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ゆっくりしていってね!!!

 列車の中に侵入してきた小太りの中年男に戦いて後ずさると、小さくなったれいむが肩に乗って囁いてきた。

「主、前回までのあらすじやるよ」

「は?」

 れいむがぴょんと肩の上で跳ねた。

「前回までのあらすじ!」

 何、急に。おかしくなっちゃった?

 れいむが再び囁いてくる。

「前回までのあらすじはその世界での真実になるんだよ。だから前回までのあらすじであの男を倒した事にすれば」

「いや、ならないだろ」

 やっぱりおかしくなったらしい。無理もない。殺されるかもしれない、そんな恐怖を目の前にしているんだから。

 確かに出来たら良いけど。

「出来る! 信じれば夢は叶うんだよ、主!」

 れいむは自信満々だった。その態度にもしかしたらという気になる。れいむは幻獣だ。サイコキネシスという不思議なチカラが使える。それ以外にも、何か特殊な能力があるんじゃないだろうか。前回までのあらすじを真実にする事の出来る能力を。

 信じられない気持ちだったが、目の前に居る殺人鬼に勝てないのも事実で、だったらここはどんなに低い可能性にでも賭けるべきだ。

「分かった。もうそれしか方法は無いもんな」

「主!」

「やるぞ!」

「そうこなくっちゃ!」

 れいむに頷いて見せ、考える。

 前回までのあらすじってどういう事を言えば良いんだ?

 今まで見てきた沢山の物語を思い浮かべた俺は、一拍の後に大きく息を吸い、そして言った。

「前回までのあらすじ!」

 千景と蛇と男が俺を見て怪訝そうな顔をする。

 大丈夫かこいつ、という視線だが、いまさら気にしていられない。

 俺は前回までのあらすじを語りだす。

「俺、悠人。何処にでも居る大学生。だったんだけど、不思議な生き物ゆっくりに出会った俺は幻獣達の争いに巻き込まれてしまう」

「私、れいむ。どこにでも居るゆっくり。駄目な主を助ける為に未来からやって来たの」

 え? 未来?

 嘘って挟んで良いの?

「幻獣を操る殺人鬼に襲われた主は、そこで出会った謎の天才美青年千景に助けられ」

 千景が物凄く不審そうな顔で俺を見てくる。

「ついに殺人鬼を電車の中におびき寄せ、最後の決戦を挑み」

 れいむがそう言って、俺を見た。

 ここまでが本来の過去。そして次の言葉は、男を倒したという、望ましい過去。

 俺はれいむに頷いて、男を見る。

 もしも本当にれいむの言った通りになるのであれば、男を倒したと言えば、過去が変わり、男を倒したという結果が現れる筈だ。未だに半信半疑だったが、他に手立ては思いつかない。やるしか無い。

 俺は思いっきり息を吸い、そして叫んだ。

「そうして殺人鬼を打ち倒した!」

 男を見る。

 男はこちらを見ている。不思議そうな顔をしている。

 千景も不思議そうな顔をして、こちらを見た。

「おい、何してんだ?」

「いや」

 失敗した?

 当然だ。前回までのあらすじと言えば何でも本当になるなんてありえない。前回までのあらすじでお話が進むのは、それこそお話の中だけなのだから。れいむにそんな能力は無かった訳だ。

