幸せな拷問
しなやかな腕が私を抱き締める
怖い夢を見た私をなだめてくれる君の腕
優しい君は
「もうなにも怖くないよ」
といいながら私を抱き締めてくれる
「うん」
と私が答えるとクスクス笑いながらぎゅっと私を抱き締める腕に力を込めてくれる
確かにもう怖くはない
でも今度は恐怖とは違う理由で心臓がバクバクと音をたてている
優しい、愛しい人の腕のなかに閉じこめられて緊張と興奮で鼓動が早くなる
このまま時がとまればいいのに
そんな私の気持ちを知らない君はスウスウと寝息をたてだした
相変わらず寝付きのいい人だ
そっと目線だけ動かして君の顔を見る
綺麗な寝顔がすぐ近くにあった
ああ、なんて可愛いんだろう
その可愛らしい唇に、その頬にくちづけたくなる
決して許されることではないその行為
だって君にとっての私は同性の気の置けない友人でしかないのだから
まさか私が恋心をいだいているなどと考えたこともないだろう
それゆえに簡単に私に触れてくれるし
こうして抱き締めてすらくれる
その行為がどれ程私を喜ばし、苦しめているかなど君にはわからないのだろう
胸が締め付けられる
君の優しさは私をどれだけ試してくるのだろうか
君の体温が、吐息が私の理性を揺さぶる
ああ、拷問を受けているようだ
とてもとても幸せで、とてもとても苦しい時間
君が私の気持ちに気づくまで続く世界一幸せな拷問