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疾風ガール  作者: メリット5
新任教養
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帰隊

 安藤さんも目立った怪我もなく、検査をして退院したらしい。交通機動隊の庁舎と機動捜査隊の庁舎は同じ敷地に建っている。後で、顔を出しに行こう。莉奈は、白バイを江乃町(えのまち)庁舎に向け走らせる。

  書類作成を終えヘトヘトな身体に鞭をうち、帰隊途中も取締りを行うことにした。隊で一番検挙数が少ないから…。

 夕暮れ時の国道は帰宅する車で混雑し始めている。家路を急ぐ人の速度超過や信号無視が増えるかもしれない。莉奈は、いつもより頭を動かし辺りを見渡し違反を探す。

「自転車止まって」

 並進する自転車に声をかける。高校生のカップルだった。コンビニの駐車場に誘導し、白バイのスタンドを立てた。

「並進しちゃダメだよ。危ないから」

「はーい。すみません」

 明るい彼女は、素直に違反を認めた。

「警告書書くから、名前、住所、学校教えてくれる?」

 莉奈が自転車警告書を取り出し、ボールペンがカチッと音を立てた。

「えっと、名前は…」

  自転車警告書を彼女と彼氏の二枚作成し、安全指導を行う。

「分かった。今度から気をつけるね。お姉さん」

「気を付けて帰ってね」

 笑顔で見送り警告書をボックスにしまう。私も彼氏欲しいなぁ…。

  高校では、部活に専念しており、彼氏なんて欲しいと思わなかった。逆に部活の邪魔になると考えていた莉奈は、何度か告白を断ったことがある。例の代表のために。

「あの時、断らなければなぁ…」

 思いがけず口から出た言葉に、莉奈自身が一番驚いた。

  顔は悪くないのにな。

  よく一ノ瀬から言われる言葉が頭の中をこだました。

  性格が変わってなければモテるのになぁ…。

  これはよく、一ノ瀬に対して莉奈が思うこと。お互い様ですよ。何度も一ノ瀬にかけそうになったことがある。

  白バイに跨り、再び江乃町庁舎を目指し、莉奈の白バイは走り始める。既に太陽は山にかかり始め、街灯もちらほら灯り始めていた。早く江乃町に帰らないと。法定速度を守らなければならない警察車両に乗っていることに少しイライラが募る。

  それから二件の自転車警告書と一件の交通違反を処理してから、江乃町庁舎に帰隊した。

  既に、覆面パトカーが車庫から出され、点検を一ノ瀬が行っていた。

「おっ。お疲れ」

「お疲れ様です。遅くなってすみません」

「小隊長が首を長くして待ってるから、早く行ってやれ」

 一ノ瀬がにやけながら言う。いつもはお説教しかされない小隊長が、私のことを待っている…。普段ならイヤな予感しかしないが、今日は違う気がする。

 直ぐに白バイを車庫に滑り込ませる。急いで白バイのスタンドを立てると、走行距離を手のひらにメモしてから、シャッターを閉める。莉奈は庁舎へと走った。

「お疲れ様です。七瀬、只今戻りました」

「おっ!今日のシンデレラガールが帰って来たぞ」

 勢いよく部屋に飛び込んだ莉奈に真っ先に反応したのは、同じ小隊の神戸 洋(かんべ ひろし)。一ノ瀬と仲がよく、莉奈の憧れの駅伝の先導も何度も経験している憧れの人。

「一ノ瀬。ちょっと、こっち来なさい」

 いつものお説教と同じ呼び方に、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。小隊長の近藤 剛(こんどう ごう)の顔は、固い。

「お疲れ様です」

「お疲れ様、七瀬。まさかお前が発見、逮捕するなんてな…。よくやった」

 莉奈から声をかけると、いつもより優しい声と表情に驚きながらも、褒められたのは嬉しかった。

「ありがとうございます」

「成果挙げたからって、指導は優しくならないぞ」

「まぁ…。分かってます」

 その言葉は聞きたくなかったなぁ。

「とりあえず、本当にお疲れ様。書類まとめてから、夜の警らに出かけるように。以上」

 近藤からのお褒めの言葉を頂いたのは素直に嬉しかった。

莉奈は、自分の椅子に座ると、パソコンを立ち上げた。手にメモした走行距離と今日の検挙した違反の件数と必要事項を入力し、事務作業に取りかかる。


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