 もうこれで、俺達が男に対抗する手段が無くなった。

 絶望してれいむを見ると、れいむは床に転がった空き缶の上で飛び跳ねていた。

 おかしくなったのかと思った。

「何してるの?」

「主、もう後は無限一UPしかないよ!」

 おかしくなったらしい。

「俺の命、残機制じゃないから」

 俺は肩を落としてれいむから顔を背ける。

 男の静かな声が聞こえた。

「さて、良く分からないが、死ぬ準備が出来たという事か?」

「いや、あの」

 男を見ると、笑顔の男から静かな怒りが伝わってくる。

 どうやら先程のあらすじは男の神経を逆撫でしただけで終わった様だ。最悪の結末だった。

「まあ、安心してくれ。準備が出来ていなかったとしても、何」

 男がナイフを構えて歩み寄ってくる。

「これから死ぬまでの間に十分後悔出来るだろう」

 男がそう言って笑った瞬間、蛇の尻尾が男の顔面めがけてぶち当たった。

「おい、俺も居るんだぜ。忘れてても良いのか?」

「別に構わないだろ」

 男は笑いを収めない。男にぶつかった蛇の尾からはナイフの刃が飛び出ていた。

 驚愕する俺の視界の中で、男は蛇の尾を貫いたままナイフを振り上げてへびおを振り回した。へびおが天井にぶつかると、今度は振り下ろして、電車の床に叩きつけ、そのまま蛇の尾に刺さったナイフを電車の床に突き立てた。更に懐からもう一本ナイフを取り出して、蛇の腹ごと床につきたて、へびおを床に縫い付ける。

「何!」

 千景の目が驚愕に見開かれる。

 俺も同じ気持だった。

 っていうか、人間なの? あの男。

 巨大な蛇の尻尾をナイフで受け止め、そのまま片腕で振り回して電車の床に縫い付けるなんて、人間業に思えない。

 男が懐から別のナイフを取り出して千景を見る。

「くそ」

 千景は悪態を吐きながら拳を構えたが、床に縫い付けられた蛇は戦える状態に無く、千景一人で勝てるとは思えない。俺も加勢しなくちゃならないと思ったが、俺が加わったところでどうなるとも思えない。酷く絶望的な状況だった。

「主」

 呆然としている俺の掌にれいむが乗った。見つめてくるれいむを見ると、何故だかれいむの言いたい事が伝わってくる。

 もう手立ては無い。だがだからと言って、何もしないで死を待つ訳にはいかない。少しでも活路を見出さないと。

 だから自分を投げろと言っている。

 確かにもう俺達に出来る事はそれ位しか無い。

 俺は頷いて、れいむを振りかぶった。そして背を向けた男へと狙いを付けて、思いっきり投げる。

 だがれいむに当たる寸前で、男が素早く振り返りれいむを掴みあげた。

 れいむをキャッチした男は手の中のれいむをくだらなそうに見つめて、ナイフを持ち上げる。

「随分と矮小な存在だな」

 まずい。殺す気だ。

「れいむ!」

 叫んで駆け寄ろうとしたが、間に合いそうにない。

 男に掴まったれいむが言い返す。

「その油断が命取りだよ」

「へえ」

 男は笑い、ナイフを振り上げる。その切っ先はれいむを狙っている。

 それを見て、俺の血の気が引いた。

「止めろ!」

 思わずそう叫んだが、男はこちらに凶悪な笑みを見せつけてきただけで、そのままれいむを狙ってナイフを振り下ろそうとした。

 だがその手が止まった。

「ねえ、うるさいんですけど」

 突然掛けられた声に注意を引かれた、男が顔を挙げる。

 声の主はさっきまで奥の座席に座っていた女の子だった。鬱陶しそうな表情で歩いてくる。

 対する相手が殺人鬼だと言うのに、まるで無造作に、警戒した様子が全く見られない。

 まさか状況が分かっていない?

 慌ててその女の子を止めようとしたが、遅かった。

 女の子は既に男の目の前に立っていて、にっこりと笑って言った。

「電車の中で暴れるのは迷惑なんで止めてください」

 それに男は笑顔で応じる。凶悪な笑顔だった。殺意が漏れでていた。

「おい、逃げろ!」

 俺の叫びが届く前に、男のナイフは女の子の腹を目掛けて振るわれていた。

 思わず目を閉じそうになった時、女の子がそのナイフをあっさりと避けるのを見た。そのまま、カウンターで男の顔面に拳をめり込ませる。

「は?」

 目の前で起こった事が分からなかった。

 女の子は、顔面を押さえて後ずさった男を無視して、こちらへと歩んでくる。

 何が起こったんだ?

