表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
図書室ピアス  作者: 羽野トラ
暖かい年
45/57

新年

「心、外見てー日の出」


「うう…むり、ねむ」


 そんなことを受話器越しで話した朝。

 俺は日の出を見るために一人無駄に張り切って早起きして、お子様体質なのに年が明けるからと無理して一年が終わってからも数時間粘っていたらしい彼に電話をかけてしつこく声をかけ続けていた。


「カーテン開けてみ?なあ」

「うるさ…もー、眠…」

「しーんー!!」


 嫌がらせだ。にやにやしながら叫ぶと向こうからうるさい!と、あまり威力の無い眠そうな声が返ってきた。もうやだ、とかなんとかぶつぶつ聞こえてきて。ごそごそ布団を這い出る衣擦れの音がしたのでちょっと待つ。

 俺はもう、スタンバイオッケー。

 冷風が吹くので防寒具を羽織って(南極基地の人みたいだと言われたやつだ)ベランダに出ている。

 時間帯が違うだけでどうして街ってこんなに姿を変えるんだろう?

荘厳とも感じてしまう、静かな空気。時折聞こえる車やビルから洩れる機械的な音だって、この特別な空気じゃ良いアクセントになるんだから。

 高みからの眺望は、人を見下ろして見下して、優越感に浸るためのもんじゃない。

 こうして、高いビルや、俺が今いる高層マンション全て。普段はうまく見えない地平線を照らして、この街を光が飲み込むのを確かめるため。ゆっくりと、陰影をつけて。

 風が頬に冷たくて、ファーのついたフードをかぶった。

 見たら、笑われるかも。

 握った受話器の向こうではカーテンを開くレールのずれた音がする。


「タキさん!」


 眠気、覚めたか?


「見た?」

「見た、初めてかも。すごいね」


 見せたかったから。誰かにこの瞬間。

 この部屋に来てから初めて教えた人だ。


「うん。俺んとこに今光、迫ってきた」

「光?」


 不思議そうに聞き返す。

 光に変わる瞬間が、俺の場所まで近付いて色を変えたんだ。

また、新しい年が始まるのだと知らせに。全ての人に、次々に教えに。


「心」

「はい?」


――君んとこは光、来た?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