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クール・プレイス・サーチ

作者: 布団27


夏の話を書こうと思いまして




「あついー」


「……」


「あついよー」


「……」


「あついってばー幸喜(よしき)ー」


「ええーい!!さっきからやかましい!!」


ぶつぶつと暑い暑いと呪詛のようにアピールしてくる(あきら)はベッドの上で打ち上げられたタコのようにぐだーっとしていた。


「暑いなら自分の部屋に戻れよ!晶の部屋クーラーがあるだろ!なんでわざわざ俺の部屋に来て暑い暑い言ってるんだよ!?晶がいるせいで扇風機の首を振らなきゃいけないし文句言いたいのはこっちだ!!」


「えーだって、ここにはたくさん漫画やゲームあるし」


「なら持って行っていいからさ」


「うーん、それに幸喜の部屋って……なんだか居心地がいいんだよねぇー」


そんなぐったりと汗をかきながら言われても――って、あ!!


「ていうかそんな汗かきながらベッドの上で寝そべるんじゃない!!汚いだろ!!」


「汚いって……ひどい」


「いいからどけ!!」


「んもー幸喜ったらそんなに興奮してるとさらにあつくなっちゃうよー」


「誰のせいだ―!!」


ぜえはあ息切れしている俺に晶は急に不安そうに


「……そんなに邪魔?」


と聞いてきた。


……いや、邪魔と聞かれれば少しはそうなんだけどそれ以上に晶が少し心配だった。晶は汗かきで今だってけっこう汗を流している。部屋のむわっとした空気をかき乱すしか能がない扇風機だけでは倒れてしまうんじゃないだろうか。


「邪魔じゃないよ。この部屋暑いだろ。熱中症なんかで倒れられたらいろいろと面倒じゃないか」


「あたしなら大丈夫!!」


得意げな顔でピースサイン。何を自信にそう言い切れるのやら……はあ、しょうがない


「ちょっと待ってろ」


部屋から出て一階の台所に向かう。冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し二つのコップに注ぎおぼんに乗せる。

えーとあとは……あった。


部屋に戻ると晶はさらにだらーっとしていた。


「ほらよ」


水滴がついたコップを晶に渡してやる。


「おー幸喜は気が利くなー」


暑さのせいか語尾がさっきからやたらと伸びる。少しうざい。


ぐびぐびと晶は一気に飲み干す


「あーうまい!!生き返った!!」


「あとこれ」


「ん?なにこれ?」


麦茶と一緒に持ってきたもの――塩アメを差し出す。


「塩分補給だ。なめてろ」


「アメかー。どれどれ…………んー変な味がする。甘いんだけどどこかしょっぱいような」


どうやら晶は塩アメをなめたことないようだ。


「でもなんかクセになるなー」


コロコロと口の中で塩アメを転がす晶。気に入ったようだ。


「ねえねえ、避暑地を探しにいかない?」


アメと麦茶のおかげでぐだーっと状態から回復した晶は突然そんなことを言った。


「避暑地……?避暑地って夏でも涼しいところでいいんだっけ?」


「うん、たぶんそんな感じ」


テレビかなにかでみたのだろうか


「この町で捜すのか?こんな日差しがギンギラギンで暑いときに」


「暑いからじゃない。漫画も飽きてきたし体を動かしたくなってきたし」


コイツ……さんざん入り浸って読み荒らし、さっきは暑さでバテてたくせに


「……家に居てもやることないし別にいいけど」


「じゃあ早速いこう!!」


ベッドからぴょんと飛び降りて部屋から出て玄関まで走っていた。


俺も後を追って玄関に向かった。


「晶、帽子は?」


靴を履いている最中の晶は頭に何もかぶってなかった。


「いらないよ」


「真夏の日差しをなめるなって。あっという間に熱中症になるぞ」


「取りに行くのめんどくさいよ」


「家となりだろうが」


横にある帽子掛けから麦わら帽子をとり晶に渡す。俺は野球帽をかぶる。マークはジャイアンツ。別にファンってわけじゃないけど。


止めてある自転車に乗る。小学校を卒業したお祝いとして買ってもらったお気に入りだ。まだ買ってもらって3か月ちょいだからまだピカピカだ。


「さあ、行こっか」


晶も自転車に乗ってきた。晶も新しい自転車を買ってもらっていた。少し背が足りないらしく若干ふらついている。危なっかしい。


どこか心当たりがあるわけじゃないので適当に町を回ることになった。


「ねえ、あそこなんかどう?」


「ん?」


晶が指差したほうをみると古びたマンションがあった。周りに高い建物があるのであまり日差しもあたらなそうだ。見ているだけでひんやりとして日本のホラー映画なんかに使われそうで確かに涼しそうだ。……でも


「……そこはやめとこうよ」


「なんで?」


「なんでも」


納得できていない晶はちょっと考え込むと何かに気が付いたのかニヤニヤし始めた。


「……別に怖いわけじゃないぞ」


「はいはい、わかってるわかってるよ」


く、むかつく



それからしばらく走っていると目の前に陸橋が見え、その下にあった公園に入った。その公園は遊具がブランコしかなかったが日が当たらず風もすっと入ってくるので涼しい。


「ここいいんじゃないか」


「確かに」


しばらくブランコで遊んでいたら飽きてきたのか晶が他にどこか心当たりはあるかと聞いてきた。


「あるぞ」


「え、どこどこ」


とっておきの場所が





「……ここって」


「涼しいだろ」


「いや、涼しいけどさ……図書館じゃん」


そう、俺たちが今いる場所はよく俺が使っている市立図書館。クーラーがきいていて涼しく本や漫画があり、おまけに映画やCDなんかも視聴できる。


俺にとってまさに真夏の暑さから逃れることのできる最高の避暑地だ。


「……なんか違うでしょ」


ジトっとした目で見られた。何が不満なのだろうか。





「ふーつっかれたー」


日も暮れてきたので俺の部屋に戻ってきた。


あ、晶はまたベッドにダイブして壊れたらどうする。


「やっぱ、幸喜の部屋は落ち着くね」


「でも暑いだろ」


「多少暑くても気にならないよ」


ベッドの上でゴロゴロ転がるな。


「ねえ、明日はなにする」


「そうだな……明日は冷たい食べ物めぐりでもするか」


「それいいね!かき氷!アイス!ソフトクリーム!」


「……腹壊さないように気を付けような」







読了感謝です。


夏ももう終盤ですね

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