 困惑している間にも女の子はどんどんと近付いてきて、俺の前に立った。

「あの」

 見つめられて、何て言おうか迷っていると、女の子がまたにっこりと笑った。

 思わず笑い返す。

 目の前で女の子が跳び上がり、思いっきり頭に拳骨を落とされた。

 頭を抱えてうずくまると、女の子は去っていき、その先から「痛っ!」という千景の声が聞こえてきた。

 呻きながらも何とか立ち上がって、千景を見下ろしている女の子に尋ねる。

「何で?」

 どうしてこんな事をされたのか、意味が分からない。

「喧嘩両成敗。車内で暴れてたから」

 女の子はそう言って笑った。

 暴れていたのは確かなので、何も言い返せない。

 でも一体この女の子は誰なんだ?

「誰なんだ、お前は」

 殺人鬼の男も疑問を発した。傍にあの包帯をグルグル巻きにした幻獣を従えて、明らかに戦闘態勢に入っている。

 すると女の子はにっと笑い、胸に手を当てた。

「森内希美、ブラックミラーのサードカブンを取り持つハイプリエステス」

 男が訝しんで眉根を寄せた。

「聞いた事の無い単語がずらりと出たな」

「だろうね! 分かりやすく言えば、魔女見習い、かな?」

「魔女見習い?」

 男は益益訳が分からなくなった様だが、すぐに首を横に振った。

「まあ、良い。殺せば同じだ」

 理解する事を諦めた様だ。そうしてナイフを構える。警戒の色合いが濃く、うかつに飛び込む気は無いらしい。

 一方で女の子の方は実に無防備に男へと近づく。

「おっさん、悪い奴でしょ? 違うとは言わせないよ。電車の中で暴れるし、ナイフで人切ろうとするし」

「だったら何だ」

「別に。ただ殴っても問題ないなって」

 男が鼻で笑う。

「だったらやってみろ。さっきは油断したが」

 一瞬の内に間合いを詰めた女の子が拳を振るう。

 辛うじて避けた男は苛立った様子でナイフを構える。それを見て、女の子はくすりと笑い、笑われた男は笑顔を固まらせ、ナイフを強く握りしめた。

「残念だけど、勝てないよ、おっさん。諦めてね」

「随分と余裕だな」

「大分疲れてるでしょ? そんなんじゃ無理無理、勝てません」

「あまりなめるなよ?」

「もう疲れすぎてて、頭も働いてないんじゃない?」

 再び女の子が男との距離を詰める。

 男は思いっきり歯噛みする。同時に男の傍に居た包帯の幻獣が飛び出して、女の子と激突した。

 女の子の拳は幻獣に突き刺さっていたが、一方で幻獣のナイフもまた女の子の腹に突き立っていた。

 幻獣がナイフを捻ると、女の子が顔をしかめて呻きを上げる。

 それを見て男は笑う。

「残念だったな。言っただろ? なめるなって」

 男が見下しながら女の子へと近付くと、女の子は顔を上げてにっと笑った。

「ほら、やっぱり頭が働いてない」

「何?」

「そいじゃ、さようならぁ」

 女の子が気の抜ける様な声音でそう言った瞬間、お腹のナイフの刺さった部分から突然に幾重もの蔦が生え出して、男と幻獣を飲み込み、そのまま電車の窓に叩きつけた。その勢いで窓が割れ、男と幻獣は外に投げ出される。

「ご乗車ありがとうございました」

 笑顔のまま女の子が手を振った時には、男と幻獣の姿は窓の外の闇に落ちて消えていた。

 やがて列車の速度が緩まり始める。

 俺達が呆気にとられている前で、女の子は「さて」と言って俺達に振り向いた。何だか怖くて、思わず体が硬直する。

「そういう訳だから、もう電車の中で暴れない様に!」

「あ、はい」

 思わず頭を下げると、女の子がくすりと笑った。

「そんなかしこまらないでよ。今は味方同士なんだからさ」

「味方?」

「あんた達もマリオネットを倒す為にあのホテルに集まってるんでしょ? 違うの?」

 マリオネット、って殺人者集団の事だっけ?

