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図書室ピアス  作者: 羽野トラ
図書委員
3/57

強いひと1

俺の恋人が…変なこと言って、壊れた。


「男らしくなるから!タキさん見ててよ!」


うん。男らしくなるのはいいけれど。

翌日。どうしてその後俺が君にライバル視されるんだ?



廊下を歩いていると背後に人の気配を感じる。移動教室の生徒とは思えない。明らかに俺に向かって突っ込んで来るその気配は。


「おおっと!」


すんでの所で体をかわし。さっと体を捻って、攻撃しようとした奴を見れば、それは。


「心」


拳を胸の前で作り、ファイティングポーズを取るのは紛れも無い俺の恋人さん。届かなかった攻撃に悔しそうに眉を寄せる。


何故恋人に俺は殴られようとしているんだ。

DV?いやそれは配偶者間の暴力か。男同士だもの結婚は出来なかったはず。


「はいはい」


ジャブ、ジャブ、ジャブ。


軽く躱す、反撃はしない。心の攻撃をかわし、いいかげん飽きたところで手の平で拳を受け止め、…これはじゃんけんだよなー。

うん、俺の勝ち。


「う…わっ!」


拳を受け止めた所で手の平を手首に移動させ、ぎりぎりと力を込めて心を吊り上げる。身長が低いのを気にしているようだから普段は口に出さないけれど、今は都合がいい。


周囲の視線が痛い。この世で一番俺が悪い奴みたいだ。



――可愛いカオした一年生にヤンキー面した奴が絡んでる。


一年生狩り?

シメてんだろ

コッエー。



……俺は悪くないぞ。

勝手な周囲の声が幻聴と思いたいくらいに耳に入る。


悔しそうに俺を睨む心も、他の奴らから見たらコワイ先輩にシメられて耐えてる表情…に受け取られるんだ。


『人は見た目が九割』

…あれは本当だな。


こんなやり取り、俺みたいな顔じゃなきゃ何て事無い先輩後輩のやり取りなのに。ほら、丸きり俺が悪い雰囲気だ。


何故俺が白い目で見られてるんだ。


ずるい、心、ずるいぞ。


仕方無く心の手首から手を離し、少し宙に浮いた爪先立ちの心が地に足をつける。


「心、もう男らしいから」

「嘘だ」

「いいからもうホラ、あっち行って。鐘鳴る」


心は何か言いたげにした後、悔しそうに俺を一瞥して駆けて行った。心が身を翻した瞬間スピーカーから鐘の音が廊下に鳴り響いた。

なんだか一気に疲れた気がする。鐘の音が身を重くして、のろのろと俺は教室へと足を向けた。


心といると変に目立つ。

気にしているわけでは無いけれど、校内では明らかに好奇な視線、それはいいとして心が目茶苦茶心配されている視線が痛い。


一回一緒に帰った事があるが、あれは何とも言えなかったな。

心のクラスメイトと会ったが、挨拶しただけなのに明らかに怖がっていた。風邪をひいたせいで声が地を這う様なものだったからだろう。


男らしいとか関係無い。

俺が心といたら勝つのは絶対心だ。周囲のお節介とか老婆心とか…絶対オレが悪者になるんだからな。


心にもそこんとこわかって欲しい。


ハア、と息をつき教室に入ると先程の事でいきなり教師に注意される。一年生に何してるんだって…ああ今日は散々だ。

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