灼熱のダンジョン②
「美味しい」
「凄い、マイカさんこれ凄い美味しいです。今度作り方を教えてください」
「私、こんな美味しい食べ物を食べられるなんて幸せです」
「旨い、旨いぞこれは!」
以上がカレーを食べた時の、皆の反応だ。
始めてのカレーは大好評だった。
この世界の野菜の種類は、何故か地球のものと変わらないので、地球のカレー と殆ど同じものを作れてわたしも大満足だ。
唯一違うのは、肉の種類。
日本では豚肉や牛肉、たまに鶏肉を使っていたが、手持ちにはそんな肉は無かったので、変わりにレッドドラゴンの肉で代用してみた。
これが大正解。流石は最高ランクのダンジョンのモンスターだ、その肉の旨味はこれまで食べた肉など霞んでしまうような旨さだった。
それと、もう1つ新たな発見があった。
カレールーを取り出した宝箱をアイテムボックスに入れ、再びアイテムボックスから取り出すと、中のカレールーが満タンになっているのだ。
これは多分、宝箱ごとアイテムボックスに入れたのが原因でアイテムボックス内での表記が"カレールーがぎっしり詰まった宝箱"で固定されているせいだと思う。
つまり、宝箱をアイテムボックスから取り出す際は、その中にはカレールーがぎっしり詰まった状態で出てくるということだ。
他の宝箱でもこのような現象が起こるかどうか明日再びダンジョンに潜った時に試してみようと思う。
夕飯を食べ終わり、ダンジョンで手に入れた燃焼石を使い何か作れないか鍛冶のリストを見ながら考える。
その末に作ったのが、燃焼石とレッドドラゴンの牙で造り上げたこの剣と、燃焼石とレッドドラゴンの爪で作ったクロー。
・バーンソードrank8
耐久700/700
STR+115
植物・昆虫系の敵に与えるダメージが増大
燃焼石5個とレッドドラゴンの牙8本で造り上げた深紅の剣、恐らくこのクラスの剣を持ってる人は殆ど居ないだろう。
・バーンクローrank8
耐久700/700
STR+100
植物・昆虫系の敵に与えるダメージが増大
クローは使ってる人が居ないけど一応シャルロット用に作ってみた。素手だけじゃ、この先厳しくなるかもしれないし。
「はい、あげる」
「えっ、本当にいいんですか?」
テントの準備をしていたサラに剣を手渡したらかなり驚いた顔をされた。
何を驚いているのだろうか。剣を使うのはサラだけなのだから剣をサラに渡すのは当然のことだろうに。
「いや、でも私この剣で十分ですし」
「剣が折れた時のために、武器はいくつもあった方が良い」
わたしの説得に恐る恐る剣を受けとる。
何処にそんな怖がる要素があったのだろうか。
「これ絶対、騎士団長や王族が使うレベルの剣じゃない。私が持っててもいいのかなあ」
何処か納得がいかないような顔で、ぶつぶつと何かを言っているが、受け取ってくれて良かった。
次は食べすぎて、馬車の中で横になっているシャルロットに声をかける。
「む、これを妾にか?別に妾は武器は要らないと言っただろうが」
「でも、一応。要らないなら売っちゃっていい」
「……仕方ない、一応貰っておいてやろう。礼は言わんぞ」
「うん、ありがとう」
「何で貴様が礼を言うのだ……」
シャルロットはそのままそっぽを向いてしまう。
受け取ってくれるか心配だったが、ちゃんと受け取ってくれて良かった。
できれば売らずに使ってほしいが、そこはシャルロットに任せよう。
空けて翌朝、今日も一人でダンジョンに潜り、他の皆はお留守番。
昨日も思ったが、正直四人だけを残すのは心配で心配で仕方ない。
しかし、ここでわたしが我が儘を言って残っても、四人は一応、主人であるわたしの言葉なので、受け入れてくれるとは思うが、そうなると、自分たちのせいでわたしがダンジョンに潜らなくなってしまった、と自分のことを責めそうなので、断腸の思いで皆に「行ってきます」と告げ、ダンジョンに潜る。
皆もかなり強くなってるしそんじょそこらの奴には負けないだろう。でも、まだあのレベルじゃあ心配だ。なるべく早く戻ってこよう。
一階は昨日、宝箱と採取ポイントがあった場所だけまわってみるが、宝箱も採取ポイントも存在しなかった。どうやら、1日置いただけでは、復活しないようだ。
仕方ないのでレッドドラゴンだけ狩って二階に進むことにする。
二階はこれまで見てきたダンジョンの中でも一番変わっていた。
所々にマグマが沸いているのは一階と同じだが、何故かその上に赤い巨大な花が咲いている。
更には天井にも同じ種類の花が隙間も無いくらいぎっしりと咲き誇っている。
この花に察知スキルが反応しているので、この花は全て魔物なのだろう。
正直、これだけの数の魔物を相手するのは面倒だし、動かなそうだから戦っても面白くないのでスルーして探索しようと思ったのだが……
「まあ、無理だよね」
二階に足を踏み入れた途端、その花たちが一斉に火を吹いた。
服が燃えると困るので慌てて階段まで戻る。
階段まで戻ると花は一斉に火を吐くのを止め、花弁を閉じ、蕾の状態に戻る。
これは、ちょっと困った。
隙間があれば、それを縫うようにして進めるのだが、隙間なくぎっしりと花が咲いているので、人が通れるような道は無い。
一応そのまま進んでもダメージを受けそうにないが、服は普通の服なので、そうも行かない。
服は、街で買ったものと、裁縫スキルのレベルを上げる時に作ったものがあるのでまだストックはある。
でも勿体ないので、なるべくなら燃やさないようにはしたい。
それにあの中を突っ切るのはちょっと熱そうだし。
何か手は無いかな?
