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第2話:相手の攻撃は変身で捌け


 ……で、提案に乗ったのはいいが。


「細かい作戦とかはあるのか?」


「とーぜん! ボクを何だと思ってるの?」


「クソレズに貞操狙われてるチビ」


「最近ボクを見る目が『捕食者』のソレになってきてて怖いんだよね。何かあったら匿って?」


 こればっかりは同情。いやホント……可哀想だとは思うよ、うん。


「話を戻すけど、やることは至ってシンプルだよ。侵略者が出たら周囲一帯に避難警報が出るし、ニュースでも速報が入るからね。そしたら君が行って変身してぶっ飛ばす。おーけー?」


 分かりやすくて話が早いな。


「じゃ、その変身システムと説明書用意してくれ。侵略者が出るまでに読んどく」


「大丈夫、脳に直接インストールするから」


 何て? いや待て何だそのヘルメットみたいな機械はあばばばばばばばばばッ──────






「お前今度裸にひん剥いた後亀甲縛りで神楽の部屋投げ込むからな……」


「たんこぶで五重の塔作っといてまだ足りないの……?」


 脳みその記憶野に京極夏彦の「百鬼夜行」並の厚さの取扱説明書の内容全部直接刻み込もうとするからだ。何ページあんのこれ。1300ページ? 怖。


「大丈夫、4割は緊急時の自爆処理とその後の環境汚染の対処法だから」


 環境汚染つった? え、これどこぞの4作目の強化フォームみたいな代物なの? そしてそれを俺に着せる気なの? 説教すべきこと増えたな。そしてそれ抜きにしても800弱はあるのかよ。


「俺がこういう説明書読むのが好きな人種じゃなかったら投げてるぞ……」


 掃除機とかの取扱説明書読むのちょっと楽しいよね。そうして説明書を一通り読み終え、幼馴染がシステムの最終メンテナンスをしている様子を眺めていると。5G対応地下でもアンテナバリ3高性能ルーターに接続されたモニターに、あるニュースが映し出される。


「……こりゃ、遂にってことで良いんだよな?」


「そうだね。正直侵略者への嫌がらせと魔法少女への嫌がらせ、実益二つ兼ねて作ったけど……一つ確認。引き返すなら、今のうちだよ」


 ……コイツ、こういう最後の一線近辺に善意あるから見切りつけらんねえんだよな。


「仮に俺が辞退したらどうする気だ?」


「普通にシステム解体かな……これボク使えないし」


 自分が使えねえモンを人に使わせようとすんな。


「……ま、やるさ。若人に必要なのは適度な日常と適度な非日常による新鮮さと退屈さのコントラストだからな」


「口から出任せフルオート射撃」


 出任せじゃねーよ。ある劇作家曰く、『人は歳をとるから遊ばないのではなく遊ばないから歳をとる』。そういう意味では、こうして完膚なきまでに『趣味』で首を突っ込む俺たちは──────。


 最高に新鮮な『若人』だろ?




『君たちは、選ばれた』


 そんな言葉と共に、私たちは力を与えられた。そして飛び込むことになったのは……地球を、世界を守るための戦いだった。

 この宇宙を征服するための足がかりとして地球を狙う異世界の邪神と、その配下たちからなる『邪神軍』。世界を守るために、自らが生まれ育ったものとは異なるとはいえ世界そのものを相手に戦わなければならない……そんな極端な程の戦力差を、何とか凌いでいる中で。

 ついに、その時が来てしまった。


「ふん、世界を守る魔法少女と言ってもこんなものか。随分とこの世界の原種生命を高く買っていたようだな、██████」


 邪神軍の幹部である荳肴愎縺ョ繝?Η繝ゥ繝ウ……地球言語に変換して、『不朽のデュラン』。私たちに力をくれた妖精さん曰く、『圧倒的な実力で多くの戦士を倒し、その鎧と刃は"朽ちることを知らない"』。その力は凄まじく、左手の盾で私たちの魔法を弾き……右手に持った剣で、どんな防御魔法も切り裂いて見せた。


「それ、でも……っ!」


「……立ち上がるか。ここで屈するならば、命までは取らん。我らが邪神軍の支配の元、労働階級として迎え入れよう」


「お断り!」


 そう叫びながら、持続力に特化する形で調整した目くらましの閃光魔法を使う。そしてその効果があるうちに力を溜めて──────


「愚策」


 だけど次の瞬間、渾身の一撃となるはずだったそれは……デュランの一刀の元断ち切られ、霧散してしまった。


「なっ、えっ……」


「我が異名『不朽』。それは偏に()()()()()()()()()()()()()()()、その上で戦果を挙げ続けたことにより我らが邪神様より賜ったもの。我は相対する戦士に()()()()()()()()。大技を崩し、武器を砕き、術理を乱す」


 ──────それはつまり。私たちの強み全てを殺しながら戦うということで。


「我は初めて戦場に立った時より、相対する者全てが()()()()()()()()()()()()()()()()ことを前提としている。故に我に油断はなく、慢心はなく。その結果として、今までの我に敗北はない」


 私たちは、長所全てを剥奪された状態で戦うしかない。


「……地球の言語にするならば、『詰み(チェックメイト)』というのだったか。諦めろ、魔法少女」


 ……それでも。例え、何も出来なくたって!


