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図書室ピアス  作者: 羽野トラ
リョコー
34/57

誤解


「タッキー」

「やめろ」

「心クン第二体育館いますけどー」

「ああ見るな見るな」



間宮、うるさい。


 ジャージに着替え第一体育館に向かう途中、ふざけた呼び名で間宮がニヤつきながら俺の肩に腕を回す。第二体育館を通らないと第一の方には行けないので第二体育館の脇を歩いていると一年生が三限目からの体育の準備のためボールやポールを取り出して準備中だった。

 青いジャージ姿の一年生がちらちら俺らに目をやり距離を取る。

 友達におんぶされふざけている心を目の端で留め間宮の腕を払う。

 コイツ…。


「なぁタキ、実際心クンとはどこまでいっちゃってるわけ」

「ハア?」

「だからぁ、心クンには超優しいタキさんはそこんとこどーなの。アッチの方とかどこまでしてんの?」

「アッチって…」

「もうヤってんだろ?な、やっぱイイわけ?心クン声出す?」


“超”と“タキさん”のニュアンスがひっかかるが、懲りずに顔を寄せる間宮に辟易しながら仕方ない、と答えてやる。

 下世話すぎ。うるさい。

 声出す?ってお前、最近本能に負けそうなのにそういう事聞くな。つうか心の名前出すな、汚れる。


「何にもしてない」


 ええー?!と不満げにした間宮をほっといて第二体育館到着。


 ストレッチのペアはなんつーことだ、また間宮。

 コイツは欲求不満なんじゃないだろーか。腹筋や背筋の運動のため脚を押さえるのだが、俺の足首を掴むたびため息をついて「カワイイこだったら…」なんて呟く。

 背筋がぞわぞわした。

 気持ちワル……。


 揚句の果てには「心クンだったらな」なんてほざきやがる。思わず跳び起き間宮の鉄板みたいな腹に掌底をくらわしてやった。

 ぐえ、と変な声が出て悶絶している間宮。やり過ぎたかな、と手を差し出そうとしたらクラスメイトの滅入る声が聞こえてくる。



「オイ見ろって、タキ間宮殴ったぞ」

「ヤッベやっぱコエーー!仲イイって思ってたけど、調子に乗るなよってか?」

「お前ら目ェ合わせんな!」

「ヒー、間宮の二の舞にはなりたかねえ」


 オイオイ。


 誤解にも程があるだろう。



 足元で転がる間宮に、俺は一人その場に立ち尽くしていた。



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