2(完)
少し暇ができたので完結まで書くことができました。
2014/7/21 10:36 に書き終わりました。ほやほやです。
誤字確認はほとんどしておりません。後で修正します。
「なあ主人公、放課後、カラオケ行かないか?」
と、クラスメイトからの誘い。
バーベキュー交流会後、たびたびに友人から遊びの誘いが来るようになった。
喜ばしいことだが…。
「あー悪い。今日は用事があるんだ。」
千衣のことでまだバタバタしているため、今のように断ることが多い。
「主人公、行かなくて良いん?」
「今日は特売日なんだ。買い溜めしておかないとな。」
「あー、そか。じゃあ帰ろ。」
―1週間後。
「ねえ主人公君。5、6人で今週の日曜日に遊園地行くんだけど、どう?」
「千衣ちゃんも一緒にさ。」
「遊園地って、どこの遊園地だ?」
「都内なんだけど。」
ここからだと電車で1時間くらいかかるな…。
それに千衣は目が見えなくなってから電車に乗ったことがない。
「ごめん。千衣がああなってから電車に乗せたことがないんだ。
千衣の負担を考えると、ちょっとね。」
「そっかー。じゃあ仕方ないよ。」
「…主人公。」
「おう、千衣か。聴いてたのか?」
「うん。主人公だけでも行ってきて。」
「いや、でも…。」
「あたしのことはだいじょぶだから。いろいろ1人でやってみる。」
「んー…分かった。そういうことだから、俺は行くよ。」
「よかったー。詳しい予定は後で話すね。」
「ああ、よろしく。」
―日曜日。
「じゃあ行ってくる。何かあったらすぐに電話しろよ?」
「分かった。いってらっしゃい。」
―――。
主人公は都内の遊園地に行った。
あたしはまだ電車が微妙だから仕方ない。
せっかく友達ができたんだし、主人公には楽しんでほしい。
今日、この家にいるのはあたしだけだ。
考えてみると、見えなくなってから1人で家にいるなんて、初めてだ。
喉が渇いた。何か飲もう。
壁伝いに冷蔵庫を目指す。
玄関から真っ直ぐ進むとキッチン。
冷蔵庫はキッチンの扉のすぐ横にある。
玄関から続く廊下を進む。
突き当たった。たぶんこれがキッチンの扉。
ドアノブを探る。あった。
引いてみる。開かない。あ、押戸だった。
冷蔵庫にたどり着いた。
牛乳を飲もう。
開ける。開けた側の収納庫の左に牛乳があるはず。
手に取る。紙パックだ。牛乳に間違いない。
あ、コップも必要か。
コップは取りやすいよう、主人公がシンクの隣に置いたはず。
…でも牛乳の残りは少ない。このまま飲もう
リビングのソファまではもはや歩き慣れた。
すんなり到着。
テレビをつけた。
音量を上げた。
家の静かさ、視界の静かさを、テレビで掻き消そうとした。
―――。
…疲れた。
俺以外全員が絶叫系好きだった。
乗るものは当然ジェットコースター。
観覧車など目にも入っていないようだった。
こんなことなら千衣としりとりしていたほうがマシだった。
多少ふらつきながら、帰宅。
「ただいま。」
「おかえり。」
千衣はリビングのソファに座っていた。
「何か問題あったか?」
「いや、特にないんよ。」
「ならよかった。お前1人は初めてだっただろ?」
「でも問題なかった。また誘われたら遠慮なく行って大丈夫。」
「まあ、そうだな。大丈夫だったからって、あんまり無茶はするなよ。」
「うい。」
―数週間後。
「主人公君、今度は別の遊園地に行こうよ。」
「断る。」
「えー、なんで?」
「お前ら絶叫系しか乗らないだろ。」
「今度は普通のも乗るからお願い!」
「普通のも乗るならまあ…。で、その遊園地はどこにあるんだ?」
「今度は都内じゃなくて、むしろ下り方面に8駅くらいかな。」
「遠いな…。いや、やっぱりやめ―」
「行ってきていいんよ?主人公。」
