別れ
少し長めになりました。
バキバキバキ…ザァァァ……
けたたましい音と共に木々が倒れていく。怖いと思っていた森の木々が…。
「燃えてる…」
そう、花畑を囲んでいた森が燃えて、花畑に燃え移っていた。
「何で…?」
私が寝る前はこんな事になってなかったのに…
(ユナ…、ここはもう無理。)
「……」
(逃げよう)
「……」
(皆はもう避難したよ)
私が目をさましてから3分過ぎた。その3分の間に動物たちは避難していた、後は私と小鳥さんだけ。火の広がっている所とは反対のまだギリギリ燃えていない森の前から動けないでいる私にピンクの小鳥さんは優しく声をかけてくれる。
(ユナ……)
私はコクンと頷く。
そして、花畑を離れた。
初めて花畑を離れたけど、平気だった。
ピンクの小鳥さんが側にいたからかな。
「何で……燃えてたの?」
(……)
ピンクの小鳥さんは目の前の枝に止まると私に向き直り真剣な声で話した。
(あのね、ユナ。僕らは精霊なんだ)
「………え?」
小鳥さんが、精霊?
「精霊っているの?」
いや、存在してもおかしくないのかも。
私だってこの姿だし…
(うん。いるよ、この姿をしているけど僕は風の精霊、あの花畑にいた皆も、精霊なんだ)
「……そうなんだ」
でも、それと花畑が燃えたことと何が関係あるの?
(それに、あの花畑は神秘の森の中にある…精霊の住まう場所)
神秘の森…?
あの、怖い森が?
(神秘の森には精霊や妖精以外の者を惑わす力があるからユナには危なかったんだ)
だから、皆は私を止めたんだ…
(ユナは知ってるよね、花畑の真ん中に生えていた木を)
「うん、いつも実を食べてたから」
(それで、あの実は特別って教えたよね、それを人間はとっても手に入れたいんだ。)
「なんで…?」
(特別な力があるからさ。それを我が物にしようと人間たちは争い、ついに火をつけた)
「なんで火を?」
(神秘の森を燃やしたかったんだよ、精霊や、妖精以外の者を惑わす神秘の森は勿論人間にも効果がある。その木がある限り実には近づけないから)
「酷い…」
(うん、酷いよね。でも、それを僕らは利用した。ここはもう人間に知られていたから何処か人のいない所へ住処を移そうとしてたんだ。火の精霊が操ればすぐに消し止められるけど…全部燃やしてしまう事にした。
僕達が創った場所を人間に踏み込んでほしくなかったんだよ…だから創った僕達で消した。)
小鳥さんは悲しそうにしていた。
「…でも、私は?」
私も精霊じゃないし…獣耳と、尻尾あるけど人間と変わらない姿のはずだし…
(ユナは、僕達と一緒だよ。ユナは獣人と言って、とても珍しい種族なんだ。獣人には精霊を見る力があるし、希少な種族だから人間に狙われやすい…それに獣人という種族は精霊から愛される種族だからね。)
獣人…。だから、私に獣耳や尻尾が付いてたんだ…そんな種族があるなんて…。
(ユナ、君のその種族は人間に狙われる。そんなユナを………僕らは新しい住処に行かなきゃならない、そこはユナの生きていける場所じゃないから連れていけない)
「え?」
(連れていけないんだ…)
「お別れってこと…?」
声が震える…
(ごめんよ…こんな危険な場所にユナを置いていくことを…許さなくていい。けど、また会いに行くから…自分勝手な精霊でごめんよ)
(愛しいユナ、きっとまた会いに行くから)
すると小鳥さんの体にキラキラ光る粒子の様なものが集まってきて……
シュンッ
小鳥さんは消えた。
「ま、待って!!」
私の声は神秘の森から離れた森の中で虚しく響いただけだった。