「あ、そうです」

「私もそうなの! だからまた会うでしょ、きっと」

 丁度電車がホームに停まり、扉が開いた。

「じゃあね」

 女の子は手を振って電車から去って行った。俺達は嵐の去った後、しばらくぼんやりとしていたが、目的の駅である事に気が付き、その上扉が閉まりそうになったので、慌てて降りた。

 駅を抜ける間も、電車での出来事を理解出来ないでいた。いや、そもそも今日はずっと理解出来ない事ばかりだ。これ以上何か起こったら頭がパンクして死ぬかもしれない。

 れいむが言った。

「随分と強力なライバルが現れたね」

「何の?」

 マリオネットという組織を倒すライバルという事だろうか。

 別に競争なんかしてないけど。

「ヒロイン候補の」

 ヒロイン? もしかして

「澄玲の?」

 まさか俺の恋の相手って事か?

 するとれいむが呆れて言った。

「私のライバルに決まってるでしょ。この物語のヒロインが誰かって話だよ」

「意味が分からない」

 そう言えばと、千景に聞いてみた。

「あの女の子、魔女見習いの。知り合いなの? 仲間って言ってたけど」

「いや、ちげえよ。結構人数集まってるからな。正直仲間って言われてもほとんどの奴は知らねえ」

「そうなんだ。もしかしてあのホテル全部貸し切りなの?」

「そうだよ。オーナーがうち側だから」

「そうなんだ」

「どうかしたのか?」

「いや、本当に安全なんだなって」

 俺がそう言うと、千景が笑って背中を叩いてきた。

「何だ、さっきので不安になってんのか? いや、まあ確かにマジでやばかったけど、でもホテルに戻れば大丈夫だって」

 千景の言葉を茶化す様にれいむが言った。

「でもその前にまた襲われたりして」

「あんま不吉な事言うなよな」

「そうしたら私が守ってあげるから」

「いや、だから無理でしょ」

 そんな軽口を叩きながらホテルへ行くと、ホテルが燃えていた。

「嘘だろ?」

 燃え盛るホテルを前に俺達は呆然と立ち尽くす。

 誇っていた高さは崩れ落ちて半分になり、窓ガラスは全て割れ、奥には火勢が見て取れた。至るところから煙が噴き出して、もうもうとした煙がホテルを包み込んでいる。ホテルの前の道路には沢山の人が集まっていて、その中には澄玲の姿も見えた。

「澄玲」

 声を掛けると、澄玲は振り返って蒼白な表情を見せた。何があったのか尋ねてみたが澄玲も来たばかりで何も分からないという。千景は慌てて何処かへ電話を掛けていた。三人で困惑していると、不意に澄玲が一点を見つめて驚いた表情をした。その視線の先を見ると、白髪の生えた老人が歩いてきた。

 どうやら知り合いの様で、澄玲はその老人へ駆け寄っていく。

「大井さん、何があったんですか?」

 すると老人が静かに答えた。

「爆弾だよ」

「爆弾?」

「そう。ホテルの中に爆弾が仕掛けられていた様だね」

「怪我人とかは」

「恐らく半分近くの仲間が亡くなっただろうね」

「そんな! 一体誰が」

「それは分からない」

 千景が前に進み出た。見ると千景の表情が怒りに満ち溢れている。

「マリオネットの奴等じゃねえのか?」

 震える千景の声を聞いた、老人は不思議そうな顔をする。

「その子達は?」

 慌てて澄玲が答えた。

「あ、えっと、同じ仲間って言えば良いのかな?」

「成程」

 そんなやりとりを無視する様に、千景が老人に詰め寄った。

「なあ、はっきり言えよ。マリオネットの奴等がやったんだろう?」

「残念ながら分かりません。けれどそう考えてマリオネットの本拠地に向かった者は多い」

 千景はやっぱりかと呟いて、俺を見た。目がやけにぎらついていた。

「悪いな。そういう訳だから」

「え?」

 千景が端末を振る。

「仲間と連絡がつかねえ。あんま考えたくねえが、多分。だから悪いけど行くわ。仇とらなくちゃ」

 千景が背を向ける。

 仇?

