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わたしも賄賂を犯した

作者: たかぴょん


しんしんと真っ暗な天から雪の玉が落ちてくる。天使が寝巻きを羽織りながら、数えられないほど遠い?この世の天井?のタイルに片方の掌をあてがう。楽な姿勢をキープしながら、その口から雪を吐く。なるほどそうやって雪は積もって行くのか。彼女の吐息をこぼした。アインシュタインでさえ解き明かせなかった謎である。


わたしは雪国新潟、県道路肩にあるビジネスホテルに泊まっている。変色したアスファルト地は、雪景色と肩を張ってマイナス四度を上らないよう、少しでも争え。

新潟の空と地である。わたしはそんな静寂な両雄の争いをホテルの一室から眺めていた。室内は二十八度に設定した。備え付けのビデオは女性の裸と天気予報が交互に流される。フロント曰く

「お客様、本日はご宿泊誠にありがとうございます。今回のお部屋は成人向け専用カードを買わなくても、当該チャンネルをごゆっくりとご覧いただけます」

なんでも、華やかな生殖風景が垂れ流しであるそうだ。

わたしは三者の競合に目を見張っていたため、一睡も出来なかった。



朝はコーヒーを五杯たいらげた。自慰行為をやり過ぎたため、腹が減っている。バターロールのサンドイッチ、ご飯、豆腐味噌汁、焼き鮭、肉じゃが、お新香、煮魚、焼きそば、野菜炒め……有りとあらゆる朝食を吐くほど食べた。まだねぼけまなこで帰り際フロントへ。領収証を切ったら、朝食バイキング代が宿泊費として計上されていた!

大柄な四十代半ばの、元テニス部風の男性だった。わたしのためだと言って『防衛庁ゴルフ接待疑惑』ではないが、あくまでも?二度と会わない一見さん?へサービスをしたというわけだ。手に取ると『N様宿泊費として、領収金¥7020也』とある。確か1320円が朝食バイキング代だったと思う。


あれ以来、あのビジネス・ホテルへは泊まっていない。あの細川護煕風のフロント・マネージャーとも会っていない。もちろん新潟の街並みとも会っていない。

きっと彼はそれを予期していたのだ。

東口改札を出て、交番を右へ曲がり数件の居酒屋を通り越し、昼食時は喫茶店になっているあのホテル。今も関係者一同面々、元気でやっているだろうか。清掃の女性、曇った窓ガラスを滴る露。

やはり時は止まらなかった。あれから六年。

粋なフロント・マネージャーは、こうなってしまうことを知っていたのだ。









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