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図書室ピアス  作者: 羽野トラ
図書委員
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呼び名

「タキ先輩、シート一枚とって下さい」

「おっ、その呼び方懐かしー、でも何で?」


今日は図書委員の仕事でラベル貼り。ラベルの上に貼るカバーシールのシートを心に渡して聞く。

『タキ先輩』

……初々しいなあ、まだ中学生って感じの心に呼ばれてたっけ。


「友達が…」

「また友達かよ」


俺に友達はいない。気にして無いけど突っ込んでみる。


「…突っ掛からないで下さい。で、お前って先輩にさん付けなんだーって言われて。ああ、『タキ先輩』って懐かしいなあって思って」


「うん、そーだな。あの頃は心も暴力的じゃなかった」



「先輩だってもっと優しかった」


ムッとしたように言われるがまあ…なんだか付き合い始めてから急速に遠慮が無くなったからな。お互いあの頃は距離があったんだ。

久しぶりに『先輩』と呼ばれれば、懐かしいその時が思い出されて気恥ずかしくなる。


「タキ先輩って、あれ?いつからだっけ。タキさんに変わったの」

「いつからだっけ…」


うーん、と脳みそを働かせてみるけれど、さん付けになったその移行期間は思い出せない。

いつの間にかタキさん、になってたから。


「あ、僕の方あと一冊で終わりだ」


心は自分の分のラベル貼りを終えていた。



「あ、思い出した」


心がぽつりと漏らす。


「なになに?」

「聞き間違い。たくさん、って言ったんだよ」

「は?」

「センセーが知り合いに貰った箱菓子持ってきてさ、どのくらいほしい?って聞かれたんだよ。それで沢山ってふざけて言ったらタキさん聞き間違えて」


おかしそうに心が笑う。

沢山がタキさん?

沢山たくさんたくさんたくさんたっさんたっさんたきさんタキさん…


タキさん。…えぇ?


「タキさん欲しいって聞こえたみたいで。え?って顔してましたよ」


そんな事あったっけな…。

『タキさん欲しい』か。


絶対今なら言ってくれないだろうな。




「心」

「なんですか?」

「よかったね、手に入って」


ニヤニヤ笑うとぷいとそっぽを向かれてしまった。


あららー無視だ無視。


照れ屋だなあと思いつつ心の神経を逆なでする。


「じゃー心人に物貰う時はどのくらい?って聞かれたら沢山欲しいって答えな」


「タキさん」


「ん?」


「恥ずかしくないの?」


「……」



心の俺の扱いがひどくなってる気がするそんな日。

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