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5.レイチェル様の婚約(仮)の裏側

レイチェル様の社交界デビューから数日後、旦那様は嬉しそうにして「レイチェルの婚約が決まった」と言われました。

お相手は、レイチェル様と同い年の第四王子ロベルト・ゴルゴンゾーラマスカルポーネ様です。側室の子です。優秀な第一王子から第三王子と比べられてコンプレックスを抱いている方。ゲームでは、そこをヒロインに付け込まれます。

彼の祖父と母は、野心家で本来なら第一王子様から第三王子様の誰かと婚約するはずだったレイチェル様を彼の婚約者にします。正直なところ、祖父と母は優秀だったのですが、その子どもまで受け継がれなかった。残念極まりないですね。

彼には、専属執事がいます。グッリェルモ・チェダー。チェダー一族の出来そこないです。8歳からギルド登録し、いまやだSランク止まりです。

やはり、彼もヒロインにコンプレックスを付け込まれて落とされます。

実力がないのに尊大な態度をとり続け人を見下すので、彼の父親から苦い顔をして『レイチェル様とロベルト様の顔合わせには同行しないように』との忠告を受けました。関わると、めんどくさそうですもんね。

傷を舐め合っているような組み合わせのような気がするのは気のせいでしょうか?


レイチェル様が婚約者と初顔合わせをしている頃、私はレイチェル様のお祖父様ジムディクト様を通して王城にある国王様の私室に呼び出されました。

そこには、国王様と王妃様、そしてジムディクト様と国内での立場が強そうな人たちがいました。

「リズ嬢、急に呼び出してしまってすまない」

「お気になさらないでください、国王様」

「今回のロベルトとレイチェル嬢の婚約をどう思う?」

「反対なのですか?」

「もちろんだ。本来なら第一王子から第三王子の内の一人と婚約をさせようと考えていたのだ」

「なら、傍観してはいかがでしょう?」

「どういうことだ?」

「こう言っては悪いのですが...」

「かまわん。続けてくれ」

「第一王子様から第三王子様に比べると、出来がよくないと評判です。ですから、きっと『真実の愛に目覚めた! レイチェル嬢、お前との婚約を破棄する!」と大勢の前で寝言をほざいて、自爆するのではないかと」

「うむ」

「大変申し訳ないのですが、正直言ってそういう未来しか思い浮かびません」

なんでしょうね。沈黙しましたね。

誰も何も言える雰囲気でないですね。原因は、私ですが。

これでも、最大限のオブラートな表現なんですよ?

第四王子の父親である国王様が、なにやら難しいお顔をして考え込んでいます。

皆さん、思い当たる節があるのでしょう。

ゲームでの彼は、王族でありながら王族としての義務も責任も果たさないお花畑思考でした。残念なことに、王族としての権力だけは使っていましたよ。権力だけは使っていたのです。

そういえば、攻略対象者たちに否定的な見方をして、前世の従姉妹たちには文句を言われていました。乙女ゲームが好きでない方や男性にプレイさせたら、そうなるのではないかと思うのですが...

必要なら、『きみラタ』知識を総動員して攻略対象たちを陥れればいいだけですし、深く考えることはないでしょう。

ちょっと、つつけば崩れ落ちそうですし頭脳プレイの必要はなさそうですしね。

これで、『成り変わり転生ヒロイン』があらわれれば、ベリーイージーモードで彼らを叩き潰せるかもしれません。

野心家である第四王子の母や祖父にとって、レイチェル様は優良物件です。ヴァルテッリーナ・カゼーラ公爵家の元当主であり、現宰相ジムディクト様のお孫さんです。レイチェル様は、ジムディクト様のお気に入りと、この王城内で重要職についている方や国での立場の強い方は誰でも知っていると思います。

現に、この部屋にいる人たち、国王様でさえジムディクト様の顔色をうかがっていました。

「ところで、リズ嬢。具体的にどのくらい傍観していたらいいの?」

王妃様に問われました。

「第四王子様が、学園に入学して四年後に事態が動くかと」

「そんなに待たないといけない?」

「はい。自ら手を下すことなく、自爆させるなら。第四王子様の専属執事は、チェダー家の出来そこないと一族内で言われている者です。きっと彼なら、こちらに都合のいい出来事イベントを引き起こしてくれます。それに、レイチェル様の弟君も入るので面白いことになると思われます」

「どうして四年後なのかしら?」

「第四王子様は、大変顔がよろしい方だと思います。四年もたてば、きっと色気づいた先輩方から迫られ調子に乗っている頃だと思われます。いい子にしていれば、きっと下級生にも人気が出るはずですし」

「顔がよければ人気が出るものかしら?」

「年頃の女の子は、顔から入りますよ。それで、王子様的な雰囲気を持ち、実際の王子様ならもてるのではないかと」

「私の子たちもいるのに?」

「第一王子様から第三王子様までだと、普通の貴族令嬢には敷居が高すぎますし」

「それもそうね」

「それに、第四王子様が国内で一番力を持つ公爵家で、その公爵家の令嬢であるレイチェル様と婚約(仮)したら、諸外国の王族の方との婚約をするのではないかと考えるかと」

「そう...」


こちらから、第四王子の婚約に反対すると第四王子の祖父が出てきて、大変なことになるから静観して自爆まちにしようと国王様が決定しました。

政治的なバランスもあり、第四王子の祖父の意見に反対することのリスクがあり過ぎるためです。



コンプレックスの塊である第四王子ロベルト・ゴルゴンゾーラマスカルポーネ様とチェダー家の出来そこないグッリェルモ・チェダー、そしてワガママ王子スヴァリウス・ヴァルテッリーナ・カゼーラ様が化学反応を起こして、面白い出来事イベントが来ないなんてありえない。それに、他の攻略対象者様もいるのでその分期待したいです。

ヒロイン補正「もう、やだこの子。ヒロインにあるまじき考えをしているよ(泣)」

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