荒北の告白
「・・・・・・素直になれないのだ。・・・・・・ッ」
・・・・・・ダメだ、詰んだ。ここから先が
書けない。どうしたものか。
コツコツとシャーペンで机を叩きながら
考える。だが、さっぱり出てこない。
ダメだ、休憩を挟もう。
そう思った俺は、机に突っ伏した。
「・・・・・・俺に恋愛ものは無理だっての」
1度も書いたことないのに急に書けるわけない。
というか、今まで友情ものか切なめの話しか
書いたことのない俺がハッピーエンドを書けるのか。
まだ、駆け出し作家だというのに。
「・・・・・・なんでこうなる」
そんな、駆け出しの学生作家の俺がこの前軽はずみで
応募した新人作家コンクールで賞を取ってしまった。
それから、今に至る。
なんで俺なのか。
応募に出した編集部の方から電話で伝えられた時、
俺自身が一番驚いたのだ。
そのことを、幼馴染みの阪本に話したら俺以上に喜んでいた。
「なぁ、荒北」
「んー・・・・・・」
「今日、阪本良いことでもあった?」
「いや、別になんもねぇと思うけど」
「そうかぁ?何かさっき会った時、笑顔のキラキラが倍増
してた気がすんだよね」
「へぇ・・・・・・」
アイツの機嫌が良いのはいつもの事だが、いつも以上とは。
今日、何かあったか?
そう思って俺は手帳を開いて今日の予定を見た。
すると、アイツの特徴のある丸文字で"発売日!!"と書いてあった。
・・・・・・あぁ、そうか。そういうことか。納得。
「あー、多分放っておいて大丈夫だと思うぞ」
「そうか?」
「アイツ、基本何考えてっかわかんねぇ方が多いべや」
「あぁ、確かに。幼馴染みの荒北でもわかんねぇ時あんだ」
「まぁな」
アイツは、基本常に笑顔なのだ。
あのお気楽そうな笑顔を常に貼り付けているおかげで、
正直俺でもアイツの行動や表情や心情は読めない。
本当に何を考えているかわからない時がある。
だから、気にしただけ無駄なのだ。
まぁ、今回は俺とアイツが好きな作家、俺が目標としている
作家、妖精作家・音無先生の本が届くからだろうけど。
「さぁてと。じゃあ、俺は午後講義ねぇから帰るわ」
「おー、マジか」
「マジだよ」
「じゃあ、またな」
「じゃあな」
俺はパパッと荷物をまとめて講義室を出る。
廊下も中庭も、まだ講義を受ける生徒達で賑わっている。
俺はそそくさと校門の外へ出た。
やはり、大学の外に出れば中程の賑やかさはない。
まぁ、まだギリギリ午前中だからな。
そんなことをふと思ったその時、俺のスマホが鳴った。
阪本だろうか。光るスマホのディスプレイを見ると
"阪本"とあった。
さて、内容はっと。
"今日、最後まで講義出るから遅くなる!
だから、米だけ炊いてて!"
