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ローテスハール革命  作者: 絵山イオン
異世界への入り口
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第4話「目的地」

同人誌ですと3話目にヒナタに抱きついているヒカルの挿絵があります。

ですが、画像を添付出来ないのでお見せできません。

なろうに画像を添付する機能はあるのでしょうか……?


(俺だって好き好んでこの森にいるんじゃねぇぞ)


 女の前ではああごまかしたものの、ヒカルは心の中で反論する。

 口に出して女に抗議したかったが、そうすれば前に言った内容と矛盾し、彼女に言及されてしまう。

 出会ったばかりだが、彼女は理解できない、訳のわからない説明をされることを嫌っている様子。思ったことは口に出さずに心の中に納めた方がいい。

 ヒカルは文句をぐっと飲み込んだ。


「これからどうするのぉ?」

「近くの民家に行こうと思ってんだ」

「その次はぁ?」

「……まだ決めてねぇ。んでも、一人で金稼いで、食べて寝れる場所を探そうってのは決めてる」

「つまらない答えねぇ」

「わりぃか?」

「いいえ~」


 森へ放り投げられた状態のヒカルは民家を見つける、森を抜けることしか考えていなかった。

 「その次は?」という女の問いかけに、ヒカルは思った事をそのまま伝えた。ありきたりで、はっきりとしない答えだったが、納得してはくれた。

 ヒカルの目的を聞いた女は両手を合わせて、こう提案した。


「だったら私と一緒に“ソルトス”へ行きましょうよぉ」

「ソルトス……」

「えぇ。この“メデサの森”を抜けた場所にあるのよぉ」


 話の流れからすれば、ソルトスとは、現在二人がいるメデサの森を抜けたところにある村か町の名前のようだ。

 ヒカルが気になった単語を拾って呟くと、女が補足をした。彼女は人差し指を立てて、目的地の場所を教えてくれたがすぐに眉をしかめた。


「あんた、ソルトス目指してるんじゃないのぉ?」

「あ、いや、その……」

「ふぅ~ん」


 目を細め、口元をニヤつかせた顔で女はヒカルに接近する。接近された彼は頬を赤らめ、体をのけ反らせて、彼女から視線を逸らした。


「訳ありなのねぇ」

「そういうことだ」


 ヒカルが答えると、女は彼から離れ、背の後ろで指を組ませ、小石を蹴った。

 会話が弾まず互いに黙っていると、女が口を開いた。


「答え」

「ん」

「ソルトスに行くの、行かないのぉ?」


 女は提案したことへの答えを待っていたようだ。ピンと来ていなかったヒカルのために彼女はもう一度尋ねた。


「行く」

「そう、じゃ一緒に行きましょ」

「おう」


 答えはイエス。

 メデサの森を抜け、獣がいない人が住んでいる場所へ行きたいという願いを叶えてくれるのだから、断る理由もなかった。それに彼女が隣で歩いてくれるのは心強い。見た目と歩く度にカッカッと聞こえてきそうな場違いな踵の高い靴を履いているところから、戦力になりそうもないが。

 日が暮れてきた森の中を二人は歩く。

 女が履いている靴の鈍い音をバックグラウンドミュージックとして歩く。それにしても歩きにくい靴を履いているというのに、苦にすることなく歩く速度はヒカルと同じだ。


(あぁ言われたけどよ、こいつだって森に入ってくる恰好じゃねぇよ)


 女はなぜこの森に入ったのだろうか。気になったヒカルは彼女に聞いた。


「なぁ……」

「なにぃ?」

「あ」


 女に声をかけて、ヒカルは隣にいる彼女の名前を知らないことに気付いた。そういえば自分も彼女に名前を明かしていない。


「俺はヒカルってんだ。あんたは?」

「あ、名前言ってなかったし、聞いてなかったわねぇ」


 ヒカルに言われて、女も気づいたようだ。彼女はヒカルへ体を向け、両手を腰に当て膨らんでいる胸を張って名乗った。


「私はヒナタ・レイション」

「ヒナタ、れい……しょん」

「ん~、私の名前聞いて驚かないのぉ?」

「は? なんで」

「こっちこそ。なんで分からないのかしらぁ」


 今の反応はおかしいのか。

 名前、ファミリーネームという順番で名乗っていることと、彼女の容姿からヒカルの生まれた国ではない、つまりは外国だということが分かった。

 ヒナタは自分の名が知れ渡っていて当然という態度をとる。普通の自己紹介のように彼女を受け入れたヒカルがありえないと言った顔。

 