「千衣…。」
「あたしにとってもいい機会だから。」
「うーん…。分かった。」
―日曜日。
「練習の機会だからって、無茶するなよ?」
「うい。」
―――
また1人で留守番だ。
今日は何に挑戦するか…。
今日はインスタントコーヒーを飲もう。
まずはコーヒーカップを取りに行く。
キッチンに着いた。
コーヒーカップはたまにしか使わないから、取りづらいところにある。
確か奥のほうに…む、これっぽい。
コーヒーカップを取った。
次は粉だ。
粉はキッチンのいちばん右の棚にある。
手をさまよわせ、粉を探す。
これだ。
取り出すときになんか落ちた。
まあいっか。
お湯お湯。
さすがに火を使うのは危ない。
ポットのお湯を使おう。
主人公がさっき沸かしてたし。
ポットはリビングのテーブルに置いてある。
リビングへ移動。
探す。
あった。
この辺かな。
「あつっ。」
狙いが甘く、カップの取っ手を持つ手にお湯がかかってしまった。
冷やさないと…。
あ、まだ粉すら入れてなかったのにお湯入れてた。
キッチンへ向かう。
「っ!」
何かに足を取られた。
パリーン。
コーヒーカップが割れてしまった。
足を取られた原因は、粉を取り出すときに落としたなにかっぽい。
片付けないと。
「…っ。」
人差し指にじんわりと広がる痛み。
ガラスで手を切ってしまった。
ばんそうこうはどこだっけ。
リビングにある棚の引き出しに合ったような…。
リビングの棚に、手を這わせる。
引き出しを見つけた。
引きすぎて外れてしまった。
あー。だめだこれは。
いろいろ諦めてその場に座った。
その拍子に椅子の背もたれに頭をぶつけた。
「~~っ…。」
しばらく悶えて痛みが治まると。
静寂。
秒針。
「………ぐすっ。」
―――。
騙された。
絶叫系オンリーの遊園地に連れていかれた。
普通もくそもないだろ…。
早々にギブアップして帰ってきた。
がちゃ。
「ただいまー。」
…なんだこの散らかりようは。
リビングはなんだか散らかっていた。
泥棒か?いや、鍵はかかっていた。
「…主人公?」
千衣が自分の部屋から出てきた。
「千衣、どうし…おっと。」
ぎゅ。
抱き付かれた。
「…ごめんなさい。」
千衣の頭をできる限り優しく撫でた。
「1人で無理する必要なんてないぞ?」
「でも、主人公があたしの世話ばっかりで友達と遊べない。」
「いいんだって、俺は好きでやってる。」
「好きって『世話をすること』が?」
「千衣に決まってるだろ。」
頭をぽんぽんしてやる。
「…っ。」
ぎゅー。
さらに強く抱き着かれた。
「ほら、一緒に片付けるぞ。」
「待って、もうちょい。」
―その日の夕食は、普段より2時間遅くなった。
――――――。
それからしばらく。
「主人公。隣町にでかいショッピングモールができたらしいから行こうぜ。」
クラスの男女数人が誘いの言葉を。
「おう、行くわ。千衣も連れてくぞ。」
「言われなくても分かってるよ。」
「千衣ちゃん行けないなら主人公君は来ないもんね。」
「千衣ー。」
千衣を呼ぶ。
「…どしたん?」
千衣がとことこ歩いてくる。
その進路上には誰かのカバンが。
「千衣ストップ。」
ぴたっ。
カバンをどける。
「千衣スタート。」
とことこ。
到着。
「千衣、隣町に行くぞ。」
「うい。」
「…なんつーか、さすがだな。」
「だね。」
クラスメイトは関心したとも、呆れたともいえる様子だ。
「帰りにちょっと店に行くぞ。」
「なに買うん?」
「部屋のブラインドが壊れたから、新しいのをな。」
「それなら窓の前にあたしを置けばいいんよ。」
「…ブラインド違いだ。」
これからは、なんでも一緒に。
お読みいただき、ありがとうございます。
また何か思いついたらだらだらと書いていきたいと思います。