第3話 いざ出航
砂漠を抜けた3人は東の大陸に渡るため、港を目指す。
道中野宿するがそこで・・・
ようやく砂漠をわたり切り、あと半日程度で港に着く
『はーやっと砂漠が終わったーー。休憩しましょー。』
カインは
「まだ全然歩いてないだろ。このまま港まで直行する。いつもいつもだらしないぞ」
とサラはすかさず突っ込む
「いやいや。ほぼまる1日歩きっぱなしでしょ。どんだけ体力馬鹿なのよ。」
あー、やっとまともに突っ込んでくれる人が現れた。歓喜。
『そうそう、ここら辺で野宿して朝に出るという感じで・・・』
僕らは近くの森で野宿をすることになった。食事が終わり3人とも寝袋で寝た。
数時間後僕は夜中にふと目が覚め、このあたりを散歩することにした。
てか前もこんなことあったな。
歩きながらいろいろ考えた。
自分は何者なのか。
どこから来たのか。
答えは見つかるものか。
そして何より不安なことがあった。
自分の居場所がなくなるのではないか・・・
新しいサラの能力はすばらしい。カインと2人で旅をしていたころは仲間を探すのに2年もかかったのに
今日1日で、もう残りの仲間の居場所を見つけてしまった。
この先あとこんな力を持った仲間が増えて自分には何ができるのだろうか。
逆に僕のせいで仲間を窮地に追いやってしまうことがないだろうか。
そんなことばかり考えてしまう。
ふと、オアシス村での夜に見た夢の少年の言葉を思い出していた。
-今日の村人たち。君と同じ目をしてたね-
村人たちはどんな顔をしていただろうか。
自分たちには何もできず、目的を見失い、ただ死を恐れて怯えている生気を失った目。
その光景が浮かんだ瞬間聞き覚えのないいろんな声が罵声してくる。
「なんでそんなこともできないんだよ」
「邪魔だよ。どっかいけよ」
「辞めてくれればいいのに」
「お前なんかいらねぇよ」
「マジ死んでくれよ」
「何年やってるんですかねぇ」
「知ってる?あの人ってもうすぐいなくなるんだって」
「これで平和になるよね」
・
・
・
「あなたは要らない人・・・」
頭がいたい。何これ?
どこだよここ
これが僕の記憶?
誰だよ。うるさいよ。
拒絶しないで・・・
助けて・・・誰か・・・・
頭を抱えて森の木にもたれかかっていると、正面で物音が聞こえた
ガサッガサッ
目の前に2mほどの化け物がたっていた。
2足歩行で全身家で覆われ、手が4本あり、2つの狼の頭がある化物。
妖魔だ
「こんなところにおいしそうな人間がいるねぇ」
「あたしが右半分、あたなたが左半分ということでよろしいでしょうか」
2つの頭がそれぞれ言葉を発した。
や、やばい。殺される。
カインとサラを呼んで助けを呼びにいかなければ・・・・
と振り返って戻ろうとしたが、足が動かない。
僕はこのままでいいのだろうか。
いつも2人に迷惑をかけるわけにはいかない。
それに・・・
ここで僕がなにもできなければ、これから本当に居場所がなくなってしまう。
僕は勇気を振り絞って前を向きなおした。
あの村人たちが戦っていくことを決めたんだ
言いだしっぺの僕がこんなことでどうする。
「おやおや。どうやら自分から食べられてくれるみたいでだよ」
「こんな誰もいなさそうなところでも歩き回って見るものですねぇ」
妖魔は爪が右手に力を入れた。
爪がニョキニョキとの伸びてくる。
さて、戦うことにしたけどどうする?何ができる?