「あっ、そうだ」
試しに威圧を全開にして、2階に足を踏み入れてみる。
……うん。どうやら、大丈夫みたいだ。
わたしの威圧に萎縮したのか花がわたしを攻撃してくることはない。
あの炎の蛇には効かなかったので、効くかどうかは不安だったが効いてくれて良かった。
どうやらこの花は数は多いが、そこまで強い魔物では無いみたいだ。
それじゃあ、花を狩りながら2階を探索するとしますか。
このダンジョンの2階も1階と同じ位の広さを誇っている。
炎を吐く花以外の敵は今のところ居ないので、探索は楽だが、これだけ広いとやっぱり面倒くさい。
探索スキルと察知スキルが何時も通り使えれば隅々までこのダンジョンの事はわかったんだけど。
探索の途中で見つけた隠し扉の前に立つ。
察知スキルに反応があるから中には敵が居る。名前は???となっており、敵の種類は分からない。
こういった隠し扉の中にいる敵は強力なのが多いから気を付けて行こう。
慎重に入った隠し扉の中は、前に見た部屋よりも数段広い部屋だった。
その部屋の中心に居るのは、1体の鎧、中に人は入って居らず、鎧だけがそこにある。
鎧からビリビリとした空気が伝わってくる。
この鎧、相当強い。 下手したらあのトロールより上かもしれない。
刀を1本だけ抜く。
あの鎧の持ってる刀と打ち合ったら、1合も持たない。そんな気がする。
わたしが刀を抜くと正座の体勢で座っていた鎧が刀を抜いて立ち上がる。
「--っつ!?」
その瞬間、わたしは仰け反るようにして首を狙ってきた刀を避ける。
そのまま刀で斬りつけようとするが、あの鎧はその場から動いていない。
なのに刀は確かに、わたしの首に迫っていた。
考えられるのは超高速で斬撃を飛ばしたか、もしくは空間ごと斬ったか、それとも刀だけ転移して斬りつけたか、そのどれかだ。
どれだとしても、面倒なことこの上無い。
更に厄介なのが、あの鎧が刀を振るった瞬間が殆ど見えなかったことだ。
見切りスキルのおかげで、辛うじて刀がぶれる瞬間が見えたので、避けることは出来たが、それでも斬撃自体がまるで見えないので回避が難しい。
「ぐっ」
再び刀がぶれ、斬撃がくる。その斬撃を転がるようにして交わす。
「空刃!」
転がった体勢のまま刀スキルの技、飛ぶ斬撃--空刃を放つ。
しかし、刀が再びぶれたかと思うと、金属が擦れ会うような音が辺りに響き、此方の放った斬撃は掻き消えた。
その間に少し距離を詰める。
そこで再び首を狙ってきた、見えない斬撃を屈んで交わし、更に鎧に接近する。
恐らくあの斬撃は連続して、使うことは出来ない。
連続して使えたなら、最初にわたしが転がって避けた瞬間に使えば、わたしは技を使うことも出来なかっただろう。
でも、あの鎧はそれをしなかった。
1秒か2秒程だか、あの斬撃を放つにはそれ位の間がある。
それだけの時間があれば、充分だ。
10メートル程の距離を1歩で詰める。
「鳴神!」
放つのはわたしが刀スキルのなかでも最速の技、雷を帯びた刀が雷速のスピードで鎧に迫る。
首が無いので狙うのは胴体。
しかし--届かない。
辺りに甲高い音が響く。鎧の刀が雷速で迫ったわたしの刀を弾いたのだ。
鎧の刀に弾かれ、刀が折れる。
だが問題ない、わたしの刀は1本だけでは無いのだから。
「鳴神」
残ったもう1本を鞘から抜き放つ。
鎧の刀はわたしの斬撃を弾いた時に振り切ったままだ。
これで阻むものは何もない。
雷を纏った刀が鎧を両断した。
「危なかった」
わたしは切断された腕の断面から新しい腕を生やしながら、そう呟く。
最後の斬撃をわたしが放った時、鎧は刀を振るった状態のまま、あの見えない斬撃を放ち、刀を振るった腕を切断してきた。
あとコンマ何秒かわたしの方が遅かったら、わたしの斬撃は届かなかったかもしれない。
流石に至近距離だとあの斬撃を交わすのは難しいので、これで倒せて本当に良かった。
床に転がっていた刀を拾う。
鳴神を放った際、2本目の刀は消し飛んでしまったので、今日は1刀流だ。
まあ、この刀は最高ランクのものだから戦闘は何も心配はいらないだろう。
というか、そもそもわたし2刀流で戦ったこと殆ど無いかもしれない。
大体の戦闘は素手で済んじゃうし。なら、暫くは刀1本でもいっか。
・妖刀・村正rank10
耐久1000/1000
STR+420
AGI+270
使用者を常に『呪い』状態にする
ふむ、呪いか。
わたしには状態異常耐性があるので呪いは効かない。
この呪いがどういった呪いなのかは分からないが、刀のランクからしてかなり高位は呪いだろうから、この刀はわたし以外には使うことは出来ないだろう。
鎧の方も鑑定してみたが、鎧は普通に市場に出回ってるレベルの粗末な鎧だった。
鎧も高ランクの装備かと思っていたのでちょっと残念だ。
もしかして、刀が本体で鎧の方を操っていたのかな。
一応、何かに使うかもしれないので、鎧も拾っておく。
さて、この部屋には他に何もないようだし、とっとと探索を進めるとしますか。
戦闘シーン以外の描写は中々筆が進まない……
暫くは2、3日置きの更新になりそうです。