 未だに状況についていけずに、千景の後を追おうとすると、千景が振り返って言った。

「お前は来んな! 戦えないんだろ? だったらここに居た方が安全だ」

 その言葉に戸惑って足を止めると、千景は先に行ってしまった。

 何だか取り残された様な気がしていると、背後から澄玲と老人の声が聞こえてくる。

「私も行きます」

「危険だよ」

「でも爆弾何て、ホテルに居た人達が、こんな酷い事、見過ごせない」

 澄玲が口を引き結んで俯いた。

 しばらく拳を握りしめて震わせていたが、やがて決意した様に顔をあげる。

「大井さん、私行きますから、止めないでください」

 老人は黙っている。

「私、危険でも行きますから。止めないでください」

 澄玲がそのまま老人を見つめていると、やがて老人は息を吐いた。

「いつも言っているでしょう? 私に君を止める事は出来ません」

「ありがとうございます」

 澄玲が頭を下げると老人が悲しそうな顔をした。澄玲はそれを振り払う様に背を向ける。

 それに向けて老人が言った。

「無理だけは」

「分かってます。行ってきます」

 そう言って澄玲も駆け去って行った。恐らく敵の本拠地に向かったのだろう。

 未だに状況が良く分かっていない俺は、その場に取り残されて途方に暮れる。

 と、老人が話しかけてきた。

「君は見たところ、落ち着いている様だけど、ホテルの中に仲間は居なかったのかい?」

 落ち着いている訳じゃない。ただ頭がついていっていないだけだ。

 ただあの二人が激昂しているのに比べて、自分が動けないで居るのはきっと、ホテルに居た人達の事を良く知らないからだろうと思った。

「あの、俺、今日ここに来たばかりで」

「ああ、じゃあ、もしかして澄玲のお友達かな?」

「あの、そう、と言えばそうなんですけど、多分」

 多分、友達だと思うけれど、もしかしたら澄玲はそんな事思っていないかもしれない。断定しづらくて、つい曖昧な言い方になってしまった。

 何故か老人が興味深そうに見つめてくる。

「ほう、そうか。そういう、ね」

「え?」

「いや。とにかく、一つお願いがあるんだけど」

 お願い?

「澄玲の事をよろしく頼みます。君に任せたい。私はどうしてもここを離れる訳にはいかないから」

 守れという事だろうか。やぶさかではないけれど。何だか老人の改まった言い方が気になった。

 とりあえず頷いておくと、老人は安堵した表情になって言った。

「ありがとう。それじゃあ私もいかなければならないから」

 そう言って炎の上がるホテルに向かおうとする。

 一体何をするつもりなのかと思っていると、老人がうっすらと悲しげに笑った。

「主人を失って暴走した幻獣達を狩りに行くんですよ」

 暴走した幻獣達を狩る?

 やっぱり何一つ分からなかった。

 けれど老人はそれだけ言って、何の疑問も解消してくれずに行ってしまった。

 こうして、完全に一人取り残された俺は、とにかく澄玲を追いかけなくちゃと考えて辺りを見回し、そもそも物凄く基本的で大事な事に気がついた。俺はまだ敵の本拠地が何処にあるんだか分からない。つまり澄玲が何処へ行ったのかもまるで見当がつかなかった。

 さっきの大井という老人も何処かに行ってしまったし、辺りの人達から聞こうにも、幻獣の事を知らない一般人においそれと幻獣の事を話してはまずい気がするし、最悪そいつが敵側の人間かもしれない。完全にどうして良いのか分からないで居ると、不意に背後から声が掛けられた。

「おい」

 驚いて振り向こうとした瞬間、背中に衝撃が走って、態勢を崩し、視界一杯にアスファルトの道路が映ったかと思うと、視界が暗転した。

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