やるだけやってみるか。
僕は剣を構えた
「やる気ですか。では・・・」
頭のうちのひとつがそうつぶやくと
妖魔が僕に一直線に向かってきて右手の爪で切りつけた。
僕は剣で受け止める
『くっ』
お、重い。100kg近くあるんじゃないか。
と思った瞬間。妖魔の前蹴りが僕の体に飛んでくる。
僕は吹っ飛ばされ木にぶつかって倒れた。
『うっ・・・』
「軽いなぁ。ちゃんと食ってるのかぁ?」
「たいしたことないわねぇ。もう食べてしまいましょう」
くそっ余裕ぶっこきやがって。
僕はリュックからナイフを取り出し妖魔の額めがけて投げつけた
あっさりかわされて、木に突き刺さる
「ふふふ。残念ねぇ」
僕は続けてナイフを投げ続けた。
すべて避けられ木に突き刺さる
「やけくそだね。もうちょっと考えようよ!」
「下手糞ねぇ!もう少し練習したら?」
妖魔が動こうとした瞬間動きをとめる
「動けない・・・」
「あなた何をしたの?」
よく見るとナイフの手元に細い釣り糸がつながっていて
妖魔の周りに張り巡らされている。
『余裕ぶっこきすぎなんだよ』
動けない妖魔に僕は走り込み、剣できりつける。
妖魔の頭のひとつの脳天にぶちあたるがはじかれる。
『か、かたい・・・』
なんちゅう固さだセラミックをたたきつけたみたいだ。
カインさんなら一撃で真っ二つだろうけど。
「かゆいかゆい」
「なかなか考えたようだけど残念ね」
妖魔は自分に纏わり付いている釣り糸を引っ張り周りのナイフを抜こうとしている。
『ここだぁ!!!!!』
僕は手元の釣り糸の1本を勢いよく引っ張った。
ナイフが中を舞う。
僕は妖魔に向かって走りながらジャンプし、空中でナイフをキャッチし
妖魔の首と首の付け根にナイフを打ち込んだ
「ぎゃぁああぁ」
「ぎゃぁあぁあ」
二つの首が同時に叫ぶ。
首は唯一むき出しで、弱い部分だったのだ。
前にどナイフを投げたとき、そこだけかすって
わずかに傷がついているのを見逃さなかった。
「おのれぇ。油断した」
「ぶっ殺してやる」
不意をつかれたのか逆上している
妖魔はナイフを引き抜いた。
ナイフできりつけた部分から亀裂が入り
半分に割れていく。
やったのか?
と思ったのも束の間、体は2つに分かれて
それぞれ中央にあった部分に手と足が生えていき
二体になった。
ま、まじかよ。もっとピンチになった。
二体が逆上して走って向かってくる
「死ねーーー」
2対が同時に叫ぶ。
不思議と落ち着いて迷いがなかった。
僕は剣を取り、妖魔に背を向け逃げ出した。
妖魔たちが背後1m後方まで近づく・・・
正面の木が現れ、ぶつかりそうなところで勢いで足で駆けあがり、
2mほど登ったところで蹴り上げ、宙返りしながら空中を舞った。
妖魔はそれぞれ右手の爪を繰り出し僕を捕らえようとしたところで、
かわされ爪は木に突き刺さった。
僕は空中で妖魔たちの背後にまわった。
逆さに落ちる僕の頭が、妖魔たちの頭の位置をすぎる位に剣を水平に振り回し、
妖魔たちの首を切り落とす。
首は2つに分かれてもまだ弱い部分のようだった。
僕は空中で姿勢元に戻し、地面に着地する。
2つの首は宙を舞いながら最後の断末魔を上げる
「おのれーーーただの人間がーーー!」
「シューマ様・・・仇を・・・!」
『誰だよそれ・・・』
はねられた首と別れた身体が黒い煙を上げながら蒸発するのを見届けると
僕は力尽き倒れた。
やった・・・・一人で倒せた。
ふたりの影が倒れた僕に近づく。
カインとサラだった。
「なんとかギリギリだったけど、ごくろうさん。」
「ほんと危なっかしいわね。見ててハラハラしたわよ。ねえなんで助けに行くの止めたの?」
「なんかさ。思いつめて決意した顔してたからさ。助けを呼ばなかった時点で、
一人でなんとかしたかったんだろ。2年間がんばってきたし思うところがあったんだろ。」
サラは神妙な顔をしていた。
「ねえ。なんであんな人を一緒に連れているの?よくやったと言っても一般人程度。
今回の件も運がよかったのも大きいし」
カインは悲しそうな顔をしている。
「そうだね。相手が油断しすぎていた。まともに警戒さえていたら命がなかったろうね」
「だから言ってるの。言っちゃ悪いけど、あの程度で手こずるようなら、侵略者に確実に殺される。」
カインは遠くを見て答えた。
