オトモダチ
「なあータキぃー」
「なんだ」
学校の中では俺に友達はいない。
皆バカすぎて疲れる。会話が成り立たない。
親にほうり出されてこんなトコに来ちゃったけど、もう少し自棄にならずに考えればよかったかもしれない。
「オレかわいーコと付き合いてえー」
「そうか。頑張れ」
間宮は友達じゃない。俺にしつこく付き纏うクラスメイト。いつもどうでもいい事を吐き出しに誰も近寄らない俺の席まで来る。
どうしてだ。
このクラスの中じゃ、きっと俺が一番平和主義者だぞ?缶はちゃんとアルミとスチールに別けて捨てるし、モラルだってある。
ガラの悪いこの学校(特にうちの学年)の奴らと比べたら…そんなに引く必要もないだろに。見た目だったらガラの悪さはそいつらと同じくらいのはずなのに。
「なー前ちょーカワイイの見つけちって」
間宮はつい先月俺に『オレ男でもイケるんだよねー』と告白してきた。
一瞬心を思い出し、顔に出さずに「そうか」とだけ頷いた。
間宮はそれを期にしてますます俺に引っ付くようになった。
ぐい、と袖を引っ張られる。間宮が「あれ見ろよ」と廊下の方を指差した。うるさいので仕方なく目を向ける。ガラスごしに一年生の二人組が移動教室のためにクラスの前を通っていた。
「オレあーゆーのタイプ」
「……。」
間宮が真顔でその二人の背中を追っていた。
あれは、俺の、恋人だ。
中肉中背のフツー顔の隣に心の姿。カワイイのがイイってことは心しかいないだろう。
それでも念のために聞いてみる。
「髪茶色っぽい方?」
「おう!そうそう」
はあ、とため息。間宮はそれを『男相手に何言ってんだ』という呆れにとったらしい。
「べつにいいだろぉ~」
ふて腐れた様子で俺の背中を叩いた。
「あーゆーコ、いいじゃん。従順系っつの?ホレさせたらすっげえオレの言うことききそう」
―…間宮クン。
「すげえ妄想」
呟くと間宮はまた別の意味に捉えたんだろう。不満げにしていた。
言うこと…聞くわけないだろ。
ましてや従順?ないない。
よく怒られてるんだ俺は。
お前のイメージはほら、あれだろ。大和撫子タイプっていうか…女の子みたいなかんじの。
中身違うからな?
自分の意見はちゃんと言うコだ、見た目と言葉の選びの柔らかさがそれを軽減させてるから誰もなんとも思わないようだけど。
頭のかわいそうな間宮に呆れ、見た目で軽く損してる俺の恋人を思うと複雑な気分になり。
……一回間宮に現実を見せようか。