・・・・・・珍しいな、全部出るなんて。
単位危なくなったか?まぁ、いいや。
「了解、っと」
それだけを返信して俺は再び帰路に着く。
そういえば、大学に入るまでこうやって1人で帰ること
なんて数える程しかないな。
アイツがいないだけでこんな静かなんだな。
まぁ、今更なんだが。
「・・・・・・って、なんで俺アイツのことばっか考えてんの」
俺は自嘲気味にそう呟いた。
阪本より今は小説のことを考えないといけないんだが。
そんなことアイツに言えばーー
「りっちゃんは恋人の俺より、仕事を選ぶんだ!?」
・・・・・・なんて大騒ぎするに決まっている。
というか、その様子が目に浮かぶ。
つい、心の中で呆れてしまった。
・・・・・・しかし、いつから。
いつから、俺はアイツがそういう意味で気になりだしたのだろう。
そして、いつの間に好きになっていたのだろう。
覚えがあるのは確か・・・・・・。
「高校の時か・・・・・・」
そう、俺がアイツ。
阪本のことをただの幼馴染みなんかじゃないと思い始めたのは
高校の時だ。
その時は、俺自身がその思いが恋愛的好意だなんて思ってもいなかった。
・・・・・・ただ、ただだ。
アイツが部員でもないのに陸上競技会に代表で出た時、
俺は初めてアイツの本気の顔を見た。
いつも、へらへら笑っているのが通常運転のアイツが、何か
一つのことを真剣にやっているアイツを俺はその時初めて見たんだ。
幼稚園よりも前からずっと一緒にいたっていうのに・・・・・・。
アイツの真剣な表情に、なぜか俺は惹かれた。
なぜ、惹かれたかなんてその時の俺にはわからなかった。
でも、今ならわかる。
「・・・・・・かっこよかったんだよな」
そう、ただ単にかっこよかったんだのだ。
元々イケメンの類に入る阪本だが、笑えばどこか幼さが垣間見え、
黙っていればそれが消えるのだ。
本当に我が恋人ながらデキた奴だと思う。
「・・・・・・腹立つな」
そう、俺が小さく呟いた時だった。
「荒北先輩」
「ん?」
後ろから名前を呼ばれ振り向いたら、そこには一人の女の子がいた。
「俺になにか用?」
「ハイ。・・・・・・あの、少し時間いいですか?」
俯きがちに話す彼女を見て、俺はふたつの選択肢が浮かんだ。
ひとつは阪本絡みだ。プレゼントとかラブレターとか。
代わりに渡して欲しいっていうパターン。
もうひとつは、可能性としてはとても低いが俺に告白すると
いうパターン。まぁ、阪本程はないが。
「あぁ、いいよ」
別に断る理由はないので了承し、俺は場所を移動した。
彼女の話を聞くために。
「・・・・・・あの。私・・・・・・、荒北先輩のことが好きです!
付き合ってください・・・・・・ッ」
「・・・・・・え」
・・・・・・まさか、可能性の低い方でくるとは思わなかった。
多少、混乱してるが俺は少し間を置いてから声を出す。
「・・・・・・ゴメン。俺、今付き合っている奴、いるから。
・・・・・・ゴメン」
「そう、ですか・・・・・・」
「でも、気持ちは受け取る。ありがとな、俺なんかを好きに
なってくれて」
そういって、俺は彼女の頭に手を置いた。
付き合ってやれない、その申し訳なさが理由だ。
そう、こんな俺を好きになってくれた彼女へのせめてものお詫びだ。
「いえ!こちらこそ、ありがとうございました!」
俺は彼女を見送ってからさっき自分が口にしたセリフを
もう一度小さく声に出した。
「付き合っている奴いるから・・・・・・、ねぇ・・・・・・」
このセリフで告白を断るのは、いったい何度目だろうか。
その度に、相手に申し訳なくなる。
このセリフを言い始めたのは、確か一年くらい前だったはず。
阪本と付き合い始めた頃だから・・・・・・、それくらいか。
それにしても、最近はめっきり減ったと思っていたのに。
告白なんていつぶりにされただろう。・・・・・・忘れたな。
阪本程ではないが、俺もそこそこモテている。・・・・・・らしい。
阪本とその他友人曰く。
「そんなことないと思うんだが・・・・・・」
帰路に着きながらそんなことを考えていた。
確かに中・高と俺も阪本も彼女がいた時期が何度かあった。
だが、両方ともそこまで長く続くことは無かった。
