すちーむぱんく
掲載日:2026/08/11
夕日が背中を照らす頃。白い息を吐きながら、定速の景色に体を靡かせ共に駆ける。
乾いた土に四肢を覆われた馬が、人を乗せた荷車を曳いてゆっくり歩き帰路に付く。
見通しの良い道中多くの馬とすれ違う。時々ロバかあとは牛、荷台に一頭豚もいる。
煤の混じった白煙を吐いて、シュッシュポッポと駆け抜ける。蒸気に跨るこの二輪。
自然で穏やかな景色の中。大きな金属缶をお尻につけて路肩に留まる馬不要の乗合。
窓に写る優雅な人影の先に、機関に手間取る油汚れの作業服。工具を片手に困惑中。
座席の小物入れ。単車向けの工具を片手に駆け付ける。手袋越しの握手に軽い談笑。
覗き込む先でしばし驚く、薪や炭で走る乗り物が水の蒸気は不必要。その名は焼玉。
後ろの燃料を生焼けにし、鉄の肺で燃焼させる。人には吸えぬ無味無臭の透明な毒。
互いに手を繋いだ黒塊が、湾曲する気管を通せんぼう。掻き出し叩きまた掻き出す。
光沢を帯び滴る、四つの手。夕焼けにより一層色味の深まる潤滑油を雑にふき取る。
余裕のある会話を速足で通り過ぎ、円筒の中の炭を囲む、灰を纏う炭が熱を帯びる。
お礼と感謝と抱擁。大粒の石炭を分け与えられ、沈む後輪。革の嚢が悲鳴をあげる。
炭より明るい夜。暗雲の隙間には、星々が煙のように集う中パンクから目をそらす。




