ひとり1
一人は楽だ。
人と話す事は疲れる。
薄っぺらい会話はしていない事と同じ。
若しくはしない方がいい。
無駄だ。
心との会話はどうでも良くたっていいんだ。満たされていくから。渇いた体に水が浸っていく。それも良質の軟水のような。
心は嫌がるけど、そこに居れば何でも与えてやりたくなる。
それで俺が、満たされる。
一人で住むには広すぎる部屋。暖色でまとめてみたけれど、どこか寂しいのは俺しかこの部屋にいないから。
別にいい、一人は楽だ。
だけどこんな時…心を抱きしめたら気持ち良さそうだ。
心の体が弱いのは知ってる。詳しくは分からないけれど。
家にいるなら俺のとこに居ればいいと思うのは我が儘だろうか。
そしたらきっと最高に甘やかしてやるのに。
無理なのは知ってるけど。
親の愛と俺のじゃきっと比べものにならないから。
目に見えない壁がある気になるんだ。
心が俺に背を向けて遠い街に続く灰色の道を歩いていく、そんなイメージ。
単色で描かれた絵本みたいな。
「ハア」
なんで今日に限ってこんなに気分が沈むんだ。
泊まりの日が記憶に新し過ぎるからだろうか。
電話…してみるか?
一体何を言う?
大体俺は何をしたいんだろうか。
今電話なんかしたら心に
「同居しないか」と、とんでもない事を口走りそうだ。
一人は楽だった。
楽なのに。
こんな気持ちになるのは、心がこんな感情をくれたから。
俺が告白を受けてから。
いやその前から。
先輩後輩の時からかな。
一人になるのが嫌だったと言えば語弊がある。
一人は楽だ。
楽だけど、それは本当に一人きりじゃないと知っているから。
心がいるだけで、話す奴がいるだけで一人が楽って事は本当に孤独だから楽って意味じゃないと知れた。
いいや。明日…軽く聞いてみようか。