(あれ、この人結構な有名人?)


 非の打ちどころもないスタイルと真っ白な肌、高い鼻、切れ目な瞳を持つ美人からしてこの国有数のモデル、下手すれば権力者か。


「え、ひ、ヒナタ……、様?」


 ヒカルは彼女の名前の後に“様”を付けて呼んだ。ついでに彼女に頭を下げる。その仕草はぎこちなく不器用だった。

 ヒカルの言動と行動にヒナタは吹きだして大笑い。頭を下げているヒカルの背を加減なしに叩き「ちょ、おっかし~」と笑い声に挟めて言った。叩かれている時に知ったのだが、彼女とても力が強い。叩かれている場所がヒリヒリと痛んだ。


「そんな反応とられるの初めてぇ」

「ただ名前を名乗っただけだぜ、どんなリアクションが合ってたんだよ」


 自分の反応が不正解だと知ったヒカルは開き直ってヒナタに聞く。彼女は「知りたい?」と焦らす。彼は首を縦に動かした。


「……腰抜かす」


 一瞬にして彼女の表情が変わった。それに合わせて場の空気も変わった。

 ヒナタの変化についてゆけず、動揺していたヒカルに彼女は手に持っているナイフを彼の顔に突きつけた。

 いつの間にナイフを持っていたのかもそうだが、ニコニコしていた彼女の顔が真顔になり、ヒカルは冷や汗をかいた。

 ヒナタがナイフを下すまでヒカルは息を止めていた。

 きつく閉じていた口を開き、空気を肺に取り込む。ヒナタの言う通り腰を抜かしてしまうところだった。


「言葉も出ないかしら」

「……」


 ヒナタにナイフを突きつけられた時の感覚は、獣と対峙した時と似ていた。


「最初に会った時に、その棒を私に向けて振り下ろしたでしょぉ」

「まさか、次に攻撃してたら」

「このナイフで殺るつもりだったわよぉ」

「マジかよ」


 目の前にいるヒナタは満面の笑みで答えた。

 その笑みは、あの時私に抱きついてなかったら死んでいたわよと言わんばかりだった。

 まさか、会ったばかりの美女に殺されていたなど思ってもみなかった。ヒカルは選択を間違っていた場合を想像してしまい顔が真っ青になった。


「安心してよぉ。ヒカルと一緒にソルトスに行くって言ったじゃない」


 怯えているヒカルに、怯えさせたヒナタは両手を上げ、武器であるナイフを持っていないことを示した。


「ほんとだよな」

「このヒナタ様が旅の安全を保証してあげるわぁ」

「保証……ねぇ」


 ヒカルは彼女の服装を見て呟いた。体のラインを誇張した服に身を包み、高いヒールを履くなど戦闘の前に山歩きに不向きな格好をしているヒナタに言われても。

 苦笑いをしているヒカルにヒナタはふくれっ面になる。


「なによぉ」

「いや、なにも」

「あるわよ。顔に出してるぅ」


 一瞬、殺気を出した彼女だが武器を手に納めると年上の美人なお姉さんだ。彼女が武器を振るって人を殺すなど想像もつかない。まして、飛んで走ることさえも。今思えば、先ほどの恐怖に感じさせられた出来事も演技だったのではないかと思えてきた。


怪しいお姉さん、ヒナタについていくヒカル。

無事にソルトスにたどり着けるのでしょうか?

次回お楽しみに。

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