出会い
【ライネスside.】
サワサワ…
草木が揺れる。
「こっちだな…」
ザッザッザ…
あと少し…
この辺りか…?
すると、ガサガサと茂みから音がし、草の間からピョコンと白いうさぎが顔を出した。
「お前……」
捕まえようと近づくと、うさぎも後ろに下がる。
「どうした…? ん? お前…」
うさぎの額にあったはずの石がない。
未契約の契約獣には額に宝石のような石がついている。しかし、この契約獣にはその石がない。
……となると。
「お前はこの森の中で誰と契約したんだ…」
こんな森の中に人が住んでいるのか?
この森の先にはランザール大国がある。それも戦争真っ只中。
そんな大国との境界線の森の中に住んでるやつがいるのか? それに、この森には危険な魔獣が多い。とても暮らせる環境ではない。一晩も泊まれない森の中に人がいるとは思えない。
「はぁ、まさか魔獣と契約したとかじゃないよな? それに、妹へのプレゼントとして苦労してお前を見つけたネットになんて言えばいいんだ?」
苦労して捕まえた契約獣が脱走した間に契約してるんだからな。
うさぎの契約獣を見るとこちらをチラチラ見ながらゆっくりと奥に進んでいるのに気が付いた。
「何だ?」
後を追うと…不思議な魔力を感じた。その魔力はどこか、甘い香りがする。
うさぎについて行く度に香りが強くなる。
「何だ? この魔力…」
契約獣は、この魔力の主と契約したのか?
すると、うさぎが止まる。前を見ると、少し開けた場所があり、そこに誰かが倒れていた。
少女…?
ゆっくりと近づいていく。
すると…
「獣人…?」
これは……。
俺の声に反応したのかピクッと動いた。
それに反応してうさぎも少女の側に行った。
「んぅー… ん~リル?」
凛とした高く透き通る心地の良い声をしている…
寝ぼけているのか俺に気が付いていない。
キュッとうさぎは返事をしていた。こいつ、リルって名前付けてもらったのか。
「ん?」
するとようやくこちらに気がついたのかバチッと視線が合った…きがする。前髪が邪魔で瞳が見えないからな。くすんだ栗色の髪の獣人の少女…。
「ッ!」
一瞬で立ち上がると、獣人の少女はリルを抱えて走り出していた。
「あ…! ちょっと待って!」
「んぶッ!」
呼び止めるとそんな声が返ってきた。
慌てて走り出したため、目の前の木に気づけずそのままぶつかったらしい。
フラフラ~パタリ。
と獣人の少女は倒れた。
「……」
「まぁ、いいか」
そして、そのまま気絶している獣人の少女とリルを抱えて馬車の方へと向った。
リル(あわわわわ)
ライネス「おいで」
リル(…)ピョン
ユナのお腹の上に乗ったリル。それを確認して、ライネスはユナをお姫様抱っこして運びます。