誕生日4
こういうのをバカップル?
まあいいや、俺は気にしない。
裸の付き合いってやつか?
熱があるうちは気にならないのに、平常心に戻るとどうしてかこの後輩の体にやたら照れ臭くなる。それは相手も同じ…いや、更に過度に意識していた。
先制を打った方が楽になると気付き口を開いた。
「心」
「っ!」
そんな警戒しないでよ。
「枕元にあったの気付いてなかったろ?」
布団をはぎ心が起きたのでベッドから移しておいたそれを近くの棚から取り出した。背後で心が「尻見えてる」なんて惚けた調子で呟くから気が抜ける。俺らなんか間抜けだな。
「ぷぷ。はいあげる」
「なんで笑ってんだよ、て、これ何?」
雰囲気が柔らかくなり和んだ空気が嬉しかった。
「メインは誕生日プレゼントってことで…と兼クリスマスプレゼント。あげてないだろ」
「いいの?」
「どぞ」
えへ、と一転させ一気に頬を引き上げた心は紙袋からそれを取り出して包みを解く。俺なんかは包み紙はぐしゃぐしゃに裂くのに心はいつも丁寧に剥がしていく。
主婦みたいだ(怒られそうだから言わないけど)。
「あっこれ、前見たやつだ」
ちゃらちゃらと、チェーンのついた財布を見て心が言う。二人で買い物しに行った時に心が欲しそうにしてたやつ。俺がぽんぽん物を買おうとするから心は滅多に何が欲しい、いいな、とは口にしない。その店を通る度にじっと見つめてたから記憶にあったので買ってみればアタリ、らしい。
「ありがとうございます」
へへ、とはにかんでいまさら後輩顔して俺を向き頭を下げる。
「うん、ほんとは明日って思ってたんだけど」
優先順位は誕生日が先ってことで。
「クリスマスとプレゼント一緒にされんのやだった?」
「んーん」
いろんなもの貰ってるし、と言い頬を緩めっぱなしの心は頬っぺたが赤くてかわいかった。いつも頬を引っ張られてるから仕返しに今日は俺が掴んでやる。ふざけてるうちにいつの間にかもつれてベッドん中に倒れ込んでた。
横目で時計を見ればもう日にちは変わっていて。
聖夜。キリストの誕生日に解禁という何とも不道徳な約束をしていた俺たちだけど。俺らは仏教だし、これは心の誕生日。
都合良く解釈する。
「おめでと」
日にち過ぎたけど。
秘密基地にいるみたいに真っ暗な布団の中で告げた。
冬の夜。
ゆっくりでいい。
よくある台詞だけど、心がそうしたいなら。
繋がって、何か一線を越えたかな、俺たち。まだ実感はわかないけどともかく。
心、十六歳おめでとう。
ツリーの光はまだ、点けていよう。




