恐怖と孤独(2)
何故気づけなかったのか…
物凄い恐怖と緊張で、体が固まる。
私は耳がいいのに…何で近づいてくるこの人に気がつくのが遅れたのだろうか…。
「獣人………」
鎧を着た男はジリジリと近づいてくる。
「獣人でも、人間と変わらないよな…」
私はビクッと震える
さっきは睨むように怖い雰囲気を纏って近づいてきていた男が突然ニタリと笑ったのだ。
「ハァ…ハァ……ハァ…」
男の息が聞こえる。
男の顔は今もニタニタとして、気持ち悪い顔をしていた。
ゾワッと鳥肌が立つ、尻尾の毛が逆だってるのが分かる。
怖い怖い怖い…!!!!
バッと男とは反対の方向へ走り出す。
力いっぱい力いっぱい。
「待てぇッ!!!!!!」
チラリと見ると物凄い形相で追いかけてきていた。
怖い! 怖い怖い怖い怖い!!!
震える拳を握り走る。
走り、また走り、走る。
限界まで走り、木に手をつきながら後ろを振り返ると、男はいなかった。
「はぁ、はぁ……」
息を吸っても吸ってもしんどい…。
初めてこんなに必死に走った…もしかしたら獣人は足も早いのかも…
そして、男から離れられたとを確認し、空間から実を取り出し食べる。実は水分が多く喉を潤した。
「…」
木に寄りかかりながら座り込む。
怖かった…怖かった。捕まったらどうなるんだろう、怖かった。男の形相を思いだし、叫び声を思いだし…全身が震える。
歯がカチカチと音がなり…目から涙が止まらない。
怖かった、怖かった。
獣人は人間に狙われる。
それは、とても恐ろしいことだった。
震えながら耳に力を込め周囲を警戒する。もしかしたらまだ、あの男がいるかもしれないから。
すると、小さな気配を感じた。それと同時にガサッと音がする。
ビクッとその方向へ目を向けると……
白いうさぎだった。
力が抜けた……。
うさぎを見つめると、額に青い宝石が埋まっていた。
「何だろう…」
じっと見つめるとうさぎはピョンピョンとこちらに近づいてくる。
「えっ…えっ!」
そして、うさぎは側に来ると見上げるようにこちらを見てきた。
可愛い……よく見ると瞳も青く光っていた。この宝石に見えるのは、うさぎさんに元々引っ付いていたものなのかな…と、そっと触る。
すると……
途端に光りだす。
「ふにゃっ!? な、なに!?」
眩しい! 今度は何!?
そっと、目を開くと白いうさぎさんはこちらをじっと見ていた。
「あれ!?」
そして、額にあった宝石は消えていた。
「さ、さっきまではあったのに!」
じっと見つめてくるうさぎを見つめる。
すると、
「え…? 名前が欲しいの?」
何故か伝わってきたのだ。うさぎさんの気持ちが……。