牽制1
今日は心の家は親が夫婦そろって旅行、という事で心の家―…じゃなく俺んちにお泊り。
心の家は外泊禁止。
男にしては中々箱入りだと思うんだけど。
体が弱いのと…夜出歩いていた時にいたずらされかけたらしい…から。
まあ、子を思う親の気持ちとしたら当然なんだろうな。
一人暮らしなので家に誰か来る分には何も支障が無い。服だけはサイズの違いで貸せないのでお泊りセット(子供みたいだ)を心は持って来た。
「わーキレー」
心はぐるりと部屋を見回し落ち着かなく立ったままでいる。
「座って」
「はい」
そわそわしている理由は分からないけれど、とりあえずいつも通り接する事にした。
「心、皮剥いて」
「えっ?!」
「ほらジャガ芋」
過剰に反応する心に芋を渡し、俺は人参を切る。
心を横目で見ると顔を真っ赤にさせていた。
……何かしたか?
二人で仲良くカレーを作ろうって予定だった(俺の中で決めた)だろ。
首を傾げながらも男二人黙々と作業し、一時間半後。
「うまー」
「うん。カレーの米は早炊きだな」
「いやーやっぱルーをレトルトじゃなく作ったのがよかったんですよ」
といっても固形のヤツだけどね。美味いからいいが。
「シチューよりカレーのがやっぱイイですね」
「うん。満腹感あるよな。そういや肉じゃがってビーフシチューを作ろうとしてああなったんだ…って、前も聞いた?」
「聞いた聞いた」
家でもやっぱ相変わらずな感じで、ゆったりしながら心とカレー食べて。
敬語とタメ語がごちゃごちゃな心といつもの会話で。
鈍い俺は心が何考えてるかなんて、全く気付いてなかったんだ。
「心次どぞー」
「あ…ハイ」
小さな蜘蛛の巣のソリだけは手入れしなきゃ駄目だけどバスタオルで拭き取ればすぐに乾く便利な髪形。
適当に洗い、すぐにあがった。
隣を通り、風呂場に行く心は心なしか頬が赤い気がした。
時計を見るともう11時。心の風呂も何だか長い。
夜型の俺に珍しく既に瞼が落ちかけている。
眠い、心は……俺がいなくても大丈夫か。
電気の灯る浴室を尻目に歯を磨き、そのままベッドへダイブ。ああ…シーツ変えておいてよかった。
さらさらのそれに頬を擦り寄せた後仰向けで瞳を閉じる。
さあいざ行かん……夢の世界……。
「…うう」
呆気なく、すぐに夢の世界への扉は閉じられた。
腹の上になんか乗ってるよ…。座敷童?子泣き爺?
違う。
心、だ。