それを繰り返していた。
「あれはなんだったんだろうな・・・・・・」
ふと、顔を上げると家の前だった。
いつの間に。全然気づかなかった。
俺は鍵を開けながら自嘲した。
ガチャ、とドアを開けて中に入るなり俺は、リビングにある
ソファーへと直行した。
荷物をソファーの横に置き、俺はソファーに沈んだ。
あぁ、今日も無駄に頭を使った。
ただでさえ、初ジャンルの小説を書くためと講義を受けるために
酷使しているというのに、阪本のせいで余計な労力を使ってしまう。
・・・・・・もうやめだ、一旦休もう。
うん、そうしよう。そう思って目を瞑った途端だ。
寝落ちるのにそう時間はかからなくて、俺はそのまま意識を手放した。
高校の時、俺は2、3人程彼女を作った。
同様に阪本も何人か彼女を作った。
彼女を作る度にあいつは俺に必ず報告をしてくるから、
俺もその度におめでとうと言っていた。
それにならって俺も報告することにしている。
それが、俺達の中でひとつのルールとして成り立っている。
だが、お互いに長続きしない為に毎度同じ別れ話の切り出され方を
されるのだ。
「"私、やっぱり荒北くん個人じゃなくて、阪本くんと
2人セットの荒北くんが好きみたい"」
俺個人ではなく、阪本と2人セットの俺が好きってなんだ。
それはいったいどういうことなのだろうか。
女子の考えていることはよくわからない。
俺達が大学に進学してもそれは変わらなかった。
そんな大学1年の半ば。
俺が新人賞を取ったのはそのあたりだ。
「荒北、お前スゲーな!」
「たまたまだろ」
「いや、たまたまで取れるもんじゃねぇだろ」
いや、本当にたまたまサークルで出した作品が賞を取っただけだって。
苦笑しながら話していると。
「ちょっと、りっちゃん!俺、聞いてないよ!」
阪本が勢いよく入ってきた。
入ってきた瞬間、女子の黄色い声が飛ぶのはもう日常茶飯事だ。
地味にうるさいのだが、中高もこんな感じだったために
もう馴れてしまった。
「うるせぇ、何をだ」
「荒北が小説で賞を取ったことか?」
「それは、聞いた!おめでとう!って、そうじゃないよ!
彼女のこと!」
あぁ、そういえば賞を取っただのなんだのってバタバタしてて、
彼女ができたって報告すんのすっかり忘れてた。
「おとといから付き合うことになった。
悪ぃ、言うの遅くなった」
「本当だよ、もう。ねぇ、相手どんな子?」
「大人しい子だよ。周りとあんま騒がないタイプ。
あ、あと本好き」
「・・・・・・っ。・・・・・・そっか」
おい、ちょっと待て。なんだよ、今の・・・・・・。
「阪も・・・・・・」
「おめでとう!りっちゃん!!」
「え、あ、おう」
・・・・・・おい、今の顔なんだよ。
一瞬、たった一瞬だった。
それでも、俺は阪本の一瞬だけ変わった表情を見逃す
ことなんて出来なかった。
なんで、お前が辛そうな顔すんだよ。
「あ!俺、次移動だった!じゃ、まだあとでね!!」
いつもの表情に戻った阪本だが、さすがの俺でも
あの顔は気になった。
俺は、講義室を出ようとした阪本を呼び止めた。
「阪本」
「え、なに?」
「・・・・・・お前、大丈夫か?」
「・・・・・・な、にが?」
「まだ具合でも悪いんじゃねぇだろうな」
前にみんなに具合悪いことを黙ってて、倒れかけたことが
あるから油断ならない。
「そんなことないよー、大丈夫!」
「本当か、前科持ち」
「ホントホント!」
「・・・・・・嘘だったらぶっ飛ばす」
「りっちゃんは俺のオカンですか?」
「・・・・・・あ"?」
冗談だよー、って去っていく阪本はいつもの阪本だった。
さっきの顔は一体なんだったのか。
俺にはさっぱりわからなかった。
それから阪本は俺から少し距離を置き始めた。
阪本は俺に彼女ができると必ず俺との距離を少し置く。
俺からしたら今更感があるのだが、本人曰く2人の邪魔を
したくないから、だそうだ。
だが、多分阪本自身に自覚はないのだろうが、最近は俺に
彼女がいようがいまいが避けているように思える。
俺の考えすぎだろうか。
それから数日後。
「・・・・・・ごめんなさい」
・・・・・・まぁ、わかっていた。
こうなるんじゃないかってことは。
何度目だろうか。3度目か?