「嫌だ……諦めないっ!」


「……そうか。持ちうる手札全てを砕かれ、戦意を失った者は数知れず。その勇気一つで、貴様は数千の戦士の頂点に立った」


 敵からの賞賛の言葉なんていらない。皆を守るために、何をしてでも──────。


「名を名乗れ。これほどの戦士、名を知らぬままに屠るは惜しい」


「……魔法少女、セイントシャイン」


 私が魔法少女になって、初めて貰った宝物(なまえ)。それを何ら恥じることなく、誇りを持って口にする。その裏で、私は残った魔法の力全てを使い……。


「セイント……聖なる光(セイントシャイン)か。佳き名だ。……では、死ね」


 その言葉と共に、デュランが剣を振り上げる。その瞬間、私はデュランへと飛びかかろうとした。……しかし。


「……む?」


「……え?」


 耳に届いたのは、エンジン音。この戦場に響くはずの無い音が、その場に混乱をもたらす。デュランと私たちがその音の方向を見て──────。


 そこには、銀色があった。




 うーん、ギリギリって感じだな?


『間一髪だね。いくらボクたちでも、魔法少女たちに死んで欲しいわけじゃないから』


 そうだな。俺たちの目的は『侵略者どもぶっ飛ばして活躍して、魔法少女たちから人気を奪うこと』。死なれちゃ人気を奪うも何もない。


「──────趣味でやるんだ。本気で行こうぜ」


 その言葉と共に、現在進行形で運転しているバイクを更に加速。……『変身ヒーローには専用マシンも必須だろ!』という理由で幼馴染が作ったコレ、性能めっちゃいいな。身バレ防止のために普段使い出来ないのが惜しいくらいだ。同等スペックのやつ作ってくれね? ダメ?


『平常時にやると普通に道交法に引っかかるからダメかな……』


 残念。()()()()()()()()()()峠攻めたかったんだけど。


『それ常人だとカッ飛んで死ぬよ』


 俺は使えるからいいんだよ。いやでも対向車でトラックとかに突っ込まれたらさすがに骨折も禁じ得ないか……?

 まあそれはそうとして。その勢いのままに金髪の魔法少女──────幼馴染曰く『魔法少女セイントシャイン』──────と、その魔法少女に凶刃を振り下ろさんとする邪神軍の間に割り込み通り抜ける。そして90年代の某名作アニメ映画で有名な横滑り停車を見事に決めた。


『かっこつけ』


 うっせ、かっこつけてナンボだろこういうのは。それはそうと、バイクのデザインに合わせた銀色のヘルメットを外してハンドル中央にあるガジェットを外す。すると、近未来サイバーデザインのイカしたバイクは量子化されガジェットに格納される。……やっぱアイツの技術、めちゃくちゃ未来を先取りしてるよな……怖……。


「……何者だ」


 邪神軍のその言葉に、俺は笑う。そりゃ知らねえよな、本日初公開なんだから。


「っ、逃げて!」


 魔法少女の悲痛な叫びすら、意に介さない。だって俺は──────今日からヒーローなんだからな。


「い、異形頭……」


 ごめん待って何か変な性癖持ってる子いない? 大丈夫か魔法少女。っつーか異形頭って……あ、そうだ。顔隠すためにフェイスガードじみたお面つけてんだ。のっぺりとした、本当に『顔を隠すためだけの丸みを帯びたプレート』って感じのを。それに幼馴染がベンタブラックの塗料でコーティングした、可視光を99%以上吸収する虚無お面。そりゃたまにイラスト投稿サイトで『#異形頭』のタグついて投稿されてそうな頭にもなるわ。


「俺が誰かって? 決まってんだろ」




 ──────新ヒーローの登場だ。






 その言葉と共に、バイクを格納したガジェットよりも一回り大きなガジェットを取り出し前者をセット。そうして完成した()()()()を、腰に当てる。


OLYMPOS(オリンポス) DRIVER(ドライバー)!!』


 そんな音声と共に腰周りに固定・保持のためのベルトが展開。これで服やら皮膚やらを全く挟まないんだから凄いよな……この技術を服飾業界に売り込むだけでドル単位でも億は稼げるぞ……?

 話が逸れた。気を取り直して、再度服のポケットからあるものを取り出す。


 ──────それは、一枚のカード。銀色の戦士が描かれたそれを、俺はベルトのバックル『オリンポスドライバー』上部にあるスロットを展開しセット。そして、カードを差し込んだスロットを叩き格納させる!


ALKAIOS(アルカイオス)!!』


 その声と共に、音が響き渡る。荘厳さなど欠片もないそれは、聞く者に確かな勇気を呼び覚まさせていく。


「ッ、させるか!」


 ここに来て『まずい』と判断したのか、邪神軍の戦士が刃を振るう。紫と黒に彩られた斬撃は過たずこちらへと飛来する──────が。


 一歩遅かったな。


「変身」


 そう呟くと共に、ドライバーの両側面を叩き内蔵されたスイッチを押し込んだ。


『BRAVE UP!!』


 邪神軍。お前の選択に、間違いはなかった。何するか分かんねえ奴なんざ、()()()()()()()()のが最適解に決まってるよな。ただ、一つ誤算があったとするなら。


RISE U(立ち上が)P HERO(れ英雄よ)!!』


BEYOND Y(宿命を)OUR FATE(越えろ)!!』


SEIZE THE(栄光を) GLORY(掴め)!!』


 世界一の天才(バカ)が作ったコレに、そんな隙はなかったってことだ。


CHANGE(それは) NEXT(次世代の) MYTHOLOGY(神話なり)!!!』


「さあ、喧嘩しようぜ!」


 EASY GAME(ヌルゲー)にはならないでくれよ?

『不朽のデュラン』

 邪神軍幹部の一人。パワーもスピードも高水準だが、何よりもその戦闘技術がずば抜けている。TRPGで例えると剣術技能がカンストしてて、あらゆる攻撃を剣術で受け流す固有技能とその際に剣や盾の耐久値の消耗を抑える固有技能持ち。


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