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図書室ピアス  作者: 羽野トラ
図書委員
9/57

好き

「好き」なんて、告白の時以外言えるわけないんだ。


憎まれ口叩いても、告白したのは僕の方だし、きっとドキドキする割合が高いのも僕の方。



だから。


なんか悔しくて。



「どしたの心」

「…なんでもない」



告白以降なんもないから。お泊りの時だってタキさんから妙なルールを聞かされたし、キスも(一回だけあるけど)無い。

抱きしめられるのはたまにあるけれど。



タキさんはホントに僕の事が好きなんだろうか。



と、聞くに聞けない馬鹿な事を思ってみる。


ああやっぱり、惚れたモン負けなんだろう。


たまには…言ってみる?



「タキさん」


「ん?」


いつもの奥の本棚。

皆が怖いって言うタキさんは、ホントはめちゃくちゃ優しい人。

誤解だよって言いたいけど、話しかけやすくなってタキさんが他の奴に優しくしたら嫌だからいつも曖昧に濁す。



「すき」


「…え?」


聞き返すなよ馬鹿。

いきなりかもしんないけど「俺も好きだよ」って言ってよ。


「…目が好き」


ほら、いつもと変わりない事言ってる。


「ありがと」


そう笑って返して。

僕に何もないのはヒドイんでないかい。


……不満だ。



「馬鹿」

「ええ?」


好きって、目が好きとか手が好き、でいいんだ。

好き――普段タキさんから僕に言ってくれた事、一度もない。べたべたが嫌なのかも。


「どうしたの」

「…なんでもない」

「言わなきゃ分かんないよ」


タキさんが言わないで。


「心」


困ったように溜息をついた数秒後。僕はタキさんに抱え上げられた。


「な」


少し低めの位置にある本棚に僕を乗せ、タキさんはにやりと笑った。低めといったって、降りようと足をかければバランスを崩して本棚ごと倒れてしまいそうだから降りられない。


「心、かわいい」


「それ嫌」


「何て言って欲しいの」


いつから素直じゃなくなったんだろう。


告白したての時、付き合う前、先輩後輩の関係だった時はもっと素直でただシンプルだった気がする。



「――た、タキさんに」


「うん」



タキさんはいつもこんなんで、あんま変化なくて。素直じゃなくなったのは僕だけ。



「好きって…言っ…」



僕を見上げるタキさんのハスキー犬の瞳は柔らかい。最後まで言い切る前にそっと腕を伸ばし体を引き寄せる。足をもたつかせ、タキさんは少しバランスを崩して僕を抱き止めた。



夕日が溶ける。


お揃いのピアスに

耳元で囁く


タキさんの、言葉は。



――――。

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