「言いたいことはわかるよ。でもさ、こいつといるとなんか元気になるんだよな。不安が多い旅だけど、
今まで楽しかった。あと、これは俺の直観だけどこの旅に絶対に必要な気がするんだ」
「直観ってそんな曖昧な・・・」
カインはサラの目を見つめて答えた。
「でも、君がこの旅を始めたきっかけはこいつだろ?」
「そ、そうだけど。」
「なんかこいつにはさ、戦う力とかそういうのではなくて<人を変える力>
みたいなんがあるような気がするんだ。オアシス村でも、その前も・・・」
カインは旅を始めたころを思い出していた。
「そ、それは、なんとなくわかるけど・・・」
「まあさ、こいつも自分のことを知るって目的があるし、助けてやろう。」
サラは小さく答えた
「うん。わかった。」
「んじゃ、こいつの傷直して寝どこまで運んでやろう」
「ほんと世話焼けるわね。ふふ」
翌朝
『う、うーん』
僕は目を覚ました。あれ?寝袋で寝てるし、傷も治ってる・・・
昨日のことは夢だったのかな。
「さあ、勇者さまが目が覚めたみたいだから出発するか!」
僕はすべてを察して恥ずかしくなった。まだまだだなぁ
「やるじゃん。」
サラは照れながらそういった。
僕は嬉しかった。
『じゃあいきますかーーー』
僕らは港をめざし出発した。
もうすぐ昼過ぎになると、目の前に港が見えてきた。
港といっても、港町のようなでっかいものではなく、海辺の村が管理している小さな港だ。
昔もここの港は大きな町で、旅人目当ての商業や娯楽が盛んだった。
村に入ると、船着き場を目指した。
『なんか、想像していたよりこじんまりしてますね。』
「まあこのご時世だしなぁ」
船着き場につくと、大きな船が止まっていた。
カインが、船長らしき男に話しかけた。
「東の大陸まで行きたいのですが、あとどれくらいででますか?」
「うーんと。次出るのは2時間くらいかなぁ。でも船に乗るのは村長の許可がいるよ。
だいたい一人$100位かな。」
「まあお金の方は結構蓄えがあるので問題ないです。分かりました。村長はどちらに?」
「この村の丘の上のでっかい家。あそこ見えるだろ?」
男が指差すと、丘の上に豪邸が建っている。
「わかりました。行って話して見ます。」
「ねえねえ」
サラが僕をつついて聞いてきた。
「あんたたちなんでそんなにお金持ってるの?」
『うーん。なんて言ったらいいのかな。バイトというかなんというか』
「バイト?あはは!あんたは似合いそうだけど、カインは全然似合わない!!!」
カインは怒った口調で
「それはどういう意味だ!!!」
似合うと言われた方もカチンとくるんだけどなぁ
「冗談よ。実際どれくらい持ってるの?」
『まあ$500,000位かなー』
「え?うそ?どんなバイトしたの?聞きたい!!!」
サラは目を輝かせて聞いてきた。
口悪い上に、欲も深いって
よく神の子とか言われてたな。
・・・サラが睨んでいる。
や、やばい。
『えーとあれは、旅を始めたころかなー。大富豪のおじいさんがいてさ。その人がやってたバーで1か月ほど』
「え?バーテンダーろか?」
『ううん。踊り子・・・』
サラが爆笑している。
「おい。お前、話すなよ」
『す、すんません』
カインにとっても黒歴史だったらしく。あまり言われたくないらしい。
サラがまだ爆笑している
ほんっと性格わる・・・
おっとおっと。
村長の家につき事情を話すと、快く承諾してくれ許可証を発行してくれた。
まあよっぽど怪しい人物を乗せて、船乗り達を危険な目に合わせたくないとので自分の目でちゃんと
見極めたいとのことだった。
時間があるので、次の旅に向けた買い物を済ませ
出航時間に再び船着き場に行くと、船長らしき男が入り口で待っている。
「ようこそ。もうすぐ出るので中に入っていてください。船長に挨拶しておくといいですよ。」
「え?あなたではないのですか?」
カインは驚いた。
「私はただの船乗り。船長は操舵室にいます」
これでもかっていくらい、雰囲気かもし出しているのにややこしい。
僕らは操舵室に向かった。
カインは船長という<女性>に声をかけた。
「よろしくお願いします。」
女性は振り返った。
『え?君は?』
その人は僕の知っている人だった。
船の中でも一波乱ありそうだ。
僕たちの船は出発し、東の大陸に向かった。
まだまだ続きます。