2度あることは3度あるっていうしな。
もう回数を重ねればなんとなくタイミングもわかるもので、
そろそろかなと思ってはいた。
「付き合ってくれてありがとう」
「いや、こちらこそありがとう」
「じゃ」
そこで俺と彼女の交際は終わりを告げた。
決して、彼女と過ごすことが楽しくなかったわけじゃない。
ただ、何かが物足りなかった。
そう、何かが。
「・・・・・・そこだけが埋まらねぇんだよなぁ」
いっそ、穴でも空いてんじゃないかとさえ思う。
どんなに注いでも、その空いた穴から外へ出てしまう。
そんな感じがする。
決して満たされない、この部分的空虚感はいったいなんだろうか。
「・・・・・・わかんねぇよ」
その時だった。
俺のスマホが鳴った。
突然鳴ったので俺は少し驚いてしまった。
なんだ、電話か?
スマホのディスプレイを見ると、そこにはーー。
「阪本?」
俺に電話をかけてきたのは阪本だった。
アイツもタイミングの良い奴だな。
人が振られた瞬間に電話をかけてよこすとは。
とにかく、俺は電話に出た。
「もしもし」
「"もしもし、莉玖くん?"」
スマホから聞こえたのは、阪本ではなく女の人の声。
・・・・・・誰だ。
「・・・・・・えっと」
「"あ、瞬の母親だけど"」
「あ、おばさん。どうも」
電話の向こうの声の主は、阪本の母親だった。
おばさんとはしばらく会っていなかったから、
誰だかわからなかった。
だが、おばさんが俺に何の用だろう。
おふくろに用事があるのなら、おふくろに直接電話するだろうし。
ましてや、阪本のスマホからかけてきているのだ。
用事があるのは俺に間違いないだろう。
「おばさん、どうかしたんスか?」
「"・・・・・・莉玖くん、落ち着いて聞いて"」
電話の向こうのおばさんの声に、俺はどこか焦りを感じた。
口調はいつも通りなのに、どこか緊張が見える。
いったい、どうしたのだろう。
「おばさん?」
「"・・・・・・瞬が倒れたの"」
・・・・・・え?なんだって?
今、おばさんは俺に何て言った?
倒れた・・・・・・?
・・・・・・阪本が?
「え・・・・・・、なんで・・・・・・」
「"それが私にもわからないの。突然、血を
吐いて倒れたって友達から連絡をもらって"」
阪本が血を吐いて倒れた。
それが、今の俺の頭の大部分を占めた。
目の前が真っ白になってしまい、何も考えられない。
阪本が倒れた、その事実だけが俺の頭の中で響く。
だが、このまま立ち尽くしている場合ではない。
阪本の所へ行かなくては。
「おばさん、阪本は今どこ」
「"救急車で運ばれてるって"」
「おばさん、阪本が運ばれる病院先教えて」
俺は、電話を切った後おばさんから聞いた病院へと急いだ。
さっきのは嘘だ、そう思いながら俺は走った。
アイツがまだふざけて俺をからかっているんだと、
そう信じたかった。
病院に着いた俺は、ナースステーションへと向かう。
「すみません、先程運ばれた患者の病室ってどこですか?」
「患者のお名前は?」
「阪本瞬です」
「阪本さんなら305号室です」
「どうも」
病室を聞いた俺は、急いで向かった。
後ろで、院内を走らないでくださいと言われた気がしたが
聞こえないふりをした。
今それどころではないのだ。
「阪本!」
俺は半分叫びながら病室の扉を開けた。
真っ先に目に飛び込んできたのは、点滴に繋がれて静かに眠って
いる阪本だった。
