7.攻略対象は、男の娘!?
クラス分けは、各個人に封書で『○×クラスになりました』というお知らせが届きます。
私はレイチェル様と同じ、『Dクラス』です。
この学園では同い年の専属執事や侍女の場合、自動的に主と同じクラスになります。
また、家同士が険悪な場合、その子どもが同じクラスになるのを避けます。
余計な諍いを避けるためです。
そして、登校初日。
教室に入ると、中性的な美少女がいました。
ですが、あらかじめ渡された座席表をみるとその美少女の座っている席は、攻略対象者のショタっ子『クリス・パルメザン』。パルメザン伯爵家の長男。男の子です。現実では、ゲームでの差異が生じるなんて当たり前ですが、パルメザン伯爵家の子どもは、男の子だけだったはず?あれっ?『クリス』は、男の子でも女の子でも使える名前ですし、男の子だというのは私の思い込み?
全身くまなく観察して何度見ても、着ている制服は『女子生徒』用の制服でした。
オリエンテーションの時間です。
まずはじめに、自己紹介をしていきます。
そして、自己紹介でクリス・パルメザンの番が来ました。
クリス・パルメザンの自己紹介中に狙ったように、メリッサ・ミステール・ダンベールが、
「ちょっと、クリス!婚約者である私に恥をかかせる気?」
「そんな気ないもん!」
私は、事実を確認したくて会話の間に入りました。
「あの、クリス・パルメザンさんは『男の子』なのですか?」
「そうよ。男の子なのにこんな恰好をして!」
機嫌を悪くして、メリッサ・ミステール・ダンベールは言いました。
メリッサ・ミステール・ダンベールは、ミステール・ダンベール伯爵家の次女で、クリス・パルメザンの婚約者です。
メリッサ・ミステール・ダンベールが、クリス・パルメザンを『男の子』だと言った瞬間、クラスの男子たちはショックで崩れ落ちました。一目惚れした女の子が、実は男の子だったなんてショックですもんね。
でも待てよ?このまま、クリス・パルメザンが『男の娘』でいれば、私の手間が省けるのでは?それに、昔の偉大な人は言いました。『かわいいは正義』と。一番かわいくて天使なのはレイチェル様だという事実は譲れないとして、クラスに目の保養レベルの美少女が増えるのはいいことですよね?
このままでは話が進まないので、私はクリス・パルメザンに質問することにしました。
「クリス・パルメザンさん、質問してもよろしいですか?」
「うん」
「どうして、女の子の格好を?」
「ちょっと待ってよ、これは女装でしょ?」
「えっとね、好きだから。それに、家には男の子だけなの。ママは、女の子が欲しかったから、ぼくに女の子の格好をさせたの。そしたら、男の子の格好でいるのが変な感じがして、女の子の格好でいるの」
「ご家族は反対しないんですか?」
「ママ以外は『こんな恰好やめろ!』って言ってたんだけど、ママはこのままでいて欲しいって言って、家族の反対を押し切ったの。それで、パパと弟たちは諦めたの」
「そうなんですか」
「でも、おかしいわよ!ちゃんと、男の子に戻るべきよ!」
「大丈夫だよ。ママが家督は弟が継げばいいって言ってたし」
だから私はこう言いました。
「似合っているからいいじゃないですか!かわいいは正義!これは、女装ではありません。『男の娘』です!卒業までこのクラスのままなんですよ。みんなが慣れればいいだけです!」
「そんなの違うでしょ!」
「このままで、いいの?」
「もちろんです。このまま、『男の娘』道を極めて下さい!」
私は笑顔で言い切りました。
クラスのほとんど、そして先生までも口に挟めずにいました。
先生を時々、笑顔で威圧して口を挟ませませんでしたが。
もちろん、レイチェル様に見えない角度を調整して先生を笑顔で威圧しました。
ちなみに、担任の先生の名はメイプル・ゴーダ。
あのギルドにいる受付のお姉さん、サミアさんの双子の妹です。
自己紹介を終えると、学校と寮のルールや注意事項などをゴーダ先生が説明しました。
やはり、乙女ゲームでの学園の定番ルール『身分をかさに、権力を使わない』『学校内は、身分は関係ない』がありました。
学園で身分がうんぬんをすると、いろいろ問題が起きますしね。
学園側が、いろいろ苦慮した結果こうなっているのでしょう。
特に今年は、王族の第四王子ロベルト・ゴルゴンゾーラマスカルポーネ様がいますし。
もちろん、第一王子から第三王子も学内にいるのですが、彼らは問題ありません。
寮に帰ってから、レイチェル様にクリス・パルメザンの『男の娘計画』について問い詰められたのですが、「今から、その子の個性を全否定するのは好きでないですので」と言ったら、納得してもらえました。
さすが、天使です!