九曲のメニュー
山奥の怪しげな洋食屋で待っていたのは、まさかのダンジョン級の注文手続き!?
一筋縄ではいかない「九曲がりのメニュー」に挑む、男の奮闘劇をお楽しみください。
迷い家の激ムズ注文
「いらっしゃいませ。当店のメニューは九曲のメニューとなっております」
山奥で迷子になり、偶然見つけた怪しげな洋食屋に入った男・佐藤は、給仕の言葉に首を傾げた。
「九曲? 変わった名前ですね」
「ええ。ご注文を完了されるまでに、お客様の心が折れる様が『九曲がり』のようだからでございます」
「不吉すぎるよ! ふつうにハンバーグ頂戴!」
給仕は不敵に微笑むと、巻物のような巨大なメニュー表を開いた。
「かしこまりました。では第一の曲がり角です。ハンバーグの肉は、牛・豚・合挽き・合挽き(黄金比)・合挽き(銀の比率)のどれにいたしますか?」
「金だの銀だの言われても困る! 普通の合挽きで!」
「正解です。第二の曲がり角、付け合わせのブロッコリーは茹で・蒸し・素揚げのどれに?」
「茹でで!」
「第三の曲がり角、そのブロッコリーを置く位置は、ハンバーグの『右奥』『左奥』『真上』のどこに?」
「真上!? どかさないと肉食えないじゃん! 右奥でいいよ!」
佐藤は冷や汗をかき始めた。まるでダンジョン攻略である。
「第四の曲がり角、ソースはデミグラスですが、隠し味に『シェフのこだわり』と『シェフの執着』どちらを入れますか?」
「執着は怖すぎるから『こだわり』で頼むよ!」
「第五の曲がり角、ライスは小盛り・普通・大盛り・『米の覚悟』のどれに?」
「覚悟って何!? 普通! 普通盛り!」
問答は続き、ついに第九の曲がり角へ――。
「第九の曲がり角です。最後に、シェフが『美味しくな~れ』と萌え萌えキュンをするのを許容されますか?」
「急にコンセプト崩壊したな!? ここホラー風の洋食屋じゃないの!?」
「当店のシェフ、元メイド喫茶勤務でございまして」
「……じゃあ、なしで」
「かしこまりました。『萌え萌えキュン抜き』のハンバーグ、一丁入ります!」
数分後、無事に運ばれてきたハンバーグは、信じられないほど普通の、めちゃくちゃ美味しいハンバーグだった。
「お味はいかがでしょうか?」
「うまい……うまいけどさ、これ毎回9回も質問するの?」
「はい。ちなみに食後のコーヒーをご注文いただきますと、**『十七曲のメニュー』**に分岐いたします」
「もう勘弁してくれ!!」
佐藤は水だけを飲み干し、一目散に店を飛び出したのだった。
まとめ
ホラーっぽい題名でも、中身がただの「こだわりが強すぎるカスタマイズ注文」なら平和なコメディになります。
【了】
ご愛読ありがとうございました!
「迷い家」といえば民話では訪れた者に富をもたらす不思議な家ですが、現代なら「ただ注文の多い洋食屋」であっても面白いなと思い筆を執りました。
怪異の恐怖より店員のウザさが勝る物語ですが、少しでもクスッと笑っていただけたなら幸いです。
ぜひ次は、佐藤が無事に「十七曲がり」を完走できるよう応援してあげてください。