見るからにして容態は落ち着いているようだ。
だが、点滴に繋がれている腕はとても白くそれでいて
痛々しかった。
「莉玖くん」
「おばさん、阪本大丈夫スか」
「えぇ、ストレス性の胃潰瘍ですって」
「ストレス性の胃潰瘍・・・・・・」
ストレスで胃に穴を開けていたら世話ない。
俺は、おばさんに勧められて阪本の寝ているベッドの傍に
あった椅子へ腰を下ろした。
「おばさん、俺コイツの様子がおかしかったのは知って
いたんです」
「え?」
「いつも、笑ってるコイツが一瞬。たった一瞬、顔を歪めて
スゴく辛そうな顔をした時があったんです」
そう、あの時。俺が先程別れた彼女の話をした時に見せた表情の
ことを俺はおばさんに話した。そして、俺があの時に大丈夫かと
訊ねたことも話した。
「……そう、だったの」
「ハイ」
「……前に倒れかけたこと心配して聞いてくれたのね。ありがとう」
「いえ……」
礼を言われる筋合いなんて、俺にはない。現に阪本は倒れて、
病室のベッドに横たわっている。
「あたし、一度家に戻るわね。莉玖くん、瞬のことお願いしてもいい?」
「ハイ」
おばさんは、一言ありがとうと言ってから病室を出て行った。俺は
おばさんを見送ってから、目の前で寝ている阪本の方へ身体を向き直した。
「……阪本」
呼び掛けても当たり前だが返事はない。聞こえてはいないだろうが、
俺は一言言ってやらなければ気が済まない。
「……胃に穴開けるくらい何を溜め込んでたんだよ。俺、あん時
大丈夫かって聞いただろうが。大丈夫って言っといて、このザマじゃ
世話ねぇだろ……」
あの時、俺がもう一度確認しとけばこの状況は防げたかもしれない。
今になってはもう遅いが。それにしても、いつも俺の隣でバカを
言っている奴と、今ここで横になっている奴は本当に同一人物
なのだろうか。……もし、もしもだ。こいつがこのまま目を
覚さなかったら……。ダメだ、たとえ一瞬でもそんなこと考える
もんじゃない。
「……つーか、考えたくねぇ」
こいつが隣でバカを言っている状況に慣れている俺は、こいつが
いなくなったらさぞ動揺することだろう。そして、多分1人で泣く。
周りに人がいる内は、いつも通り振る舞うだろう。だが、1人なった
瞬間泣く。初めのうちは声を押し殺して泣き、途中から絶対柄にもなく
声を上げて泣くだろう。そんなのはごめんだ。……だから、頼む。
俺は阪本の白く痛々しい手を握った。
「……頼むから、早く起きろよ」
そう言って俺は、阪本の手を握り締めた。握った手は意外にも骨張っていて、
俺の手よりも若干大きかった。
ふと、目が覚めた。いつの間にか、俺は寝てしまったらしい。今何時だ?
時計を見ると、針は9時を指していた。……寝過ぎたな。俺は、ゆっくりと
身体を起こした。途端に、背骨がバキバキっと言った。あ“ぁ“、痛い。
変な体勢で寝てたからだな。グッと背伸びをしようと腕を上げかけた時に
気付いた。……俺、阪本の手握ったままじゃん。
「……ん」
「!」
小さく呻いてから、ゆっくりと阪本の目が開いた。そして、ゆっくり
周りを見渡した後、俺の方を向いた。
「……りっちゃん?」
「あぁ」
うつろな目で俺を捕らえた阪本は、疑問形で俺を呼んだ。あぁ、そうだよ。
俺だよ。俺は阪本に名前を呼ばれた瞬間、先程の不安はどこかへ行き、一気に
緩んだ。特に何もなさそうで俺は安心した。
「具合、大丈夫か?」
「……え?……俺」
理解が