。


 「お嬢様、準備が出来ました。奥様はすでに下で待っているそうですよ。」


 「ありがとう!早く行かなきゃ。」


 メイドの言う通り、母はすでに準備を終えて待っていた。母だけではなく、父と兄達も。


 「お見送りはいらないと言ったのだけれど、みんながどうしてもって、、、」


 「よく考えたら私、王都は初めてだからすっごく楽しみ!早く出掛けましょう!」 


 エリナーはそう言って、母の手を引っ張る。


 「エ、エリナー?お兄様と別れは惜しまないの?」


 サイラスが寂しそうにエリナーに問いかける。


 「お父様、お兄様達!行ってきます!」


 「「「、、、いってらっしゃい。」」」


 エリナーはあっさりみんなと別れると、小走りで馬車に乗り込んだ。

 

 「お母様、どうしていきなり王都に行く事にしたの?」


 「たまにはエリナーと2人きりで楽しい事をしたいと思ったのよ。それに、私の可愛いエリー?今日は目が赤いわよ?」


 エリナーは思わずびくっとした。


 「そ、そんな事ないよ!」

 

 「そんな事あるわよ。昨日は夜更かしをしたでしょう。そのお化粧も可愛いけれど、隈を隠す為にやったのではない?」


 オリビアは普段はおっとりしてて忘れっぽいのに、たまに凄く鋭い時がある。エリナーはどうしたものかと一生懸命考える。そんなエリナーの顔をオリビアが覗き込む。


 「何か隠しているのね?」


 「大した事ではないんだけど、、、」


 「今日は私たち2人の時間が沢山あるから、言いたくなったらいいなさいね。」


 エリナーは言いたくなる時が来るだろうか、と言う疑問が頭に浮かんだが、いつかは家族には伝えなければいけない事だ。でも、もしこの思いを1番に伝えるなら、相手は母ではなく、、、


 「難しい顔をしないのエリナー。可愛い顔が台無しよ。それより、そろそろ王都に着くわよ?」


 「すごく大きなお城がある!」


 馬車の窓を開けて外を見ると、少し遠くに王都が見えた。


 「あれは王城よ。」


 「王様が住んでいるの?」


 「そうよ。」


 「大きくて立派だけど少し変な形だね?」


 「戦の度に建て直しているのよ。」


 「そうなんだ。」


 遠目から眺めてもおかしな形をしている城だ。王都を象徴するものではないのだろうか。


 「さあ、エリナーそろそろ王都に入る門に着くわよ。」


 「やっとなのね!」


 

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